参考までに今回解散を言い出した前後から原稿を書いている今日現在(11月23日)のドル円レートの推移と出来事をあげておきます。

この実質10日間でドル円の為替レートは3円以上円安に進みました。

もっとも動きが大きかったのは衆議院が実際に解散となった16日までです(終値ベースで1円89銭)。

それに対して、無制限量的緩和の発言があった15日から4日間の終値ベースでは、実は52銭しか円安に振れていません。

小動きと称されるような状況です。

つまり、無制限量的緩和発言よりも、突如解散を首相が言いだして解散までわずか数日という事態の方に市場も反応したと言えるでしょう。

さらに週末の時点で建設国債の日銀による引き受けに触れたことで各方面から「財政法の禁じ手」と批判が続出。

非常に単純な話、法律問題として取り上げる以前に、金融機関の国債購入意欲が旺盛な現状で、わざわざ建設国債を直接日銀に引き受けてもらう必要性は全くありません。

したがって、発言の真意はどこにあるのかと不思議に思っていたところ、買いオペ(通常行われている資金調整の方法)と直接引き受けとをメディアが混同していると、報道に対して軌道修正を求めているようです。

しかし、周知の通り発言は突飛と受け取られ、予想以上の赤字となった貿易収支の発表と相俟って、週明けに円安で反応した状況でした。

こうして実際の為替市場の動向を見る限り、緩和発言だけによって円安に動いたとは言い切れず、日本の政治そのものへの不安や悪化した経済指標など他の材料とタイミングが重なって円が売られた、と見る方が自然です。

財政拡張政策によって実体経済に資金が流れていくことの期待から円安となった部分もありますが、この点については複数政党が訴えていますので、民主党以外になればという反応でしょう。

選挙戦に優位な展開になりそうだと思えば、それを使うのは候補者として当然のことです。

直接引き受けは日銀への政治介入だと批判している政党が、実は日銀へ外債購入を促したりしているわけですから、この辺は有権者である我々が冷静に判断する必要があるかと思います。

誤解なきよう申し上げますが、円安をきっかけに株価が上昇したことが悪いと言っているわけではありません。

政情不安で動く為替市場、そして円安を一義的に好材料と捉えて動く株式市場という具合に、別の要因で各市場は動き出しています。

結果として発生している経済現象に飛びつくのではなく、発生した円安・株高の原因は何かを客観的に判断する--現象ではなく原因を追究する姿勢は、今後どの政党が政権を担ったとしても日本の経済政策を展開する上で必要なこととなるはずです。

是非とも国民目線で、冷静な経済分析や情勢判断が出来る政党に政権を担っていただきたいと思っています。