なぜ周囲は「嫌われ上司」と「ダメ部下」だけなのか−−ファミリーマート社長 上田準二

写真拡大

----------

ファミリーマート社長 上田準二(うえだ・じゅんじ)
1946年、秋田県生まれ。県立横手高校から山形大学文理学部に進み、卒業後の70年、伊藤忠商事に入社。畜産部長、プリマハム取締役などを経て、2000年に顧問としてファミリーマートへ。02年より現職。

----------

私が仕えた上司には、それこそいろいろなタイプがいました。指示らしい指示が全くない人、重箱の隅をほじくるような細かいことをいちいち質問してくる人。そうかと思えば、1日中「バカヤロー、なにやってんだ!」とガンガン怒鳴り続ける上司もいました。

同僚たちは、酒を飲んでは「うちの課長は何でもかんでも部下に丸投げじゃないか」「あんなに頭ごなしにやられたら、やる気をなくすよ」と悪口を言い合っていたものです。

自分のことは棚に上げ、他人の批判をしたがるのは世の常です。しかし、他人を批判してばかりでは仕事は楽しくないし、そもそも成果が上がりません。私は若いころから「みなが仕事しやすいよう、職場の雰囲気を良くしていきたい」と考え、行動するように心がけてきました。

まず、どんな場合でも、上司に対しては何かしら尊敬の気持ちを持つことが大切だと思ったのです。課長なり部長になったということは、なれなかった人と比べ、それまでの会社員生活でどこかが優っていたからです。

そう思えば、どんなタイプの上司に対しても尊敬の念を抱くことができ、そうすると、たとえ怒鳴られてもあまり痛痒を感じなくなってきます。そのうえで、それぞれの上司の性格に合わせてコミュニケーションをとっていくことが大事なのです。

私の場合、重箱の隅をほじくるような上司に対しては「この人は絶対、細かいことを聞いてくる」と考え、毎朝その日に聞かれそうなポイントについてのQ&Aを1人でやり、それを自分の中にインプットしておいて、聞かれる前にこちらから話すようにしました。

聞く前に説明されると上司は気持ちが楽になり、「こいつは細かいことまで考えて仕事しているんだな」と信頼してもらえるようになります。

2言目には「バカヤロー!」と怒鳴る上司には、あちらと同じ体育会口調で返事をしました。「わかってんのか!」と怒鳴られたら、「はいっ、わかってますっ!」と返す。こうすると怒鳴っているほうも張り合いが出てきます。

何も言ってこない上司の場合は、当人の机の上に週報を置くようにしました。私が今何をやっていて、それがどう進展しているかを伝え、上司に頼みたい事項をそこに書き添えておくのです。たとえば「来週あたり、○○社の課長にご挨拶に伺う予定ですので、その際にはぜひ同行をお願いします」という具合です。上司が指示を出してこないのであれば、こちらがイニシアチブをとって上司を誘導してしまえばいいわけです。

■「元気か!」とお尻をつかむ

部下の1人がそんなふうに上司とうまくやりとりしていると、それを見た同僚も「なるほど、ああいうふうに対処すればいいのか」とわかってきて、職場全体の雰囲気が良くなります。

一方、上司にしてみれば部下は自分の大事な戦力です。それを「ダメ部下だ」と決めつけているようではいけません。「あいつはダメ」と切り捨ててしまうと、その部下に対しては出すべき指示も出さなくなり、仕事の分担からも外すことになってしまいます。それでは組織として戦力ダウンです。

高度成長期のように「黙ってオレについてこい」などと言っていたら、誰もついてこないのが今の時代です。上司は自分の方針についてきちんと説明し、部下の話をしっかり聞いてあげることが大切です。そして部下が最大の力を発揮できるように環境やツールを整え、上司自ら雰囲気を盛り上げて、全員のモチベーションを上げていかなくてはなりません。

私の場合、部下には常に声をかけるようにしていました。肩を落として歩いていたら、廊下やトイレですれ違うときに「元気か!」と声をかけ、同時にふざけてお尻をつかんでやったりしたものです。相手はびっくりしますが、それだけで不思議と距離が近くなります。スキンシップも大切なコミュニケーションの手段なのです。

会社とは同じ船に乗って、同じ方向を目指している仲間の集まりであり、その意味ではまさに「ファミリー」です。だとしたら、相手を否定するよりも、できるだけ職場を盛り上げて楽しくやらねば損だと思います。

(ファミリーマート社長 上田準二 構成=久保田正志 撮影=的野弘路)