『SUSHI GIRL』 (C)2011 SUSHI GIRL FILMS
 クリスマスに忘年会や大掃除、年越し・お正月と、イベントが多い季節、それが年末年始。こんな時にこそ観ておくべき映画を、MOVIE ENTER編集部が厳選してご紹介する「ゆく年来る年、コレだけは見ておけ!映画」特集がスタート。第3回にカルト映画のフジモトが選んだのは、異色豪華キャストで贈る前代未聞の女体盛りサスペンス『Sushi Girl』。クリスマスには恋人もケーキもいらない、そんなあなたに捧げる怪作だ。

『SUSHI GIRL』

 強盗の罪で6年間刑務所に服役したフィッシュ。刑期を終えたその夜、彼の4人の強盗仲間は出所を祝うためのパーティを開く。そこでフィッシュの前に用意されたのは、全裸の美しい女の体にスシや刺身を盛り付けた“女体盛り“だった。豪華な趣向に喜ぶのもつかの間、フィッシュは仲間たちによって椅子に縛られてしまう。このパーティーの真の目的は、彼らが強盗を働いた際に行方不明となった、ダイヤの行方をフィッシュから聞き出すことだったのだ。陰惨な拷問に耐えるフィッシュを横目に、4人の仲間たちそれぞれに疑心が生まれていく。「他の誰かがダイヤを奪ったのではないか」やがてその疑いは、壮絶な殺し合いへと発展していく…(作品情報へ

美しかったあの男たちが、驚愕の変貌!イイ顔のおっさんたちが大集合

 本作のほとんどは回想シーンと、拷問シーン、そして会話劇で成り立っており、登場人物がほぼ変わらない。つまり俳優の力量が、映画のかなりの部分を占めるのである。集められた五人の男たちは、どいつもこいつも魅力的なイイ顔のおっさんたちだ。中でも異彩を放つ二人は特に注目。まず、ひたすら拷問され続ける気の毒な男フィッシュ。いかにもチンピラといった感のあるこの男、実は過去に美少年として知られたノア・ハサウェイ。あの『ネバー・エンディング・ストーリー』のアトレイユ役で知られた俳優である。子役から一時引退し、ダンスの指導やバイクショップ、バーの店員など様々な人生経験をしたその顔からは、独特の哀愁が漂っている。また、彼に拷問を加える卑劣漢・クロウ。デップリとした体型に、ブロンドの長髪でシワだらけこの男は、マーク・ハミル。『スター・ウォーズ』旧三部作の主人公、ジェダイの騎士=ルーク・スカイウォーカー役で知られる俳優である。こちらは精悍だったイメージから考えれば、驚愕の変貌とも言えるが、彼も61歳。当前の経年変化だろう。本編では話し方から、仕草まで“卑劣でイヤラシイ男”を実に見事に演じている。過去を知る人は、これを劣化と思う方もいるだろう。しかし年齢を経た現在だからこそ、役に相応しい存在感を身につけることができたのである。

残りのメンバーにも、『キャンディマン』ことトニー・トッドを始め、ホラーやインディペンデント映画界の“イイ顔”が大集結。他にも出番は少ないものの、ダニー・トレホ、マイケル・ビーン、ジェフ・フェイヒー、千葉真一など、これ以上にない曲者俳優たちが登場し、さながらイイ顔のおっさん天国である。ちなみにダニー・トレホ、千葉真一はそれぞれの過去出演作にオマージュを捧げた役柄で登場するので、是非チェックして欲しい。

タランティーノへのオマージュ…というよりタランティーノそのもの

 さてあらすじを見てお気づきの事と思うが、本作の筋立ては、ある監督のある作品にソックリである。強盗団を結成しての宝石強盗、疑心暗鬼からの仲間割れ、椅子に縛り付けての拷問。そう、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』だ。本編では、強盗団のメンバーそれぞれにコードネームが与えられるところや、音楽の使い方まで、とにかくウリ二つである。それほど監督のカーン・サクストンはタランティーノを敬愛しているのであろう。今挙げた以外にも、タランティーノ作品に明らかに影響を受けた部分があるので、一つ一つ確認してみるのも面白いだろう。とはいえ、本作は単なるコピー映画ではない。『レザボア・ドッグス』が、ダンテ・ラム監督『友は風の彼方に』を元ネタにしながらもキチンと新たな映画として成立していたのと同様、サクストン監督も大好きなものと同じフォーマットで、彼自身のオリジナリティを出せる監督なのだ。その証拠に、本作の結末は“女体盛り”がとてつもなく重要な役割を果たしており、そこに至るまでの伏線の張り方は秀逸。明らかに『レザボア・ドッグス』とは違うジャンルの映画に仕上がっている。あえて言うならこの映画のジャンルは“女体盛りサスペンス”だ。
 

今年のクリスマスは、ケーキより女体盛りだ!

 クールな映像と音楽、サスペンス演出で見せてくれる良作ではあるが、やはり気になるのは女体盛り。これが色々な意味でハイレベルなのである。「出所祝いにイイ物を用意したぜ!」と用意された女体に、普通にお刺身が載っていたり、寿司自体もやけに小さかったりと、微妙に正解からハズレた“外国人から見た寿司”が満載。各ネタの盛り方ルールや、“寿司チーフ”こと千葉真一が解説する“女体盛りの器になる心構え”なるものも登場。ふざけているのか、真剣に間違えてるのかわからない絶妙なラインで宴が進行する。が、これらはトンでも設定ではなく、ラストのどんでん返しに必須な要素だったことが後々わかる。単なる“神秘的な日本文化”ではなく、舞台装置として、登場人物として女体盛りが存在しているのである。その意味が何たるかは、スクリーンで確認して欲しい。

そして女体盛りの重要性に説得力を与えているのが、“器”の美しさである。スシガールを演じたコートニー・パームの透き通るような白く、きめ細かい肌、日本人ではないがエキゾチックな顔立ち。その冷たい陶器のような質感には、神々しさすら感じるレベルである。過去にはドルフ・ラングレン主演『リトルトウキョー殺人課』や、来年公開の井口昇監督『デッド寿司』などにも女体盛りが登場するが、フジモトが知る限り本作のそれは“映画史上最も美しい女体盛り”である。この存在感があればこそ、珍妙な世界観がお笑いにならずに成り立っているのだ。

 本作の公開はクリスマス直前。この時期は、自宅で恋人とクリスマスケーキ、という方もいるだろう。だがそうでない方、特に独り身の方には是非女体盛りをオススメしたい。そのさみしさが薄れること請け合いだ。くしくも、スシガール=コートニー・パームの次回作は、サンタクロースがリア充な人たちを惨殺するカルトホラー『悪魔のサンタクロース 惨殺の斧』のリメイク版だとか。これは「クリスマスより女体盛りよ!」という、彼女からの暗示に違いない!まあ、気軽に女体盛りができるとは思えないので、そんな人はこの『SUSHI GIRL』を観ながら聖夜を過ごすが吉でしょう。ビバ、女体盛り!

『SUSHI GIRL』は12月22日(土)銀座シネパトスほか全国順次ロードショー



『SUSHI GIRL』 - 公式サイト

http://image.news.livedoor.com/newsimage/9/1/916efa74bb8f8c653f9cce0c76a6ce5f.jpg

カルト映画のフジモトの所見評価

【タランティーノ度】★★★★

【女体盛り度】★★★★★

【イイ顔のおっさん度】★★★★★

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