Jリーグ第33節
広島 4−1 C大阪
(11月24日 広島ビッグアーチ:NHK総合テレビ)

★「スリーバック」の守り
 サンフレッチェ広島がJリーグ初優勝を決めた試合をテレビで見た。これまで広島の試合を見る機会はなかったが、この日の試合振りを見て「優勝して当然」と思った。
 まず守りがいい。
 アナウンサーは「スリーバック」といっていたが、守備ラインに3人しかいないわけではない。
 テレビでは、ロングに引いて守備ライン全体を見ることのできる画面が多かった。
守りにまわっている場面では両サイドも下がって、守備ラインに5人いることもあった。攻めに出ているときでも、守備ラインに4人いる場面があった。
 もちろん、常にそうだというわけではない。状況に応じて、流動的にポジションを取るわけである。その判断と動きが適切でバランスが取れている。

★佐藤寿人を生かす攻め
 守りの良さが基礎だが守り固めではない。
 守備ラインは状況に応じて適切な高さを保っている。
 そしてボールを奪うと、しっかりした攻めの形を、いくつか持っている。
 パスをつなぐ攻めは、前年までのペトロビッチ監督が植えつけたものである。森保一監督になっても、その基礎は生きている。
 サイドから攻めあがって、逆サイドへのクロスでチャンスを作る。こういう攻めは、この日の4得点の原動力だった。ピンチを凌いで、大きく前線に蹴り返すこともある。
いろいろな攻めを、状況に応じて展開できるのが、今季のサンフレッチェの良さだろうと思った。
 こういう攻めは、ワントップの佐藤寿人の得点能力を生かしている。佐藤にボールが渡ると危ない。それを相手が警戒するから、広島の攻めのチャンスが生まれる。

★生き生きと躍動するチーム
 今季の広島には、ザック・ジャパンの代表に選ばれているプレーヤーはいない。この日は外国人選手も出場停止だった。それでも、選手たちは生き生きと躍動している。
 テレビの画面からも選手たちが試合を楽しんでプレーしていることが分かった。厳しいプレーを続けながらも、シュートがきわどく外れたようなときに笑顔が映る。
 4対1で試合終了のホイッスルがなり、同時に行われていた仙台対新潟の試合で仙台が0対1で敗れたことが伝わると、佐藤寿人はフィールドに突っ伏して泣いていた。楽しみながらも体力と気力を尽くして闘い優勝をかちとった感動を、テレビカメラが、ずっと捉え続けていた。
 サンフレッチェは、十分とはいえない戦力と資金力で、みごとなチームをまとめ上げた。チームの指導陣とクラブ経営陣の努力と工夫を評価したい。