その発言アウトです! オフィス・ハラスメントのウソ、ホント




セクハラとは、相手を不快にさせる性的な言動のことをいいます。悪気がなく発した言葉、善意でかけた言葉でも、セクハラになる可能性があるのです。オフィスでよく見かける言動に潜む危険性を、弁護士の寺前隆先生に解説をしていただきました。自分は大丈夫と思っている方は、要注意かも!?



■プライベートな問題に踏み込まない



――独身社員に対して、「結婚しないの?」と聞くのはセクハラになりますか?



「結婚しているか、その予定があるかどうかは、仕事とは関係ないものですから、受け手と状況によってはハラスメントとなり得ます。



異性、しかもある程度の年齢になり、本人や周りもそのことを気にしているのに、あえてそういう質問をしたり、他者と比較される状況で聞くのはアウトでしょう。一度だけ聞くくらいならまだしも、繰り返し聞くのも相手を不快にさせます」



――既婚社員に「子どもはいるの?」とか「子どもはまだ?」という質問はどうでしょうか?



「『子どもはまだ?』『どうして作らないの?』などと重ねて聞けば聞くほどアウトです。



プライベートな問題には、あまり踏み込まない方が良いでしょう。同性間の会話であればセクハラにはなりにくいですが、異性間であれば上下関係になかったとしてもセクハラになり得ます」



――それでは、病院に行く同僚(部下)に、「どこが悪いの? 何科に行くの?」と聞くのはセクハラですか? 同じようなケースで、「元気ないね」「顔色が悪いけどどこか悪いの?」などはどうですか?



「相手を気遣って言っている範囲であれば、問題ないと思います。逆に、具合が悪そうな同僚・部下を放っておくというのは、人間として問題ありです。



ただし、具合の悪そうな女性に、女性特有の体調や病気などをあげて発言するのはNGです。さらに『元気ないけど、彼氏に振られたの?』などと聞いてしまうのもアウト。相手の気持ちを考えましょう」



■ほめているつもりでも要注意



――「太った?」と聞くのはアウトだと思いますが、逆に「やせたね」とか「最近きれいになったね」ならセーフですか?



「『太った?』というのは、受け手にとっては不快なだけでしょう。特に女性には、言うべき発言ではありません。



逆に、『やせたね』『最近きれいになったね』というのも、言われて喜ぶ方もいるかもしれませんが、中には、『今まで太っていたと思われていた』『今まではきれいじゃなかったということ?』と傷ついてしまう方もいたり、『私のことをそんなに見ていたの?』と気分を害される方もいるので要注意です。



容姿に関する発言は控えた方が無難でしょう」



――部下や同僚を「○○ちゃん」と呼ぶのはセクハラですか?



「特定の異性に対してだけそういう呼び方をするのは、何らかの意図を有していると思われても仕方ありません。そのことを相手が嫌がるのであれば、セクハラを構成する場合があり得ます。まずはお互いを尊重した呼び方から始めるのがマナーでしょう」



■カラオケの無理強い



――カラオケで歌が苦手な同僚や部下に無理やり歌わせるのはどうでしょうか?



「セクハラだけでなく、パワハラと言われる可能性もあります。



パワハラとは、職場内の地位や優位性を背景に、業務範囲を超えて精神的肉体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる言動です。お客さまが同席している場合など、それなりの必要性が認められる場合か、同僚だけの席なのかで異なりますし、要請のレベルなのか指示命令に近い言い方なのかでも違います」



■恋愛とのセクハラの境界線



――独身の上司が独身の部下に恋愛感情を抱くこともないとは言えません。アプローチをする上では食事に誘ったり、電話やメールをしたりというプロセスが必要になりますが、その行動もセクハラですか?



「これは難しい問題です。上司が『お互いの合意があった』と思っていても、部下にとっては『仕事のことを考えると断れなかった』という状況が十分にあり得ますし、実際に訴訟となったケースもあります。上司側は慎重にならざるを得ないでしょう。相手が嫌がっていないことがわかるまでは、早急なアプローチは控えましょう」



■当事者にならないために



――セクハラの当事者(被害者、加害者)にならないためには、何をどう注意すればいいですか?



「セクハラというと、身体的な接触や直接的な言動が着目されがちですが、実は、特定の人に向けた言葉でなくても、職場で性的な話をして盛り上がることも、周りで聞いている人からセクハラと言われる場合があります。場所や状況にふさわしくない発言は、気心が知れた同僚同士でも慎んだ方が良いでしょう。



セクハラになるかならないかは、受け手の感じ方が大きく影響します。世間話のつもりでも、受け手は不快に思うことが多々あります。職場は仕事をする場所、プライベートな話題には踏み込まない方が良いでしょう。



また、不快な言動を受けた場合、その時点で不快であることを表明しましょう。次第にエスカレートしたり、最後には『受け手も容認していた』と言われて嫌な思いをすることもあります。



会社にはセクハラの相談窓口を設置したり、相談・協力等を理由に不利益な取り扱いを行ってはならないことが義務付けられています。法律も会社も、セクハラを受けた被害者の味方です。一人で悩まず相談してください」



気軽に話しかけたつもりでも、相手が嫌がる場合はセクハラと受け取られてしまうこともあるのですね。これは男性から女性への言動だけではなく、逆の場合にもいえることです。相手の気持ちを考えて、発言するように心がけましょう。



弁護士・寺前 隆(てらまえ・たかし)



牛嶋・寺前・和田法律事務所

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(OFFICE-SANGA 布施裕子)