選挙戦でだんまり


 自民党の安倍晋三総裁は9日、東京都内の遊説で、「3年前自民党は政権を失った。この深刻な反省からスタートした。もう一度結党の理念を見つめ直し、そして政策を鍛えあげた」と、これまでの遊説と同じフレーズで切り出しました。自民党はどう生まれ変わったのか。

 政権を失った自民党は2010年1月の党大会で、党立て直しの出発点として新綱領を作りました。新綱領は政策の基本点の第一に「新憲法の改正」をすえて改憲政党の性格を鮮明にしました。福祉政策面では「自助自立する個人を尊重」として、公的な責任を投げ捨て個人責任を基本とする立場を明確にしました。「伝統」と「家族、地域社会、国への帰属意識」などを強調し、復古主義、国家主義の政党に生まれ変わるとしました。一方、「民主主義」という言葉を消してしまいました。また、結党時に掲げた「国民政党」の看板も「保守政党」と塗り替えました。

 安倍総裁を筆頭にした自民党は、改憲・国家主義的な保守政党に変わった―これが安倍総裁が語る「新生」自民党の本当の姿です。

 新保守政党として衣替えした自民党は、総選挙政策で「日本を取り戻す」をキャッチフレーズにして、「憲法改正により自衛隊を国防軍として位置づけ」「集団的自衛権の行使」「自衛隊の人員・装備・予算の拡充」「教科書検定基準の抜本的に改善」といった一連の9条改憲・軍拡路線を前面に出しているというわけです。

右傾化を指摘

 このため、解散総選挙が行われれば自民党が第一党になる可能性がでてきたこの夏以後、尖閣問題も重なって国内外で、日本の右傾化が指摘されてきました。米ワシントンポスト紙(電子版9月21日)は「(日本は)右傾化への重大な変化の真っただ中にあり」と書きました。自民党の河野洋平元総裁さえもが「自民党という政党はずいぶん幅の狭い政党になった。かつて自民党は、日本の保守全体をにらんでいた。保守のなかの右翼だけになった…」(9月16日、TBSテレビ番組)と嘆きました。

 “日本の行き過ぎた右傾化にはアメリカのオバマ民主党政権も喜ばず警戒的”と見る日本政治研究者のジェラルド・カーティス米コロンビア大学教授は「日経」(3日)紙上で「日本が右傾化して大きく変わる可能性があるというニュースが多くなっている。しかし、そのように変わってほしくないというのが、日本の有権者の気持ちだろう」と話しています。

国民だまし

 安倍総裁は8日の地方遊説で、選挙戦公示前まで声高に叫んでいた「国防軍」「集団的自衛権行使」の発言を控えました。自民党支持の流れを削(そ)ぐため党内から「使用禁止」とされているからだといいます。本音を封じ込めるのは、やはり国民から支持されないことが分かっているからです。裏を返せば、多数を確保したあとで本音を通していくという、あってはならない国民騙(だま)しのやり方です。