不愉快なことには理由がある

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アニメなどで知られる「笑ゥせぇるすまん」喪黒福造が、社会評論の本の表紙を大きく飾っている。今にもあの「オーッホッホッホッホ」という笑い声が聞こえて来そうだ。

『不愉快なことには理由がある』(集英社)。『(日本人)』の著書などで知られる作家の橘玲氏が、最新の「進化論」を武器に、不愉快なことが多いこの世の中を「すこしでも生きやすい場所にする」ため、政治や経済、いじめ問題などを斬っていく。それにしても、「進化論」と「笑ゥせぇるすまん」にどんな関係があるのだろうか。

「一発逆転」の策はない

テーマは多岐にわたり、領土問題やAKB48、漫画「ONE PIECE(ワンピース)」も登場する。米国中西部の高校生のセックス相関図(梅毒感染を受けた聞き取り調査)と複雑系ネットワーク、ハブ(拠点)との関係を描く箇所もある。

筆者は進化論の特徴について、「不愉快な学問」だと紹介している。遺伝子などをキーワードに、「こころ」や「愛情」の問題をも説明することに対する反発があることを意識した指摘だ。もっとも、「現代の進化論」は、脳科学や経済学、複雑系などと合体し、新たな知のパラダイムを誕生させつつある。

そうした知見から導かれる結論は、不愉快なことには理由があり、「誰にとっても気持ちのいい『一発逆転』の策はない」ということだ。それを知った上で、少しでも改善できるよう制度改変などを進めていくしかなく、そこにこそ「希望」があると指摘している。

そのためにも「意見の多様性」が大切で、「他人と違う視点」を提供しようというのが本書を書いた筆者の目的でもある。そして、この「『一発逆転』に飛びつかないように」というメッセージが、「笑ゥせぇるすまん」のそれと共通するということのようだ。

本書は、「週刊プレイボーイ」の著者コラム(2011年5月〜12年10月掲載分)を大幅に加筆・修正し、再構成したもの。2012年11月末、発売された。1470円。