母国開催となるワールドカップ(W杯)を2019年に控える日本代表だが、そのヘッドコーチ(HC)に就任し、2015年W杯まで指揮を執ることが決まっているのが、「名将」と名高いエディー・ジョーンズ氏(52)である。

 日本ラグビー協会は昨年秋、W杯ニュージーランド大会の惨敗と、それに伴うジョン・カーワン前HCの退任を受け、日本代表の新指揮官選びを本格的に開始した。2019年W杯では、開催国として決勝トーナメント進出がノルマとなるだけに、今度こそ、本当に強化の失敗は許されない。

 そこで日本協会は、
 
【1】世界レベルのコーチングスキルがあること
【2】日本ラグビーの特徴を理解していること
【3】2015年W杯、2019年W杯までの戦略的ビジョンを持っていること

 などを基準に人選を進め、選ばれたのが、オーストラリア人のジョーンズ氏だった。

 日本人の母と妻を持つジョーンズ氏は、オーストラリア監督として2003年W杯オーストラリア大会で準優勝し、2007年W杯フランス大会では、南アフリカのテクニカルアドバイザーとして優勝に貢献。クラブチームでも、ACTブランビーズ(オーストラリア)監督や、サラセンズ(イングランド)のディレクター・オブ・ラグビーなどを務めた経験があり、間違いなく世界でもトップクラスの指導者だ。

 その一方で、1996年に日本代表のFWコーチを務めるなど、長年にわたり日本ラグビー界と接点を持ち、2010年度からはサントリーの監督として日本選手権優勝などの結果も残してきた。世界を知り、そして日本を知る指導者として、これ以上の適任者はいないといえよう。

 ジョーンズHCに課せられた2015年W杯までの目標は、日本の世界ランキングを10位以内(11月19日現在のランキングは15位)にすること。そのためにジョーンズHCが掲げるのが、「世界一のフィットネスで走り勝つラグビー」だ。

 他の多くのスポーツと同様に、「体格で劣る者が、いかにして世界と対峙していくのか」が、日本ラグビー界にとっても大きな課題だが、ジョン・カーワン前HCは、外国出身選手の多用などによるチームの大型化で対応しようとした。

 だが、ジョーンズHCはそのような考え方には否定的で、「日本選手に合った、日本のスタイルを構築していかなくてはならない」と強調する。そして、「Japan Way(ジャパン・ウェイ)」というスローガンを掲げ、たとえ体格では劣っても、ボールを大きく動かして相手を疲れさせれば、勝負することができるとの考えでチームづくりを進める。

 そのような戦い方を貫くための大前提が「世界一のフィットネス」となるのだが、4月の初招集以降、日本代表の合宿では、多い日には1日4回も練習を行なうハードな日程が組まれ、体力や筋力強化に力が注がれている。

 また、個々の動作でも日本人の特性を生かすべく、失われた“伝統芸”の復元にも知恵を巡らせる。かつては日本の“専売特許”でもあった低いタックルなど重心の低いプレーを取り戻すため、7月以降、元総合格闘家の高阪剛氏をスポットコーチとして代表強化合宿に招聘。素早く低い姿勢を取る技術などを学んでいる。今後も折を見て高阪氏に指導を仰ぐ方針だ。

●文/橋本謙太郎(産経新聞社運動部記者)

※週刊ポスト2012年12月7日号