総製作費1,000万円! 希望の音を奏でる復興の象徴「ガラスのギター」を披露

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11月29日、耐熱ガラスメーカーのHARIO(ハリオ)は、「ガラスのギター」の演奏披露記者発表会を開催。

同作の制作に協力したクラシックギタリストの村治佳織さんによる、実演およびトークセッションを実施した。

同社では、ガラス製品の可能性、芸術性を高める一つの方向性として、さまざまな芸術分野とのコラボレーションを行っている。

ガラスの楽器を作ることもその一つであり、同作は12作目とのこと。

2011年の東日本大震災により、茨城県古河市にある同社工場のガラス窯は被害を受けた。

それは地震によって崩落したのではなく、停電によって窯が冷え切ってしまったことが原因だそうだ。

「ガラス窯は一度火を入れると、6〜7年はつけっぱなしなんです」と、同社専務取締役・村上達夫氏。

ガラスメーカーにとって窯は命であり、これが止まることは人間でいえば、心臓停止にあたる。

この企業存続が危ぶまれる状況に対し、同社の技術者や職人が一丸となって力を合わせることによって、短期間でガラス窯を復旧させた。

「技術者と職人の英知の結果であり、誇りに思う」と村上氏。

ガラスのギターはガラス窯の復興を記念して制作することになり、復旧したガラス窯に最初に入れた生地を使用しているという。

同社は過去にもガラスのバイオリンやチェロなどの楽器を制作しているが、より日常的なものを作ろうという思いでギター制作を決定。

村上氏は「復興のための記念碑的なギターでもあります。

感動的な音で、希望の音といえます」と語った。

そして、このギターの奏者として、世界的に活躍するギタリストの村治佳織さんに依頼し、制作にも協力してもらったという。

今回披露されたガラスのギターの総製作費は約1,000万円。

この費用には原料費だけでなく、金型や設備等の費用も含まれている。

10名の熟練した職人たちによって作り上げられた。

音が響くボディーはガラス製で、ネックやヘッドはアクリル製。

ボディーの側面およびサウンドホールの周囲に手書きのペイントを施し、繊細なガラスの美しさを引き出したデザインになっている。

同作は、ヨーロッパの19世紀ギターを原型として作られた。

クラシックギターよりも少し小さめのサイズであるが、これは強度の問題だけでなく、重くなってしまうと弾きにくくなることを避けるためだ。

それでも重量は約3.7kgであり、クラシックギターの平均重量(約1.6kg)の2倍以上である。

村治さんは「持つだけで大変。

1時間以上持っていたら足がしびれそう」と話し、会場をわかせた。

村治さんは実際に工場へ足を運び、制作現場を見学したという。

作り手もすべて日本人であり、本当の意味での「made in Japan」であることに感動したそうだ。

また、一度かたまると使えなくなってしまうガラスのかたまりを目にして、同社の被害を実感したという。

このかたまりを同社では保管しており、アクセサリーにも加工しているとのこと。

村治さんもそれを身につけていた。

ガラスのギターが完成するまでには、何度も試作を重ねたという。

少しでも形が違うと割ってしまい、「弾ける」楽器を作るために100本は壊しているとのこと。

試行錯誤を重ねながら、ベテランの職人が響きのいい生地を選んだ。

会場では、村治さんがガラスのギターを演奏し、クラシックギターの名曲「禁じられた遊び」と、「楽器が奏でる音色」という意味を持つ「カヴァティーナ」の2曲が披露された。

音の監修を務めた村治さんによれば、最初のモデルは指板と弦の幅が広くて弾きにくかったという。

音の微調整には数カ月を要し、成形よりも時間がかかったそうだ。

村治さんは実際に弾いた感想について、「木に比べるとボリュームはややおさえめですが、音の伸びがいいと思った」と語り、どのような音楽ジャンルにも対応できると評した。

また、季節によって音が変化しないことも、ガラスのギターの特徴のひとつ。

木のギターとの音色の違いについては、硬質で素朴感があるとのこと。

村治さんいわく、「懐かしさを感じさせる音色」だという。

「いつもメインで使っている木のギターにとっては、いとこみたいな存在になるんですかね。

競い合うのではなく、違うものとしてそれぞれの良さを確認できます。

(ガラスのギターを)コンサートで弾いてみたい」と村治さん。

また、「東北の方たちにガラスのギターを見ていただいて、生で聴きたいという要望があれば、ガラスのギターとともに旅に出てみたいと思います」と語った。