そうなった場合は、いよいよユーロの消滅が現実味を帯びてくることになる。



1ドル=70円割れで、「1ドル=50円時代」の可能性が一気に進む!

一方、中国は、輸出依存型から内需主導型への経済構造転換が十分に進んでいないせいで、欧州向け輸出の不振などによる経済のスローダウンを余儀なくされている。

かといって大規模な財政出動を実施すれば、再び不動産バブルや急激なインフレを招く危険もある。

財政政策と金融政策を巧みに使い分けつつ、なだらかに景気回復を促す手腕が問われるが、そうした難しい舵取りをほとんど経験したことがないことを考えると、ハードランディングを招く可能性もある。それによって経済成長がさらに減速すれば、国民の不満が高まって社会不安が増大するかもしれない。日中問題にも悪影響を及ぼすことが懸念される。

このように世界経済が総崩れ状況なのだから、日本経済にとっても2013年が非常に厳しい年になることは間違いない。

野田政権が10月に打ち出した7500億円程度の経済対策では焼け石に水であろう。

総選挙で政権交代が実現したとしても、外部環境の悪さなど客観的な情勢を考えれば、景気回復は期待できない。むしろ自民党が掲げる国土強靭化計画のような大型公共投資によって国の借金がさらに膨らみ、財政が窮地に追い込まれる危険もある。

ただし、政府部門は赤字でも、国全体としては依然、日本は債権大国なので2013年も円高圧力が弱まることはないだろう。

何らかの引き金によって1ドル=70円の節目を割り込めば、一気に円高が進む可能性もある。「1ドル=50円時代」は確実に迫っている。

2013年を読み解く急所!
すでに成熟期に入っている日本経済の成長にテコ入れしようとしても限度がある。公共投資などのばらまきはやめて、所得格差や地方経済の疲弊などを解消するために?富の再分配政策〞を実施すべきである。

浜 矩子(NORIKO HAMA)
同志社大学大学院教授 エコノミスト

一橋大学経済学部卒業。75年、三菱総合研究所入社。ロンドン駐在員事務所長兼駐在エコノミスト、経済調査部部長などを経て、2002年より同志社大学大学院ビジネス研究科教授。著書に『誰も書かなかった世界経済の真実 地球経済は再び斬り刻まれる』(アスコム)など。



この記事は「WEBネットマネー2013年1月号」に掲載されたものです。