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創造性が発揮されるには条件がある

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そもそも知識と経験は、何のために必要なのでしょうか。

知識と経験は、創造のもとになります。創造といっても、無から有は生まれません。創造は知識と経験が化学反応を起こした結果として生まれてきます。

ただし、知識と経験という2つの材料だけでは化学反応が起きません。まず創造が起きやすい環境と道具・技術が整い、そこに触媒となる動機が加わってこそ、知識と経験が融合してスパークします。

環境(Circumstances)と道具・技術(Skills)、動機(Motivation)がそろって創造性が発揮されることを、それぞれの頭文字をとってCSM理論と私は呼んでいます。武道の世界でいう「心技体」と同じです。

心が動機、技が道具・技術、体が環境。武道では心技体がそろって一流になりますが、創造性も環境、道具・技術、動機がそろってこそ発揮されます。

3つがそろう過程も同じです。武道では、まず基礎体力をつけます。体力を鍛えなければ技の鍛錬もできないからです。技を身につけると、それを扱う心構えもできてきます。環境、道具・技術、動機も同じで、まず環境が整うことでスキルも身につき、スキルが身につくことでモチベーションが生まれます。

社員が知識や経験を持っているのに創造性が発揮されていない組織は、環境、道具・技術、動機のうちのどこかが手薄になっている可能性が高いのです。それを把握して改善することが組織の役割の一つです。

最初に整える必要があるのは、創造しやすい環境です。

創造しやすい環境は、自由奔放であることが基本です。批判厳禁で、判断は後回しです。会議でいうとブレーンストーミングです。また一人よりも仲間がいたほうが創造性は発揮されやすい。創造に適した場所や時間、気分も欲しい。たまには社内の会議室ではなく、いつもと違うところで会議をするのもいいでしょう。

■CSMは、知的生産のためのインフラ

環境が整えば、道具・技術が必要です。創造の技術とは、発想の技術、柔軟に物事を考える技術、想像する技術です。これらの技術を部下たちが自発的に身につけていけば理想的ですが、現実的にはそうでないことが少なくありません。組織としてそれぞれの技術を社員に教え、トレーニングしていくことが求められます。

創造する動機にも気を配る必要があります。

創造とは、それ自体がワクワクするものです。ただ、自発的なサイクルに持っていくために、何らかのインセンティブを用意して外から動機づけをしてあげることも大切です。インセンティブは金銭的な報酬でなくてもいいのです。創造的な良い仕事をした部下を周囲の人にわかるように評価したり、より創造性が求められる仕事を任せるなど、さまざまな工夫ができるでしょう。

こうして環境、道具・技術、動機がそろうと、各々が持つ知識と経験が化学反応を起こして、創造性が発揮されていきます。環境、道具・技術、動機は、いわば知的生産をするためのインフラです。知識と経験だけがあってもインフラが整っていなければ宝の持ち腐れになるし、逆にインフラだけがあっても知識と経験がなければ創造は生まれません。

知識、経験。そして環境、道具・技術、動機。これらがすべてかみ合ったときに、まわりが驚くような創造性の高い仕事につながるのです。

(※『ビジネススキル・イノベーション』第7章 時代の潮流をつかむ(プレジデント社刊)より)

(横田尚哉)