クレディセゾン 
東京支店営業計画課 
志賀正樹 
1982年、千葉県生まれ。2006年東京経済大学コミュニケーション学部卒、クレディセゾン入社。学生時代にはバックパッカーとしてアジア各地やカナダを巡った。

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「すみません! 寝坊をしたので、走ってきました」

朝の9時50分。東京・池袋に本社を構えるクレディセゾンの受付に、汗だくの青年が現れた。東京支店で企画業務を担当している志賀正樹(28歳)だ。

約束は10時。遅刻でもないのに謝る志賀。「愛嬌もやる気もある若手社員だな」という好印象を、誰もが抱くだろう。

成績も抜群である。新卒入社から3年間は大手商業施設の営業担当として、各店舗との交渉や、店舗イベントに合わせた提携カード募集の企画立案・運営を精力的に行ってきた。

「カードの新規加入者募集を行う際、目標数値に届かないと気持ちが悪いのです。私自身も店頭に出ます。『午後だけで10件とります!』と宣言して必ず達成しますよ。私は声も身振り手振りも大きくて目立つので、お客様が足をとめてくれやすいのかもしれません」

すごい自信である。現在は、支店内で経営企画相当の業務を担当する志賀。旅行会社の利用客向けにカードのポイント還元システムを簡便化するなど、着々と成果を挙げている。

さらに、セゾンカードを通じたユニセフやユネスコへの寄付を呼びかける「愛あるプロジェクト」も自ら企画し、社内外を巻き込んで主導している。担当業務の枠をはるかに超えた活躍ぶりだ。

「私のテーマは世界平和なんです。カード会社が世界を救える! と本気で思っています」

仕事は仕事だと割り切っている凡人ビジネスマンならば苦笑してしまうような青臭いセリフだ。しかし、志賀は本気である。実績も残している。

「納得できない仕事を嫌々やりたくはありません。違うと思ったら上司にも意見します。それで敵が増えることは気にしません。一所懸命に誰かを喜ばせようと努力していれば、最終的にはうまくいくと信じています」

■顧客の経営にまで入り込みたい

若々しいひたむきさがある志賀とは対照的に、ふてぶてしいまでの力強さを感じさせるのはリクルートの加藤貴博(32歳)だ。中古車情報誌「カーセンサー」などを手がける事業部で、商品企画など2つのグループを統括する。12人の部下を率いる若きマネジャーである。

「いわゆるプレーイングマネジャーではありません。やりたくても自らプレーする暇がない。メンバーが成果を出しやすい環境を用意することが、私の仕事です」

ただ、報酬や出世にはこだわらないところは志賀と似ている。

「お客さんは熱い思いを持っている経営者が多い。とにかくお役に立ちたい。単なる金儲けには興味がありません」

もちろん、実績も後からついてくる。社内MVPとして表彰されたことも少なくない。

そんな加藤にも不遇の時期があった。入社直後に配属された広告営業部門では「まったく売れない営業マン」だったのだ。

1つひとつの広告案件で、顧客企業の経営にまで踏み込んで考えてしまう。本質的なものにこだわりすぎるため、スピーディな営業活動ができなかった。だが、この骨太な思考力が商品企画や事業開発の業務で花開く。

「今でも大事にしているのは、仕事内容を勝手に自己規定しないことです。与えられた役割を果たすだけの仕事より、自分で課題設定をして戦略を立てて、それを実現していきたい。経営者と同じ目線まで自分を引き上げるよう努力しています」

2010年、子どもが生まれて「攻めばかりの人生」ではなくなったと、はにかむ加藤。ただし、社内結婚の妻には「あくまで仕事優先」だと理解を求めている。

「もちろん、20代の頃のような無茶な働き方はしませんよ。早く帰れるときはさっさと帰ります。メンバーたちは私の背中を見ながら働いている。『とにかく長く会社にいるのが美徳だ』とは思ってほしくありません」

とても32歳には見えない、思慮深いリーダーの言葉である。

■仕事するより早く家に帰りたい

さて、打って変わって「まったり系」社員の話も聞こう。大手メディア企業で広告営業をしている本間良明(仮名、25歳)は、入社3年目にしてぬるま湯生活を満喫している。

「広告収入は右肩下がりですが、部署に危機感はありません。今のところ収入もいいですよ。配偶者手当も含めて600万円です。社内結婚の妻もなぜか配偶者手当をもらっています」

2人合わせて1200万円。しかも、入社して約15年間は年功序列が続く慣習なので、がんばってもがんばらなくても差がつかない。

「大きな契約をとってきても、個人の力だと評価されにくいんです。社名の通りがいいし、代理店の努力の結果かもしれない。人事評価も最高や最低がつくことはめったにありません。みんな横並び。こんな職場が嫌で、入社2年目までは辞めたくて仕方なかった。でも、3年目になって結婚もして、『このままでもいいかな』と思い始めました。朱に交われば赤くなる、と言うじゃないですか」

適切な格言を持ち出すあたりに客観的な分析力を感じる。しかし、労働意欲は感じられない。

「同期の中には優秀なヤツもいますよ。マグレではなく新規案件を開拓しています。やろうと思えば、仕事は無限にあるんですねえ。でも、僕はそんなことより早く家に帰りたい」

遅くとも7時半には会社を出て、夫婦であれこれおしゃべりしながら夕食をとり、食後は映画を見たり本を読んだりして自宅でゆっくり過ごす。

翌朝は駅まで手をつないで仲良く出社。休日出勤などもってのほかだ。学生時代からのバンド活動も続けている。本間の優雅な日常である。

「子どもも早くほしいですね。地方転勤は断るつもりです。会社には僕の代わりがいくらでもいますが、家庭では代わりがいませんから」

本間と同じく「入社3年目でやる気を失った」商社マンがいる。総合商社の法務部に勤める浜口紀夫(仮名、30歳)だ。

「入社直後の上司とウマが合わず、ちょっと腐ってしまいました。仕事が面白いと思ったことはありませんね。転職を考えたこともあるのですが、その頃にできちゃった結婚をした妻から『今の会社に入れたのがあなたの最高地点なのよ。転職なんて許さない』と言われてしまいました。3年目ですべてが面倒くさくなって、『流そう!』と心に決めたんです」

以来、流れるように働いてきた。要領はいいほうなので、全力を尽くさなくても担当業務はこなせる。女たらしの特技を活かし、業務職(一般職)の女性をおだてて、仕事をどんどん任せる。毎日、残業はほぼ皆無で退社している。

「家に真っ直ぐ帰る気にはなりませんね。ヨメが怖いから……。最近はマンガ喫茶にはまっています。『エリートヤンキー三郎』はおすすめですよ!」

マンガの話になると急に目を輝かせ始める浜口。中学生時代から「不良」にあこがれていたのだと興奮する。

「先日も人事部とケンカしてしまいましたよ。人事面談に10分ぐらい遅れただけで、『おまえ、なめているな。帰れ』なんて偉そうに言うものだから、頭にきて本当に帰ってきました。ハハハ!」

約束の10分前に着いたのに謝るクレディセゾンの志賀とは大違いの態度だ。出世はしなくてもいい、と開き直る。

高い志を掲げ、仕事に生きがいを見出している志賀と加藤。仕事よりも家庭生活やマンガ喫茶通いに重きを置いている本間と浜口。両者の人生が交差することはこの先もないだろう。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(大宮冬洋=文 田辺慎司、梅原ひでひこ=撮影)