『山手線に新駅ができる本当の理由』

鉄道ファン向けの本というわけではない。『山手線に新駅ができる本当の理由』(メディアファクトリー新書)。本書によると、2012年の年初に新聞各紙が報じた「山手線に新駅」のニュースは「とても明るいニュース」で、しかも「わが国の希望の灯り」とまで持ち上げている。筆者が描く、新駅と「日本の明るい未来」との関係とは。

読売新聞(1月4日付夕刊)など各紙によると、「山手線の品川―田町間に1971年以来となる新駅の建設計画」が検討されており、「早くて2020年ごろオープン」との報道もあった。本書の筆者は、都市政策の専門家で、明治大学専門職大学院長の市川宏雄氏。東京研究の第一人者でもある。一連の報道を受け、持論を展開している。

国際競争力を「劇的に高める」ポテンシャル

筆者が報道で注目するのは、新駅建設だけでなく、「それに付随して進められるはず」の品川―田町地区にある車両基地の跡地を利用した「都市再開発計画」(約15ヘクタール)だ。

この地区は、「東京」の国際競争力を「劇的に高める」ポテンシャルをもっており、新駅開業と再開発の影響について筆者は、幅広い経済波及効果を試算している。具体的な数字を示しつつ、「大きな効果」が期待できるとし、計画が成功すれば「日本全体が豊かで明るい未来を迎えられるだろう」と結論付ける。詳細は本書に譲るとして、いずれにしろ、この「計画」は、「わが国の未来を左右するだけの重大なインパクトを秘めている」というわけだ。

勿論、日本全体の話だけではなく、周辺住民ら鉄道利用者の利便性向上についても分析しており、「長年の懸案だった東北縦貫線の開通」問題との関連も指摘している。

さまざまな分析を披露した後、筆者は、山手線に新駅ができる「(もうひとつの)本当の理由」について、「学者らしからぬ非現実的な話」とことわった上で、「それは『神の手』といえるような、不思議な都市の力学が働いたから、かもしれない」と書いている。

8月に発売された。777円。