消費の低迷、輸入関税、為替安などが落ち込む金需要大国・インド
世界最大の消費国で知られるインドの金需要が目立って落ちている。原因は価格の高騰と政府による輸入品の関税。それに追い打ちをかけているのが、「雨不足」による農作物の不作という。インドの天候と金価格の因果関係とは?


米国の記録的な干ばつが、トウモロコシや大豆などの急騰を招き、年末からの小麦や乳製品を原料とした食料品価格の上昇が日本でも懸念されている。

金の世界でも、気象条件が価格に影響を与えることがある。たとえば、世界最大の金需要国で知られるインド(2011年の実績で933トン)だが、同国の需要の中心は全人口約12億人超のうち7億人にも上る人が住む農村部だ。モンスーンによる降雨の量が作況に影響を与え、それが収入に響き、そして金の消費に影響を与えるというわけだ。

そのインドでも今年は天候が不順で、降水量が平年より2割ほど少ない水準だ。

実は今、インドでは金需要が目立って落ちている。4〜6月期が、181トンと前年同期の295トンから38%を超える減少となった。原因は金価格の高騰にある。

インドの国内金価格は、6月には3万ルピー超(10グラム当たり)と過去最高値の水準に達し、以降、過去最高値圏での推移が続いている。つまり、高くて手が出せない消費者が増えているのだ。

ドル建てロンドン金価格は、昨年9月の1900ドル超の過去最高値から調整局面入りし、6月には1600ドル近辺で推移していた。インド国内の金の高騰の要因は、通貨ルピーの対ドルレートがこの1年で20%ほど下がったことにある。

もともと、インドは経常収支が赤字で、今後の経済成長を期待した海外からの資金流入で高成長が続いていたが、リーマン・ショック後のカネの流れの変化に加え、ユーロ圏危機の余波で資金流入が減少し、赤字を賄いきれなくなり、それがさらなる通貨安を招くことになった。

金需要の落ち込みの裏には、インド政府による規制もある。金額ベースで見て、金は原油に次いで2番目の輸入品。そこで、税収増と同時に経常収支の赤字を減らしたい政府は、今年1月に金の輸入金額に対し2%の関税をかけることにした。さらに3月には、その関税を倍の4%に引き上げた。

為替由来の価格上昇に税負担という環境の中で、さすがのインドの金需要も大幅減少にならざるをえない状況となっている。そこに、雨不足による農村部の収入減が加わり、秋の婚礼期の需要も懸念されている。それでも底堅く推移する金価格の背景には、中国など他の新興国の買いが指摘できる。



亀井幸一郎(KOICHIRO KAMEI)
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。



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この記事は「WEBネットマネー2012年11月号」に掲載されたものです。