『僕たちの前途』

NHK「NEWS WEB 24」ほか、テレビなどでその鮮やかな語り口に注目が集まっている27歳の社会学者、古市憲寿氏。

肩書は「社会学者」となっているものの、大学に就職しているわけでもなく、「いったい何者?」とネット上でも話題の人物だ。

講談社から2012年11月21日に刊行された古市氏の新刊『僕たちの前途』では、初めて「起業家」である古市氏本人の働きぶり、そして周辺の働きぶりが明らかになっている。

起業家礼賛の危険性とは

「社員3人」「上場はしない」「社員全員が同じマンションの別の部屋に住む」という会社「ゼント」。古市氏が働いている会社だ。

その働き方はかなり自由で、周辺の人々もかなり個性的。携帯電話を3台持ち歩く巨大ファッションイベントのプロデューサーをはじめとして、「なんだか動物園みたい」な生態系が形成されている。

彼らは、まるで漫画『ONE PIECE』の登場人物のように、仲間たちとの関係を大切にしたうえで、これまでのビジネスとはまったく異なる方法論で富をつかんでいる。

本書『僕たちの前途』の前半では、彼ら新しい世代の起業家群像を肯定的に描いている。だが、これで「自分らしく働くには起業すればいいんだ」という話にはならない。たとえば、「起業して夢をかなえよう」というメッセージの裏には、フリーランスの若者を安く使い潰したい誰かの思惑があるのかもしれないのだ。

本書の後半では、広い視野から「起業家」を考察することで、起業家を礼賛することの危険性も浮き彫りにされている。

当事者と研究者。ふたつの立場から「起業家」について考えてみる、今までになかった試み。古市氏にとっての「社会学」とは、こうした自由な考察の方法論なのかも知れない。

本書は、こうして古市氏が自分自身までも研究対象にすることで、まさに「前途」を考えている若い読者の反響を呼び、すでに2刷が決定しているという。