NY発 ファイナンシャルINSIDE_12月号
米国大統領選挙で低所得者層に対する失言で自滅気味のロムニー氏。一方、オバマ大統領の当選確率をネット市場で売買する「オバマ株」は急騰している。また、オバマ銘柄と呼ばれる企業も有力ネットメディアが上位を占めている。



マイクロソフト、グーグル、タイム・ワーナー、コムキャスト。米国大統領選挙を戦うバラク・オバマ大統領に献金した個人の就業先企業の上位には、法律事務所や大学に並んで、ネットメディアか傘下にネットメディアを抱える企業が目立つ。ウォール街の金融関係者が上位を占めるミット・ロムニー共和党候補とは対照的な構成である。

もともとメディア関係者はリベラルなことで知られるが、それ以上にオバマ大統領サイドはネットを利用した選挙戦略を重視している。08年の大統領選挙ではフェイスブックの創業者の一人がオバマ陣営でネット広報の責任者を務めていたし、SNS(交流サイト)を外交戦略に使うオバマ政権は、ネット企業のお得意さまだ。

ネットを活用して好感度を上げ、選挙民を動員したうえに小口献金を積み上げることで、強敵のヒラリー・クリントン候補(現国務長官)を民主党予備選で打ち破ったオバマ大統領のネット戦略は有名だ。

今回の大統領選挙でも、ネットバナー広告で見ると、オバマ大統領はロムニー候補の3〜4倍、浮動票に影響を与えるとされる検索エンジンでも4倍の広告を打っているとされる。オバマ大統領はすでに4億ドルを超える選挙資金を集めたが、多くがネット広報に使われているのだ。

ネット・メディアは「オバマ銘柄」としても知られている。ネット業界は民主党と近く、金融機関が「金融制度改革法」の廃止を求めてロムニー候補を支持するように、ネット業界もネット規制の強化を避けるよう、オバマ政権にロビー活動しているのだ。

今月、ニューヨーク市内でPLI(法務実務研究会)が開催したテクノロジー関連のセミナーで話題となったのが、検索結果であるクッキーを広告主がトラッキングすることを制限する、個人情報保護を目的とした「ドント・トラック法案」の是非。仮に成立してしまうと、ターゲット広告といったネット業界では主流のビジネスに影響を与える。

ネット業界はこのほど「インターネット協会」と呼ばれるロビーイング団体を形成した。単独行動が多かったネット企業が協調を決めたのは、プライバシー侵害の増加を懸念した米国議会が、ドント・トラック法案のようなトラッキングに制限をかける類いの法案を制定しまうことを阻止するためだ。実際、米国議会ではネット上の著作権保護を強化した「ストップ・パイラシー法案」を制定しそうになった前科がある。

「米国民の47%は非納税者」と低所得者層に対する失言で、ロムニー候補は自滅気味。ネットトレーダーの間で直近話題となっているのが、オバマ大統領の当選確率をネット市場で売買する「オバマ株」の急騰で、夏にかけて50ドル台だったのに、足元では70ドルを突破した。グーグルなど?オバマ銘柄〞も堅調に推移しているが、ツレ高には根拠があるのだ。

松浦 肇(Hajime Matsuura)
産経新聞ニューヨーク駐在編集委員

日本経済新聞記者、コンサルタントなどを経て現職。ペンシルベニア大ウォートン校、コロンビア大法科大学院、同ジャーナリズム・スクールにて修士号を取得。



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この記事は「WEBネットマネー2012年12月号」に掲載されたものです。