人気急上昇!留学生を大企業が積極採用へ

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調査概要/上場企業約3600社に対して質問紙の郵送による調査を実施、366社より回答を得た。調査期間は2011年2月14〜23日。回答は広報担当または人事担当による。特に記載のない限り、グラフはこの調査結果をもとに作成。

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■国際化に走る企業、即戦力確保狙う

大学を卒業しても就職できない新卒学生が多い中で、外国人留学生の求人が急増している。

就職情報誌などを手がけるディスコが11年3月4日、1000人の留学生を集め東京・池袋のサンシャインシティで主催した「キャリアフォーラム」には日本を代表する大手企業など35社が殺到した。

「フォーラムは10年3月にも行いましたが、このときは14社。日本企業の関心がいかに高いかが窺えます」(同社広報担当者)

ディスコの「外国人留学生の採用に関する調査」によると、2010年度の外国人留学生を採用した企業は、予定を含めて11.7%、これが11年度には21.7%と倍増している。

こうした傾向は加速。コンビニエンスストアではローソンが新卒採用の3分の1にあたる約20人を外国人にすると表明、セブン‐イレブン・ジャパンもまた中国、韓国、オーストラリア出身者を採用する。これで外国人正社員は、ほぼ2倍になる。

家電や重電など電機関連業界でもこうした動きが加速。ソニーは13年に採用する新卒社員のうち30%を外国人にする。同社はこれまでにも中国やインドの大学から採用してきたが、今後はインドネシアの理系大学からも採用を行い、幹部として育成していくという。パナソニックは11年度の国内新卒採用予定者の4割に相当する1100人を海外で採用し、国内枠でも留学生を採用するという。(※雑誌掲載当時)

ディスコの綿井伸グローバルキャリア推進プロジェクトマネージャーは次のように語る。

「海外進出する日本企業が増え、国内でも海外の顧客が増えている。このような中で海外のビジネスをよく知る留学生がどうしても必要な時代になっている」

日本に来日している留学生の数は13万人。1年間に卒業する留学生の数はこの3割、約2万5000人いる。このうち1万人が日本で就職している。

「10年前に日本で就職していた留学生はわずか3000人程度でしたが、08年には1万人を超えました」

実はこの背後には別の事情がある。1990年代初頭までは大手企業では数の採用、「2・6・2採用」という図式が成り立っていたという。綿井氏はいう。

「バブル経済のころまでは企業は、かなりおおらかな採用をしていて、幹部となって企業を牽引していく全体のトップ2割、平均的な社員6割、最後の2割は労務調整要員という図式が成り立っていました。しかしそれ以降企業の採用マインドは厳しくなり質を重視し、労務調整要員はとらなくなった。採用目標人数を達成しなくても、一定のレベルに達していない人材を無理に採用しようとはしなくなった。と同時に日本人であろうと外国人であろうと優秀な人材をとる傾向になっている」

事実ある大手商社で次のような問題があった。社長が新卒社員を集めて会食をした際の話だ。

「新卒社員たちに『外国に行ってどのような活躍をしたいか』と社長が聞いたのです。ところが新卒社員からは『海外に行きたくない』という答えが返ってきたようです」(人事に詳しいコンサルタント)

商社の社員ですらこうした状況だ。まして他の企業に入社した新卒社員たちの海外への転勤などに対するアレルギーはさらに強いものがあるようだ。

産業能率大学の調査では海外勤務を望まない新入社員は2人に1人いるという。同大学では次のように説明している。

「2010年の新入社員の2人に1人は海外で『働きたいとは思わない』とアンケートで答えている。理由を見ると『リスクが高い』『能力に自信がない』が5割近くあった。不安が強く意識が内向きになっている傾向が顕著に出ている。ほかの調査なども加味して考えると、ここでいう能力とは英語力の欠如という点が大きいのではないか」

■グローバル化で留学生が引く手あまた

しかし日本企業はいま、まったく逆の方向をたどる。楽天、ファーストリテイリングが社内公用語の英語化を発表し、武田薬品工業は新卒採用にTOEICで730点の基準を設けた。さらに野村ホールディングスは11年春からインベストバンキング業務などを担当する「グローバル採用」で約40人を採用。

「英語がしゃべれるかどうか、どちらが得かといったらしゃべれるほうが得であるのは決まっている。みんな日本で中高大と英語で教育を受けている。なのにどこで差が生まれるのか。負荷をかけられるかどうかです」

高額所得者に特化した求人情報サイトを運営するビズリーチの南壮一郎社長はこう語る。

グローバル採用の基準はTOEICで800点以上、流暢な英語力が求められ、初任給は平均54.2万円。一般社員が月20万円であるのに対してこれはかなりの高額だ。英語ができるということは新卒学生にとっては人生を変える大きな武器となっているということだ。

こうした中で企業は、海外に留学している学生や英語能力の高い学生の採用にも力を入れるようになってきている。南社長は「英語ができるだけで企業での扱いは全然違う。留学して後悔している人はいない」と語る。

日本人の海外留学生は米国全体で2万4000人。卒業後は1年間オプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)という形で就職した後、ビザ申請をして抽選で取得者が決まる。

景気のいいときには労働ビザ(H1B)の許可申請が募集枠の倍くらい入ってくる。ビザが取れなければ最終的には帰国しなければならない。だからなかなか日本人は米国で働けない。

しかし日本では4月、5月に内定が出てしまうために留学生にとっては日本での就職も非常に難しい環境があった。

「日本人の海外留学生には距離のハンディがある」(綿井氏)

だがそのような中、企業は海外留学生の採用に積極的に動きだしている。すでにシャープや富士通では海外留学生に対する求人を行っている。三菱電機は、海外の大学に留学している新卒学生の採用を進めていくために、10月入社制度を新設した。

三菱電機では次のように語る。

「中期的な経営の目標として現在35%程度の海外売上高比率を40%まで拡大したいと考えており、そのために語学が得意で即戦力になる海外留学生の採用を2011年秋から始めます」(※雑誌掲載当時)

しかし日本での採用は単純に英語力だけでは企業は評価してくれないと綿井氏はいう。

「海外留学生には当然語学力があることが前提。さらにそのうえでバイタリティなどが求められる。そして重要なのが専門性。語学ができるだけでは企業側は評価しない」

南氏もいう。

「英語力とは、ただ話せるだけではだめ。価値観の違う人たちともコミュニケーションできることが重要だ。そのためには価値観の違うところに留学し、積極的に英語力をつけていくべきなのではないだろうか」

これは外国人留学生をなぜ企業が積極的に採用しているのか、といったことにも通じている。

ローソンの幹部はこう語る。

「うちの場合は海外進出のための要員というよりは、異文化を取り入れることで会社を活性化させたいという思いから外国人留学生を積極的に採用しています。外国人留学生は非常にバイタリティがあり、彼らと交流することで日本人の新卒社員たちも触発されています」

豊かさの中でハングリー精神を失った日本の新卒学生。彼らが就職活動で求められるのはまず、どんなところでも進んで飛び込んでいく勇気と、誰とでも仲よくなれるコミュニケーション力なのかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

(松崎隆司=文)