問題は中国政府を後ろ盾とする紅いファンドが、いつ反日の牙をむくかである。

 折も折、中国では習近平新体制が発足し、日本では総選挙を経て、民主党政権に終止符が打たれる公算が強い。従って日中の新政権は、国民向けに強い政府をアピールする必要に迫られ、尖閣諸島を巡る緊張が一気に高まる恐れがある。その場合、中国政府の意向をくんだオムニバスが、日本へ挑戦状を叩きつけるのは火を見るよりも明らかだ。
 「金融当局が恐れているのは、紅いファンドが保有株を一斉に売れば、他の銘柄にもパニック売りが広がって“尖閣暴落”に見舞われかねないこと。それでなくても市場は薄商いが続いているため、売りが売りを呼ぶ悪循環に陥りやすい。本物の紛争だけでも大変なのに、保有株を武器にした経済戦争を挑まれたら、日本は立ち直れないほどの大ダメージですよ」(経済記者)

 実は市場が恐れるシナリオには、別の見方もある。仮に尖閣沖で極地戦が勃発すれば、株価はたちまち急落する。そのドサクサに乗じて中国マネーが、大幅安となった日本の優良企業の株を大量に買いあさり、一気に経営権を奪取するとのシナリオだ。むろん、このケースにはオムニバスが既に大株主として名乗り出ているトヨタ自動車、オリックス、日立、ソニー、三井物産、JR東海、ニコンなども標的の対象になる。
 繰り返すが、標的候補となる企業は今年の3月時点で238社。9月中間期では前記の通り何社かが加わっているだけに“より取り見取り”とは、よくぞ言ったものである。言い換えれば、中国は売り崩しで日本経済に壊滅的なダメージを与えるだけでなく、暴落に乗じて優良企業を次々と乗っ取ることさえ可能なのだ。

 この中国側のシタタカな“王手、飛車取り作戦”に、日本はどうすべきなのか。前出の市場関係者は冷ややかに話す。
 「善意の第三者として株を取得し保有しているのですから、企業側は対応に苦慮します。これまで『物言わぬ株主』に徹し、余計な口出しを控えてきたとあってはなおさらです。逆にいえばオムニバス=中国政府は紳士らしく振る舞うことで、日本の警戒心を解いてきた。その秘めた魂胆を見抜けず、何ら対応策を打ち出さなかった以上、自業自得と言うしかありません」

 尖閣沖の風向き次第で“日本沈没”が現実味を増す。実に不気味な話である。