QE3で世界経済はよみがえらない。国土強靭化より長期的な成長計画を
「金融緩和の継続とともに世界経済は2013年も厳しい状況が続く」と予想する中原圭介氏。株式投資なら、低PBRの銘柄を大きく下がったときに買う程度にとどめ、「守り重視」に徹するべきという。



米国経済回復の足どりが重ければ、世界経済もよみがえることは不可能だ

米国FRBが9月、ついにQE3(量的緩和第3弾)の実施を発表した。

金融緩和の動きはとどまるところを知らないが、これによって2013年の世界経済が上向くことは、残念ながらありえないだろう。

過去のQE1(同第1弾)、QE2(同第2弾)で何が起こったのかを振り返れば、QE3のもたらす結果は火を見るよりも明らかだ。

市場にあふれ返ったドル資金の多くは、銀行から企業や個人に貸し出されることなく、投機マネーとして株式市場や資源市場に流れ込んだ。

その結果、ドル安と株高、資源高を招いたが、これによってトクをしたのは株を大量に保有する米国の富裕層と、ドル安で為替差益を得ることができた米国企業だけ。

米国の国民は資源高によるインフレに苦しみ、銀行から貸し出しを受けられない米国の中小企業も困窮した。

これではどんなに企業の業績が上向いても、米国経済全体が力強く回復する期待は薄い。米国経済の回復の足どりが重ければ、世界経済がよみがえることも不可能だ。

一方、南欧諸国の債務問題がくすぶり続けている欧州では、景気悪化とともに賃金の低下が顕著となっている。

これに加えて金融緩和が進めば、物価が上昇し、賃金安とインフレのダブルパンチに見舞われる。

このまま金融緩和が続けば日本経済も厳しい状況を抜け出すことはできない。

欧州諸国、特に南欧の国民は生活苦に追いやられ、個人消費がますます落ち込むことになる。

幸いと言うべきか、円高によってインフレ圧力が封じ込められている日本の国民生活は、米国や欧州に比べれば、まだマシな状況だ。

しかし、世界経済が密接に結びついている今日、米国や欧州の苦境は対岸の火事ではない。2013年も金融緩和が続くのであれば、欧米だけでなく、日本経済も厳しい状況を抜け出すことはできないとみている。

仮に共和党のロムニー候補が米国大統領選挙で当選していれば、2013年以降、為替相場は円安・ドル高に向かう公算が大きかった。なぜならば、ロムニー氏はFRBが進める金融緩和を厳しく批判し、政権を奪還したら、FRBのバーナンキ議長を辞任に追い込むとさえ発言していたからだ。

オバマ大統領が続投となったことで金融緩和が継続されるので当分の間、円高は続くことになるだろう。

外貨が稼げる産業こそ、日本における次世代の成長産業となる!

議会選挙では上院を民主党が押さえたものの、下院は共和党が押さえたため、「ねじれ状態」が継続してしまうため、政策を推し進めることが難しく米国経済は引き続き厳しい状況が続くだろう。

日本でも、遅かれ早かれ総選挙が実施される。大方の予想通り自民党・公明党の連立政権が復活した場合、自民党が掲げる10年間で200兆円規模の「国土強靭化計画」が本当に実施されるのかどうかが気になるところだ。

この計画が動きだせば、日本の財政はいよいよ危うくなる。日本の将来を真剣に考えるのなら、公共投資に多額の税金を投じるのではなく、国としての長期的な成長政略を積極的に推し進めるべきだ。

私は、日本にとっての成長産業とは「外貨を稼ぐことのできる産業」であると考えている。少子高齢化と人口減少が続くのであれば、海外で稼ぐしかない。規制でがんじがらめになっている農業や医療を外貨獲得のための産業として育て上げ、観光業などもテコ入れを図るべきだ。

家電が韓国などの外国勢に押される中、日本の産業で輸出競争力を保っているのは自動車だけだ。家電に代わる規模の新たな輸出産業を育成しなければ、貿易赤字はますます膨らみ、日本は経常赤字国への道をまっしぐらに突き進むことになってしまう。