バックシームに革命起こした老舗アツギが原点回帰 狙いは?

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 1955年にそれまでのストッキングの常識に革命を起こした老舗のアツギが、それ以前のバックシームストッキングに力を入れている。2011年に「プレーンストッキング逆襲」と銘打ちストッキングの"復権"の一躍を担ったアツギだが、プレーンストッキングブランド「ASTIGU(アスティーグ)」の新作として発表した「凛(リン)」は、懐かしいバックシーム付き。脚の後ろに縫い目のないシームレスストッキングを日本で初めて誕生させたことで知られるアツギがなぜ今、バックシームを打ち出すのだろうか?

アツギ「アスティーク」の新作はバックシームの画像を拡大

 バックシームの歴史は、戦後まで遡る。当時日本で主流だったバックシームは、仕様上少し動いただけで縫い目が歪んでしまい、絶えず足の後ろに気を使わなければならないという代物だった。この問題点を解決したのがアツギの創始者 堀禄助。「日本の女性にもっとはきやすいストッキングを身につけてほしい」と考え、1955年に発売されたのがバックシームののないプレーンストッキングだった。「気を使わないで歩いて欲しい」という願いで商品化はしたが、思わぬ落とし穴にはまる。「バックシームのないストッキングは何も履いていないようで恥ずかしいという意見が多かった」とあって当たり前のバックシームがないことでストッキングを履いていないように思われることを顧客が嫌がり発売当初は、日本では売れなかったという。当時の日本女性にとってバックシームは面倒な反面、履いているとアピールする女性のステイタスだったのだ。その後、欧米のスタイルが流入するにつれ販売戦略も功を奏し1960年代にはプレーンストッキングが一般化。高度経済成長の波に乗り同社は大きな躍進を遂げる。

 その後、バブル崩壊やリーマンショックなど「数年間にわたって厳しい時期が続いていた」が、昨年からストッキングの売上が2桁伸びてきたという。これまでのオフィス系の30〜40代既存客に加えて、「10代後半から20代の若い女性達がストッキングの魅力に気付いてリピートしているのでは」と広報担当者が話すように、タイツに慣れしたんだ若年層が履き始めたことで一時衰えていたストッキングの人気が2012年には戻ってきた。

 そこで、アツギは2013年春夏シーズンの展示会で「女性のたしなみ」をテーマに掲げ、女性らしさの象徴としてストッキングを提案。なかでも、トップモデルのTAO(タオ)を広告塔に起用した漢字一文字のパッケージで女性達に"ウケ"ている「ASTIGU」の特別企画として登場したのがバックシーム付き「凛」だ。機能面やファッション性に注目が集まる表層的な"革命後ストッキング"とは違い、原点回帰の不自由だからこそ仕草やたしなみが生まれる深層的なアイテム。物質的ではなく人的なものが表れる「凛」に今期のテーマをダイレクトに反映させたとアツギは言う。

 アツギは、かつては女性の動きを制限するものとされていたバックシームだが、現代においては女性ならではの美意識を提供できるものとして解釈。「履くときも履いているときもバックシームに気を使うことで、女性ならではの仕草が際立ちます。バックシームはある意味では"美"の原点かもしれませんね」と広報担当者は話している。