もし、余命が残りわずかだと知らされた直後、目の前に現れた悪魔が「この世界からひとつだけ何かを消す。その代わりにあなたは1日の命を得ることができる」と、交換条件を突きつけてきたら、あなたはその条件を受けますか?

 脳腫瘍を宣告された30歳の郵便配達員、僕。書籍『世界から猫が消えたなら』に登場する「僕」の目の前に現れたのが、自分そっくりの姿をした「悪魔」でした。まだまだ死にたくない僕に対して、悪魔は、「明日あなたは死にます」と忠告したうえで、「何かを得るためには、何かを失わなくてはならない」と冒頭のような交換条件を出したのです。

 そんな条件に対し僕は、「壁についたシミ」「本棚のほこり」「お風呂のタイルのカビ」と、次々と消すものを提案しますが、もちろんすべて却下。そんな簡単なものでは寿命を手に入れることはできないのです。何を消すかは、悪魔自身が決めるというのです。

 まず、最初に消えたのは「電話」でした。電話がなくなる代わりに1日の命が与えられたのです。自分の生活のなかから電話がなくなった時、何を感じるでしょうか。安心なのか不安なのか。

 僕の場合は、電話(携帯電話)に振り回されている自分にほとほと嫌気がさしていました。「人間は携帯を発明することにより、携帯を持たない不安も発明してしまった」と僕は言います。しかし、そんな電話も、僕と元彼女をつなぐ大切なものであることに気づくのです。

 生きるために大切なものを消すことを決めた僕。電話だけでなく、映画や時計、そして飼っている猫が消えたとすれば......。

 同書を手がけたのは『告白』『悪人』『モテキ』など数々のヒット映画を世に送り出してきた32歳の映画プロデューサー・川村元気さん。作家・脚本家の小山薫堂氏が「困ったことに、面白すぎる。軽やかでありながら、深く、笑ってしまうのに、切ない」と評する一冊です。

 川村さんの等身大な言葉で綴られた「僕」の物語。ものに埋め尽くされた現代に疲れた時に、手に取りたい書籍です。



『世界から猫が消えたなら』
 著者:川村 元気
 出版社:マガジンハウス
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