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目標地点と現地点を輪ゴムでつなぐ

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「去年は100で、今年は110だったから、来年はきっと120だろう」

目標を定めるとき、みなさんは過去の延長線上で考えていないでしょうか。しかし、こうした目標設定のやり方は、目標の達成を阻害する要因になります。

過去からのトレンドに沿って目標を設定すると、意識は過去に残ります。過去の起点と現時点が輪ゴムによって結ばれて、過去から離れて目標に近づくほど引き戻す力が強くなるイメージです。

目標設定において大切なのは、トレンド思考ではなくゼロベース思考です。過去を捨てて、未来だけを見て目標を立てるのです。

ゼロベース思考で目標設定すると、目標地点と現時点が輪ゴムでつながります。過去に引き戻す力は作用しません。むしろ目標地点への道筋から外れる行動をしたら、目標地点のほうに引っ張る力が働きます。

トレンド思考とゼロベース思考の目標設定は、原点の置き方に違いがあるともいえます。トレンド思考の原点は過去にあり、現時点はつねにプラスの状態です。プラスは安心を生みますが、満ち足りているので工夫や努力が生まれにくい。

一方、ゼロベース思考は原点が未来にあります。現地点はマイナスの状態なので、原点に近づくための工夫や努力が生まれます。どちらが目標達成に近いのか、考えるまでもないでしょう。

たとえるならトレンド思考はボートで、ゼロベース思考はカヌーです。

ボートは進行方向とは逆向きに顔を向けながら前に進みます。前を向けないので、頼りになるのは自分の漕いできた軌跡だけ。それが方向を決める唯一の手がかりなので、軌跡を無視した行動は取りづらい。必然的に行動は過去に縛られます。

一方、カヌーは進行方向を見ながら漕ぐことができます。自分がどう進んできたのかは関係なく、自由に目標を設定して、そこに向かって最短距離で進めます。

あなたが漕いでいるのはボートでしょうか。それともカヌーでしょうか。

■「なぜ?」は過去思考、未来思考の本質は「何のため?」

トレンド思考とゼロベース思考は、過去思考と未来思考と言い換えることもできます。

過去思考は、いま起きている現象を「結果」ととらえて、その現象が起きた「原因」を探るところからスタートします。製造業では「なぜを5回繰り返せ」とよくいわれますが、あれはまさしく過去思考。「なぜ?」と過去を検証することが、過去思考の本質です。

しかし、この手法には弱点があります。一つは、時間とお金がかかることです。一度の仮説検証で最適な解を導き出せればいいのですが、現実は甘くなく、幾度となく仮説検証を繰り返すことになります。これはリソースに余裕があるからこそできるやり方であり、リソースが豊富でも繰り返すうちに疲弊していく恐れがあります。

もう一つ、仮説が事例的・経験的になりやすいというデメリットもあります。過去をさかのぼって原因を探るため、それを是正するための方法も、「このケースではこの方法が効果的だった」というように前例に引きずられやすいのです。このやり方だと、改善はできても、新しいものは生まれません。いわば「過去の再現化」です。

いま求められるのは、未来思考です。未来思考では、いま起きている現象を、ある「目的」を達成するための「手段」として位置づけます。目的は「何のため?」という問いかけによって明確化します。この質問を繰り返すと、いま取りかかろうとしていることの真の目的が明確になります。真の目的が明確になれば、理想形も見えてきます。

(※『ビジネススキル・イノベーション』第8章 未来のつくり方を考える(プレジデント社刊)より)

(横田尚哉)