【無所可用】第47回  鉄道マニアにも「理系」と「文系」がある〜鉄道趣味の奥の細道のおはなし〜

毎度閑話有題な話題をお送りしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。以前、ナローゲージの鉄道模型でもちょいと話題にしましたが、先日、「鉄オタは複雑だ」というツイートを拝見しました。そこで、おこがましくも、鉄道好きな人の「奥の細道」を考察してみたいと思います。

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☆わかりやすい人たち

鉄オタと呼ばれる中でも、わりとわかりやすい人たちをまとめておきます。

○アウトドア派
・撮り鉄(対象により、日常的風景、イベントなどの細分化あり)
・乗り鉄(ケーブルカーやロープウェイを含めるか等で見解が分かれる)
・ライブスチーム(いわゆるミニSL。鉄道模型だが事実上屋内で運転できない)

○インドア派
・模型鉄(スケールによる細分化、運転する、運転しないで見るだけ等の細分化あり)
・コレクション鉄(部品や切符などのコレクター)
・妄想鉄(架空の鉄道路線を考える)

超大雑把にわけるとだいたいこんなところで、これらが重複している人も大勢います。
ライトな鉄オタの方々は、だいたい文系であろうと考えています。ライトな撮り鉄ならコンデジでの撮影もいとわず、被写界深度とか露出の調整とかにあまり気にしない。しかし「逆光の写真が好き」などという人は、逆光写真のための露出の出し方という光学的な事もアタマに入っているので、理系ではないかと思うのです。同様に鉄道模型では、買ってきて床に敷いた線路で走らせるだけ、というのは文系かと。列車を走らせる線路を敷いた「レイアウト」を作成するとなると、多少なりとも電気の知識が要求され、またプラスチックでない、金属製のキットを組み立てるにはハンダ付けの技術が必要になり、こうなってくると理系になってくると思われます。
妄想鉄も、営業成績等を考えて路線を妄想するのは文系、地形や運転上の支障の少ないルートを考えて妄想するのは理系、という感じがします。

さて、「鉄オタ」とくくられる人たちは、上記のどこかにはひっかかると思います。しかし、どこに一番重点を置いているか、ということになってくると、このくくりでは入りきれない事例がちょこちょこと出てきます。特化した鉄道マニアの世界をご紹介しましょう。
 
☆普段あまり目に触れない特化した趣味のひとたち

○聞き鉄
まさに鉄道の音を聞く人たちです。自分でものまねして再現したりもします。達人になれば、音だけでどの形式か、場合によっては路線まで当ててしまいます。
録音機器を揃えている方と、自分の耳だけを道具としている方がいるようです。

○廃線鉄
廃止路線の跡地を歩いて探索することを楽しみます。その範囲は明治時代の廃線から最近のものまで広範囲に及ぶ場合もあります。近頃ちょっと増加傾向。実際に現地へ赴くアウトドア派と、古地図と現在の地図を比較して廃線跡を探し出すインドア派がいます。どちらかというと文系な鉄です。

○資料鉄
これは難しい概念です。要するに歴史や調査に興味がある人たちです。非常に細分化されるのですが、わかりやすいものだけ上げると、
・鉄道の開通、廃止、路線などの調査
・車輌の製造会社に関する調査(現在では考えられませんが、かつては町工場で鉄道車両を製造していましたので、そうした小規模工場についても調査しています)
・車輌の改造・改番に関する調査
・ダイヤの変遷に関する調査
・輸送量などについての調査
・未開業、計画倒れの鉄道についての調査
調査のために現地へ赴いたり撮影したりすることも多々ありますが、撮り鉄と呼ばれる方々とは少し目線が異なります。例えば改造について調査している人は、改造箇所を中心に撮影していて、一般的鉄道写真とは明らかに違う写真を撮っています。そうして資料としてまとめていくのです(史料、という表現を使うこともあります)。
この分野の特に奥深い人たちは、たいてい調査内容を本として出版しています。戦前にしか存在しなかった機関車についての調査や図面の発掘など、まったくもって尊敬に値するものがあります。この分野こそ、まさに「文系鉄」と言えるのではないかと思います。

○電子工作鉄
模型鉄の中でも、特に運転用機器類や踏切、ドア開閉などのギミック、更には自動ポイント制御など、電子工作を得意とする人たちです。自分で電気回路が書けるのはもちろん、ギミックのための機械的動作工作にも長け、すばらしい腕をお持ちです。こちらは「理系鉄」の典型と言えるのではないでしょうか。

○旧運輸省以外の鉄(非営業系鉄)
なんのこっちゃとお思いでしょうが、運輸省ばかりが鉄道を敷いたのではありません。古くは陸軍鉄道連隊、現在では最近紹介した立山砂防軌道などの建設省所轄の工事軌道、北海道の殖民軌道、林野庁管轄の森林鉄道など、運輸省管轄でない鉄道はたくさんあるのです。更に工場構内のトロッコや、鉱山で鉱石を運搬するトロッコなどもこの範疇に入ります。
現物が少なくなってしまったので、この分野の撮り鉄はかなりの行動力が必要になっていますが、鉄道模型では逆に製品が多くなってきています。前述の資料鉄の中には、こうした非営業系の鉄道だけを調査している人もいます。この分野は文系と理系が入り交じっているという感じがします(実物のみの人は文系、模型の人は理系と言えるが、両方、という人も多い)。

○保線鉄
鉄道は線路を保守していかねばなりません。そのため、マルチプルタイタンパー、バラストレギュレーター等、保守のための工事車両を保有しています。これらは営業用ではないので機械に分類されます。日中は保線基地で休んでおり、活躍は終電後から始発までの間、がほとんどです。こうした保線機械にも一定のファンがいます。鉄道模型でも出ています。
さらに、保線そのものを興味の対象とするマニアもいます。曲線の速度制限とか、曲線通過時にかかる線路への横圧とか、振り子車両の特殊な速度制限など、施設面のファンの方もいます。
保線のための機械の構造、線路そのもの、架線の張り方などに興味を寄せる方もおり、理系鉄と言えるでしょう。

 

ワタシの知り得る範囲で特化した鉄道マニアをご紹介しましたが、荘子曰く「人の知り得るところは、その知らないところには及ばない」。まだまだもっとコアな方々がきっといらっしゃいます。

(文・写真:エドガー)