世論調査では賛否両論だった消費税の引き上げ。
対立するはずの民主・自民の両党がこの件だけではみごとに呼吸を合わせて、5%→8%→10%の2段階アップが決まった。
舞台裏で何があったのかを知る財務省、金融庁、内閣府の中堅官僚たちが匿名を条件に重い口を開いてくれた。


野田首相のしがらみのなさ+ギリシャ問題。奇跡のコラボで増税!?

財務省A(以下、財A)  ようやく大仕事が終わったって感じだよ。

金融庁B(以下、金B)  勝栄二郎・前事務次官の作戦勝ちだね。

内閣府C(以下、内C)  勝さんは増税法案が国会を通ったと思ったら、「やり残したことはない」とばかりに、8月に勇退したからね。消費税アップという難事業を成功させた2人目の次官だから、OBも含めて誰も頭が上がらない。いずれ「日銀総裁に」なんて話も出ると思うよ。あとは巡り合わせがよかった。民主党の、しかも野田政権だから増税法案を通せたと思うな。

金B どういうこと?

内C 野田首相は今までのトップと違って、国会でも霞が関でも存在感が薄かった。鳩山・元首相は名門・鳩山家の御曹司で、手腕はともかく各方面にパイプがある。菅・前首相はそもそも消費税アップには反対だから論外だけど、議員歴が長いから何を考えているか予想がついた。その点、野田さんは党内基盤が弱いうえに、「官」との付き合いも薄かった。野田さんも自分の弱みを十分知っていたから、財務省の言うことを聞いたんだろうね。あとは財界。菅さんは財界との距離をとれずに、経済政策で実績を上げられないまま退陣した。だから、野田さんが首相になったばかりのときに、財界団体の首脳が「税制改革をやるなら支持する」と、すり寄ったらしい。

財A 霞が関の東大OBネットワークでも、「野田さんって、どんな人か知ってる?」からじゃないと会話が始まらなかったから、どれだけ仲間が少ないかわかるよ。

金B そういえば、米倉弘昌・経団連会長も野田さんを「立派な首相だ」なんて持ち上げていたね。ギリシャの財政赤字問題が注目されたことも野田さんには幸運だったかな。「日本をギリシャ化しない」と言えば、増税の目的を手っ取り早く説明できるから。



増税を民主党に押し付けた自民党。低額所得者対策は?

内C 自民党も、不人気の増税は民主党に決めさせたかったのが見え見えだね。そういえば、財務省は自民党が野党に転落してからも、自民党通いを欠かさなかったね。

財A ゴツッ(机の下で内閣府Cの足を蹴る音)。

内C (涙目ですねを押さえながら)税率アップは決まったけど、低額所得者対策はどうするの?

金B 食料品非課税のような軽減税率か、給付金+税額控除の二択のようだけど、国会議員のセンセイ方の間で活発に議論されているとはいえないね。次の選挙が気になっているから仕方ないけど。

財A 個人的な予想として聞いてほしい。軽減税率はありえない……と思う。

内C 僕もそう思う。今回も増税論議がナマ煮えの段階では、食料品の非課税論が盛んに言われたけど、採決が近づくにつれて、下火になっていった。消費税アップに賛成した国会議員にとって、軽減税率は地元後援会への言い訳の代わりだろうね。「私は食料品非課税が条件なら増税を認めるつもりだった」って。

選挙のたびに非課税品目が増える…軽減税率はありえない

財A 欧州では食料品の非課税が当たり前になっているけど、日本で軽減税率を導入したらどうなると思う? 選挙のたびに、政治家が人気取りのために非課税品目を追加していくのは目に見えてる。総理大臣がコロコロ変わる日本だから、増税から10年もすれば、温泉旅館の建て増しじゃないけど、例外だらけの税制になってるよ。公平性維持のためにも、仕組みはシンプルなほどいいのに……。