日本をオリジンとしアジアを代表する、真のグローバル企業となる

人事部長インタビュー Vol.38

株式会社 資生堂 大月重人さん

「アジアを代表するグローバル企業」を目指す同社の戦略とは?


■4つの成長戦略を遂行し、アジアを代表するグローバルプレイヤーに

近年、グローバリゼーションという言葉を耳にしない日はありませんが、実は当社のグローバリゼーションの幕開けは大変古いところにあります。当社の創業は1872年ですが、1900年に開催されたパリ万博を見学した創業者の福原有信はアメリカ経由で帰国し「欧米で通用する商品でなければ日本を代表する商品にはなり得ない」と説いており、その当時からグローバリゼーションを意識していたことがわかります。現在、資生堂グループの売上高は約6824億円。海外は、欧州、米州、中国を含むアジア・パシフィックの3極でオペレーションしており、海外比率は44パーセントを超えています。2013年3月期決算では45パーセントを超えると見通しており、17年までには、その比率が五分五分になるだろうという勢いでグローバリゼーションが進んでいます。従業員約4万人のうち、海外社員は約2万人。その約7000人は中国で働いています。

こうした状況において、当社は現在「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤーになる」というスローガンを掲げています。英語でいえば「Asian Giant」。これは、オリジンである日本で強いだけでなく、日本オリジンのアジア企業としてアジアで強い存在になろうというもの。2011年にはじまる3カ年計画の中では、4つの成長戦略を立てています。その1つがグローバルメガブランド戦略。これは、500〜1000億円規模の売り上げを確立するブランドを6つつくろうというものです。小さなブランドを数多く育てるのではなく、経営資源を集中投下するブランドを確立していく戦略で、すでにこの条件を達成しているものもいくつかあります。2つ目はアジアブレイクスルー戦略。これは、名実ともにアジアを代表する、まさにAsian Giantになろうというもの。3つ目がニューフロンティア戦略です。これは新興国、例えばトルコやインドなどでの取り組みを強化、並びに、Webマーケティングを本格展開しようというものです。4つ目がカスタマーファースト戦略です。先ごろ、国際化粧品技術者会の「IFSCC Conference 2012」という研究発表会があり、当社は、世界最多、通算16回目の最優秀賞を受賞しました。このように、世界で実証された高い技術を生かした優れた商品を、お客さまに提供していこうというのもその表れです。

また、3つ目に挙げたニューフロンティア戦略の中には、12年4月に立ち上げた「watashi+(ワタシプラス)」も含まれています。これは、インターネットで買い物ができるという一般的な機能に加えて、2つの大きな特徴を備えています。その1つが、インターネットを通じて、在宅のお客さまにスキンケアやメーキャップのカウンセリングを受けていただく機能。これは、Webでのお客さま対応の教育を受けた専門のビューティーコンサルタント(美容部員)が、Webを通じてカウンセリングを行うものです。もう1つがお店ナビという機能です。これは「あなたの自宅の近くにはこんなお店があり、こんな商品を扱っています」と、化粧品専門店に誘導し、実際にお店に出むいていただこうというもの。「watashi+」は、単なるネット通販ではなく、当社の売り上げの多くを担っていいただいている専門店に、お客さまを誘導する仕組みも備えたサイトなのです。スタートしてまだ半年ですが、サイト経由で初めて専門店に足を運んだお客さまは順調に増えており、今後、大きな発展の可能性を秘めています。こうした戦略を遂行し、当社は、17年までに売上高1兆円を突破するという目標にむかって、さまざまな取り組みを進めています。


■新興国市場を開拓していくタフでバイタリティのあるタイプに期待

こうした戦略を支える基盤の一つに、グローバル人材の強化があります。現在、日本から約150人が駐在や出向という形で海外に出て、世界各地でマネージメント業務にあたっています。そのポジションはさまざまですが、今後強化していこうと考えているのが、これから市場の成長が期待されるトルコやインド、中東やアフリカといった新興国に先兵として乗り込み、マーケットを開拓できるような人材の強化です。これまで、当社には、「美」や「繊細なもの」を扱うといったイメージが強いせいか、新興国に果敢に乗り込んでいくようなタフでバイタリティのあるような学生からのオファーが多いとはいえませんでした。しかし、これからは、こうした新しいタイプが加わってこそ、本当の意味で多様性が実現すると考えています。海外全般でマネージメントするような人材も必要ですが、新興地域を攻略していけるような人材も必要。今後は、グローバル人材も細分化して見ていく必要があると考えています。
それから、私はあえて「英語を勉強せよ」とは言わない主義ですが、グローバルを目指すなら、やはり語学力は磨いておくべきです。海外で働くなら英語は基本。さらに、中東ならアラビア語、アフリカならフランス語など、やはり現地の言葉を話せる方が、仕事をするには有利であることに間違いはないでしょう。

一方で、日本は1つの市場で売り上げの55パーセント近くを占める大切なマーケットですから、国内市場をけん引する優秀な人材も必要です。このように、当社には日本にも海外にもキャリアの選択肢があり、それに見合う多様な人材を必要としています。当社が海外でマーケットを拡大することが、日本で働く社員にとっても、さまざまな機会を拡大することにつながっていくと思います。

当社は、法的に定められた日数の約2倍の育児休業制度を設けるなど、福利厚生面のセイフティネットを整備しており、ワークライフバランスについての意識も社員に浸透しています。また、社員教育にも力を入れており、「ECOLE DE HAYAMA(エコール・ド・ハヤマ)(神奈川県横須賀市)」という研修所では毎日のようにさまざまな講座が行われています。こうした制度は“社員を大事にし、一人ひとりと向き合っていく”という社風に根差したものです。

現在、より戦略的な人材のマネージメントが行えるように、あらたな取り組みを始めています。まずは、国内外の管理職を対象に能力や職歴の管理、処遇基準などの人事指標を共通のものに整えました。これらの基盤をもとに、国籍や性別、年齢などの属人的な要素にとらわれず発掘・配置評価・育成を回していく仕組みの基盤を確立させました。将来的には全世界のマネージャーを対象に適時・適材・適所の人材配置を行っていく予定です。この導入の根底にあるのも、社員を大事にする社風であり、一人ひとりをきちんと見ていくためのステップだと考えています。