米国は本当に”隆盛”に向かうのか? 「新エネルギー革命」で見る米経済の今後
――「新エネルギー革命」とはどのようなものなのでしょうか?「シェールガス」や「シェールオイル」は、「非在来型エネルギー」と呼ばれています。
非在来型エネルギーとは、通常の油田・ガス田以外から採掘される石油・天然ガスのことで、古くから利用されてきた石油・天然ガス(「在来型エネルギー」)と区別されています。
「新エネルギー革命」とは、非在来型のエネルギーの採掘が採算が合うようになり、大量に生産されることによって在来型のエネルギーにとってかわる存在になりうるという点、さらにそれによって世の中の流れが大きく変わるという意味において、「革命」という言葉が使われるようになりました。
――100年分ですか。
すごいですね。
いつからその「革命」は起こってきたのでしょうか?在来型の石油などは、地下深く2000〜3000メートル掘って、石に高圧をかけてオイルやガスを噴出させるという方法で採掘するのですが、シェール層というものは、縦ではなく横に広がっているため、採掘が難しいといわれてきました。
採掘するには高度な技術が必要で採算もあわなかったため、メジャーをはじめ誰も手をつけてなかったのですが、シェール層があることは古くから知られていました。
そこで1990年代前半から、米国の中小の石油会社が、地道に採掘技術の開発を進め、2000年ぐらいに採掘に成功しました。
採掘技術は、試行錯誤しながら、こつこつ様々な方法を試していって、開発できたそうです。
2005年ぐらいから増産されるようになり、2008年ごろにはすでに「シェール革命」という言葉が出てきたのです。
シェール層は米国全土にあり、シェールガスの増産に伴って、米国の天然ガスの価格は大きく低下してきています。
しかも、2020年ぐらいからは、米国は天然ガスの輸入国から輸出国に転じることができるとの見通しも示されています。
オイルについても、米国内でシェールオイルを採掘できるだけではなく、カナダのオイルサンドからの産出量が増加を背景に、カナダからのオイルの輸入が相当量見込まれるため、ペルシャ湾岸諸国から米国への石油輸出量は、今後大幅に減る見通しとなっています。
また、カナダだけでなく、メキシコでもオイルが採掘できるため、北米だけでかなりのエネルギー産出が見込まれます。
――米国は、外交・軍事で中東を重視してきましたが、それが変わる可能性がありますね。
米国のエネルギー自給率が上昇する、そのことが「革命」といわれるゆえんです。
まず、米国のエネルギー輸入が減ることになり、貿易赤字が改善することが見込まれます。
さらに、エネルギーの安定的な確保を可能にするために中東近辺に配備していた軍を縮小させるなど、国防費を抑制することで財政赤字を削減することが考えられます。
これまで「貿易赤字」「財政赤字」の”双子の赤字”がいわれていたような状況が、「新エネルギー革命」によって、大幅に削減される可能性が出てきたのです。
――赤字が減るだけでなく、中東に介入し続けてきた外交・軍事政策上の大転換も図られそうですね。
まさに、世界にとっても「革命」ですね。
米国の双子の赤字が減れば、米国の信認も高くなります。
つまり、「ドル」への信認が高まるわけです。
――基軸通貨国の信認が高まることは、世界にとってもプラスですね。
さらに言えば、「新エネルギー革命」は、米国の国家としての信認を高めるだけでなく、企業にとっても大きな影響を及ぼしつつあります。
シェールガスの増産により、天然ガスの価格は下がっていて、ピーク時に100万BTU当たり15ドルなっていたのが、現状では2〜3ドルで推移しています。