本格的な冬を迎えた日本列島。つい、「寒い...」とボヤいてしまう季節となりました。しかし、そんなボヤキも許されないような、寒さの限界を知ることができる書籍があります。『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』は、極寒の北極を舞台に繰り広げられるノンフィクションエッセイ。

 デビュー作『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で第8回開高健ノンフィクション賞を受賞し、国内外を問わず各地を探検をしてきた若きノンフィクション作家、角幡唯介の新作です。  19世紀のイギリス、ヨーロッパとアジアを結ぶ北西航路を探すべく、ジョン・フランクリン率いる129人からなる探検隊が北極へと旅立ちました。しかしその後、彼らからの連絡は途絶え、以後詳しい消息は不明となりました。

 充分な食料と装備を持ち、北極探検に関して豊かな経験を持つフランクリンを隊長にしたにもかかわらず、なぜ彼らは遭難したのか。また、イヌイットから『アグルーカ』(現地の言葉で「大股に歩く男」意味)と呼ばれたフランクリン隊の最後の生き残りは一体どこへ行き、どこで朽ち果てたのか。その真相を明らかにするために、著者自身が同じ時期の北極をフランクリン隊が辿ったとされるルートを歩いて調査しました。文献や歴史書だけでは見えない遭難当時の悲惨な実態を、実際に北極を歩くことにより紐解いていくのです。

 この旅で著者自身も苦難を強いられる状況に陥ります。最低気温マイナス40度の中、80kg近くもある重い荷物を乗せた橇を引きながら約4 か月にも渡り延々と北極の大地を歩く。それにより生じる疲労や極度の空腹、そして北極クマの脅威におびえる日々。生き抜くための狩りをするなど、予想外の展開に悪戦苦闘しながら目的地に向かって歩き続けるのです。

 100年以上も前に新たな航路を探すべく北極を歩いたフランクリン隊。そして彼らの行方を追って現在の北極を旅する著者。目的や時代背景は違いますが、両者とも同じ地を歩きそして同じ熱い野心を持って旅をします。そんな時代を越えて展開する壮大なストーリーに、知らぬ間に本を持つ手にも力が入ってしまいます。

 暖房の効いた部屋でコーヒーでも飲みながら......なんて甘い環境で読むのが失礼と感じてしまうような過酷な冒険エッセイです。



『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』
 著者:角幡 唯介
 出版社:集英社
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