企画立案から店頭展開までを統括。新商品のヒットを狙う

ビジネスパーソン研究FILE Vol.193

明治グループ 岡澤健さん

商品企画担当として、“売れる新商品をづくり”を目指す岡澤さん


■研究所で試作品づくりを経験し、工場で生産ラインの立ち上げを経験

カールやコパン、ミルクチョコレートやチェルシーなど、誰でも知っている明治の看板商品。岡澤さんは、入社以来3つの部署を異動し、こうした菓子における“モノづくり”の流れをすべて経験している。

最初に配属された菓子開発研究所では、商品企画部と話し合いを重ね、自分の手を動かして新商品を試作する仕事に就いた。入社早々、任されたのは「カール」の新商品。カールは、チーズ味、カレー味、うすあじの3種類の定番以外に、新フレーバーを年数回発売しており、岡澤さんは、限定商品「のりキムチ味」の開発を行うことになった。

スナック菓子の味の決め手は、調味料のシーズニングと液体のフレーバーの組み合わせ。そのバランスを調整しながら、自分なりにおいしいと思える味を40種類近く試作した。「おつまみにもなるカール」をアピールするため、志村けんさんのCM起用が決まっていたので、所属事務所に試作品を送って志村さんにも味見してもらい、グループ内での品質確認やマーケティング会議での承認を経て、2003年7月、岡澤さんの初仕事が店頭に並んだ。
「うれしかったですね。入社した翌年には自分の手がけた商品が店頭に並んでいるなんて、信じられない気分でした。鳥取県に住む友人が『鳥取のコンビニでも売っていたぞ!』と店のカールを買い占めて、写メで送ってくれたのを見たときは、感激しました(笑)。日本全国の人たちがこの商品を口にしているんだと、実感しましたね」

入社6年目、岡澤さんは東海工場の技術グループに異動した。技術グループは、本社や研究所とのやりとりの窓口としての役割を担い、新商品を安定生産するための仕組みづくりなどを行う。特に大変なのは、製造条件を確立すること。すでに発売までのスケジュールが決まっている中で、研究所での試作品通りの商品を工場でつくらなければならない。期限ぎりぎりまで製造条件が出せず、工場のスタッフと深夜まで何十回と試行錯誤したこともある。
「ようやく納得のいく商品ができて初めて、ひと安心できるんです。工場は、安全・安心な商品を、安定して生産することが重要ですから、この後も解決すべき問題は出てきます。でも、製造条件の調整は1つの大きな山場なので、これを乗り越えたときの達成感は格別です」

商品の原価計算やラインの合理化も、技術グループの重要な仕事である。工場には生産現場を熟知した人たちがいるので、岡澤さんは、彼らが気づいていないことを商品開発経験者の視点から提案しようと心がけた。例えば、工場には、実際の生産に入る前に商談用に新商品をつくる見本生産という工程がある。見本生産は、ラインが整っていないこともあって、工場にとっては難しい作業だ。岡澤さんは、研究所で培ったノウハウを生かし、スムーズにつくれる方法を提案するなどした。
「研究所時代は、試作品だけで自分が商品をつくったつもりになっていましたが、工場で店頭に並ぶパッケージに入った商品を手にしたときに、初めて『これが商品をつくるということなんだ』と気づきました。また、工場に来てコスト意識が身につきました。例えば、ラインを工夫して稼動に必要な人数を減らしたり、エネルギーの無駄を省いたり、小さな削減の積み重ねが、24時間稼働している工場では大きな利益につながる。そうした努力が、1商品あたりの利益として数字に反映されるのが目に見えることも、刺激になりました」


■商品づくりにかかわる人たちを統率し、同じゴールを目指す商品企画の仕事にやりがい

2009年に異動したのは、菓子商品企画部。商品アイデアから設計、試作品づくり、生産、店頭に商品が並んだ後のフォローまで、関連各署を統括しながら全体のスケジュールを管理する仕事だ。
「これまでは技術系の仕事でしたが、ここは、営業系と技術系が混在する珍しい部署。ブランディングやマーケティングは、今までとはまったく別の視点が必要なので、消費者にどのような商品が望まれているのか、店頭でどのような商品が動いているのかという事情に明るい営業経験者と情報を共有し、アイデアを出し合うのはとても勉強になります。この仕事を始めてわかったのは、どんなにおいしい商品でも、店頭で売れるとは限らないということ。価格、内容量、世の中の嗜好のトレンド、競合他社製品の中における位置付けなど、さまざまな条件が合致して初めて売れるのです」

さまざまな条件を考慮する上で、岡澤さんが注力しているのは、フットワーク軽く動き情報を集めること。そうした目に見えない動きや努力があってこそ、世に出せる商品になると信じているからだ。
「中には、短期間で発売しなくてはならない商品もありますが、そういう事情に関係なく、どの商品も全力で取り組み、自分が自信を持って人に勧められる商品をつくること。そして、いいと思う理由を、根拠を持って説明できるよう心がけています」

商品づくりには、社内外を含め数多くの人たちがかかわっている。誰もが“売れる新商品をつくる”という1つのゴールに向かっているが、ときには各部署の思惑から、違う方向を向いてしまうこともある。
「そういうときに『ゴールは一緒だと』いうことを再共有し、皆を同じ方向に導いていくのが私の役割。いろんな意見を調整するのは大変ですが、経験を積むにつれ、さまざまな問題にうまく対処できるようになり、問題が起こらないよう事前に根回しできるようになってきました。研究所や工場での仕事は、商品ができ上がることに達成感がありましたが、今の仕事は、関係者の気持ちを1つにして、同じゴールに到達できたときに大きな達成感があります」

岡澤さんにとっての仕事の意義は、世の中に貢献して対価を受け取ること。そして、その中で自分を成長させること。
「だから、妥協する仕事はしたくないし、常に自分を成長させられる仕事をしたいと思っています。今の仕事で成長できたことは、人を説得して動かす術が身についたこと。短期的には、ヒット商品を生み出すという大きな目標がありますが、自分のキャリアを見据えた長期的な目標としては、海外での商品開発に興味を持っています。国内市場は成熟しているうえに、菓子業界を取り囲む環境は年々厳しいものとなっています。その点、海外には大きな市場がある。だから、海外で日本の菓子のおいしさを広め、新たな市場を開拓していく仕事に挑戦してみたいですね」