何をやるかではなく、「自分」に問いかける。新しいキャリアの仕込み方




転職回数が多いというだけで、飽きっぽい、仕事が長続きしない人というイメージを持たれることがあります。でも、最初の就職先で「天職」に就く人はそれほど多くないはず。自分が満足できるような職業に就きたいなら、今、何をすればいいのでしょうか。現役のビジネスマン(35歳にして、大学卒業後4社目!)でもあり、「キャリアの仕込み方」の著者でもある広岡一実さんに、ポジティブに働くためのヒントをおうかがいしました。



■キャリアシートの中の「自分」



――広岡さんが著書のタイトルにも使われている「キャリアを仕込む」というのは、具体的にどういうことをするのでしょうか?



「転職経験のある人なら、職務経歴書(キャリアシート)というものを書いたことがあると思います。僕は転職活動のときに書いた職務経歴書の中にいた自分が、思い描いていた自分と違っていることに違和感を覚えました。



実は、その『理想の自分』と『現在の自分』とのギャップを埋めていくことがキャリア形成なのです。自分のためだから、やる気にもなるし、ポジティブに考えることもできます。



『キャリアを仕込む』という行動の本質は、『何をやるか』ではなく、『どれだけ自分が好きなのか』ということを問われているのです」



確かにそう考えると、何をすればいいかが見えてきそうです。自分自身を客観的に見ることが大切なのですね。



■過去を掘ると見えるもの



――新しいことを始めるときや、何かをやめたくなったときに「過去を掘る」ということをされているそうですが、どんな効果があるのですか?



「『過去を掘る』というのは、自分がどんなタイプの人間で、どんな物事に興味や関心があるのか、どんな環境で喜びを感じるのか、ということを客観的に理解するための方法です。昔、自分が興味のあった物事、中でも、ポジティブに取り組んでいた2つ以上の対象を、活動していた理由など、さまざまな角度から掘り下げてみると、そこには共通項があるのです。僕の場合、それが『サッカー』と『DJ』という2つの対象でした」



――まったく共通点がなさそうに思いますが、共通項は何だったのですか?



「共通項は、『個人よりチームが好き』『ゼロから何かを作り上げるクリエイタータイプではない』『誰かを生かすことに喜びを感じる』『完全な裏方は好きではない』ということです。この共通項を見ると、『何かをプロデュースするのが好き』、『外部からかかわるだけでは物足りない。プロジェクトの当事者でありたい』という、自分が満足できる仕事や理想的な居場所が浮かんできます」



――自分が何に対して喜びを感じるのか、どんな環境で能力を発揮するのかということの原型となるものが、過去の自分の行動の中にあるということですね。



「実際に、僕はこれまでブランドマーケティングの仕事には長期間携わってきたけれど、商社営業などのクライアントビジネスは長く続きませんでした。人間は自分にとって居心地のいい空間でなければ長くはいられないし、続かないということです。



また、あこがれや嗜好(しこう)は、自分の本質的な欲求と必ずしも合致しません。過去を掘ってみて、『人を喜ばせることが好き』という結果が出た人にとっては、アパレルショップの販売員という仕事は面白くてやりがいもあり、居心地のいい空間になるでしょう。



でも、『何かをコントロールすることが好き』という人が、『アパレルが好き』という理由だけで、ショップの販売員の仕事に就けば、そこは不満だらけの居場所になってしまうかもしれません」



そうですね。好きなものを扱ったり、好きな業界にいるのに「仕事が楽しくない」という人は、意外に多いような気がしますね。



■ビジネスマンは「武器」を持て



――キャリアを仕込むための具体的な方法として、「自分の武器を創り出せ」ということをおっしゃっていますが、広岡さんの武器は何ですか?



「持っている情報や知識領域の『広さ』だと思います。『広く、浅く』ですが、『広さ』なら負けません。学生時代、歴史の流れは何でも知っているけれど、年号なんかはまったく知らなかったので、歴史の点数はいつも悪かったですよ。



でも、ビジネスの世界では、あふれる情報や業務の中から、何が肝なのかをスピーディーに察知できる能力は大いに武器になっています。まあ、器用貧乏と言っているようなものですし、M&Aから広告実務まで、いいように使われちゃいますけどね」



――でも、いいように使われることで、また新たな知識や実戦力も身につくはずですし、武器はますます強くなりますね。

最後になりますが、現在の会社とお仕事には満足されていますか?



「実は上場企業で仕事をするのは、この会社(インフォコム)が初めてなんです。仕事としては、新しいメディア事業を企画して立ち上げることができましたし、アンドロイドアプリ『TABROID』のブランド・ステイタスも確立されつつありますので、現状には満足しています」



数年後には海外を拠点に仕事をしていたいし、自分でブランドもつくりたいとのこと。広岡さんのキャリアシートは、まだまだ更新されそうです。



キャリアを仕込むには、何をするかではなく、どれだけ自分を好きなのか……という言葉に尽きるのかもしれません。あなたは「今の自分」が好きですか?



広岡 一実(ひろおか・かずみ)



1976年生まれ。大学卒業後、商社で海外化粧品ブランドのマーケティング業務、溶剤営業。某大手グループ会社でBPO営業。某企業の社内ベンチャーとしてGPSゴルフナビ「Walkalong」の事業立ち上げ、ビジネス構築に従事。2010年からインフォコム・ネット事業本部(現職)。

著書「キャリアの仕込み方」(インプレスコミュニケーションズ/デジカル)は、Amazon Kindle ストア、楽天kobo、紀伊國屋書店Book Webで発売中。

TABROID http://www.tabroid.jp/



(OFFICE-SANGA 布施裕子)