解明!「負の感情」に陥るメカニズム−【1】診断テスト

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■負の感情に支配されない力

私たちは日々、いろいろなことを考えて暮らしている。ランチは何にしようとか、取るに足らないことが大半だが、特定のテーマについて考え、解を導き出す作業を行って生きている。

ところが、平穏な日々の中ではサクサクと流れていた「考える」は、あるとき突然停滞し、解を導き出せなくなることがある。会社の倒産といった重大事に直面した場合はもちろん、他人には些細に見えることでさえも、停滞は起こる。早く解決したい、でもどうしていいかわからない……。思考の迷路に入りこんだ私たちは、強いストレス(負の感情)を感じることになる。その状態が「悩む」である。

悩まない人生などない。あったとしても恐らく豊かなものではない。人は悩むことを通じて多くの知恵を獲得し、成長していくものだからである。

が、一方で、悩みすぎることが人を不幸にすることも私たちは知っている。心を病む人もいれば、時には命を絶つ人さえいる。天が与えてくれた「考える力」が人を不幸にするという皮肉が、私たちの周囲にはあふれているのだ。

本稿の目的は、「悩む」の本質を理解していただくと同時に、負の感情に支配されないための「技術」を身につけていただくことにある。「日本型幸福モデル」が崩壊し、信じてきた幸福像と現実との狭間で、誰もが大きな悩みに直面する可能性が高い現在、その技術は、「生きる力」としてとても大きな意味を持っているはずである。

■あるべき姿と現実のギャップの存在

さて、そもそも「悩む」という現象はどのように発生するのだろうか。

すでに述べたように、「悩む」は「考える」がサクサク流れなくなり、その結果としてストレス(負の感情)が充満している状態である。「考える」とはもともと「物事について、論理的に筋道を追って答えを出そうとする(大辞林)」ことであり、感情とは無縁な営みのはずだが、いつしか負の感情に支配される状況になっている。

「負の感情による支配」はどうやって起こるのか。図が示すとおり、「悩む」は、私たちが現実の中に「問題」を認識したときに始まる。

ここでいう「問題」とは、本来あるべき姿と現実との間にギャップが存在することである。今月の売り上げ予定が1億円で、実際は5000万円の場合、「足りない」というギャップの存在ゆえに、問題として認識されることになる。この時点で「問題」は、あくまでギャップが存在するという状況のことであり、考察対象であるにすぎない。実際、縁もゆかりもない会社の話であれば、何ら感情を抱かずに原因を推測し、対策を考えることもできよう。

しかし、自分の経営する会社の話であれば全く別となる。状況にもよるだろうが、焦り、不安、絶望などの負の感情が高波のように襲いかかる事態となる。この問題が「自分にとって有害(脅威)だ」という認識が生じたためである。これが「悩み」への最初の入り口となる【原因A】。

しかし、有害性の感知による負の感情の発生は、「悩む」が生まれる一要件ではあるが、イコール「悩む」ではない。それが真に「悩む」になっていくのは、問題を解決する手立てが見出せないという状況に至ったときだ。

売り上げ未達の話でいえば、新たな受注で十分にリカバリーが可能だという予測があれば負の感情は収束できるが、解決策が見えてこない場合、負の感情はさらに増幅されることになる。

「出口がない」という感覚が、さらに焦りを呼び、不安感を募らせていく。こうした負のスパイラルが始まったとき、「考える」は、負の感情の完全な支配下に入り、深い「悩む」へと変質を遂げていくことになる【原因B】。

「悩む」の発生パターンはこれだけにとどまらない。問題解決とは、単に策を見出せばいいのでなく、実行に移して初めて実現されるものであり、問題解決策がある程度見えている場合でも、出口が見えず、負の感情が発生することは、しばしば起こりうるからである。

1つ目は、選択に際して生じる「悩む」である。複数の選択肢から1つを選ぶことを求められながら、それができず、そうこうしているうちに思考の迷路から抜け出せなくなるパターンである。決めなければいけない。でも決められない。いたずらに時間だけが経過し、迷いや不安などの負の感情が増幅していくことになる【原因C】。

2つ目は、解決策自体は定まったのに、いざ実行というところで生じる「悩む」である。十分に考え、ベストな選択であることはよくわかっている。でも、もし実行して失敗したらどうなってしまうのか……。その不安感にとらわれた結果、再び悩みの迷宮に舞い戻ってしまうのである【原因D】。

「悩みやすさ」には個人差がある。上司から怒鳴られることは誰にとっても楽しいことではないが、それでも全然気にしない人もいれば、心を病むほど悩んでしまう人もいる。

この差を生むのは、一言でいえば「思考のあり方の差異」である。起きた現実が同じでも、それをどう理解し、評価するか。そのあり方如何で、悩みやすさは大きく変わってくる。

■「悩み発生パターン」を知る診断

では、どんな思考をする人が悩みを抱えこみやすいか。前述の原因A〜Dの局面に分けながら考察してみたい。「診断」に回答し、次ページの結果を参照しながら読むと、より自分に引きつけられると思う。

(1)各質問につき、5段階のうち自分にもっとも近いと感じる欄の数字に○をつけてください。
(2)3問ごとに1区分となっていますので、区分ごとの合計点を出してください。
(3)最高得点の区分があなたの「悩み発生パターン」です。次ページの「コメント表」の該当欄を読んでください。
(4)同点もしくはそれに近い区分がある場合、または合計点が10点を超える区分がほかにある場合、そのコメントも読んでください。

【原因A−1〜3】解決困難な問題を自分でつくる人

人が、ある事実から「有害性(脅威)」を強く感じるのは、どのような思考をする場合だろうか。一例として、「仲のいい同僚が1週間ほど自分とまともに口をきいてくれない」という状況を設定して考えてみよう。

まず必要なのは「仲のいい同僚である以上、多くの会話をすべきだ」という、一種の「信念」を持っていることである。その信念(〜すべし)が強固であればあるほど、耐えがたい、有害な状況として感知されるはずである。

次に必要なのは「口をきかない=自分に対して怒っている」などという、性急な結論づけである。同僚は単に忙しいだけかもしれないのに、事実を勝手に解釈し、「これは間違いなく何か怒っている」と結論づけてしまう。この先走った思考もまた、有害性(脅威)を感じさせる原因となる。

そしてとどめは「もう2度と口をきいてくれないのではないか」などと不安を自己増殖させてしまうことである。この傾向が強ければ強いほど、有害性(脅威)を感じる度合が高いことは、あまりにも明らかである。

こうした思考が強い人ほど、現実から有害性(脅威)を感じる度合が高い。性格的にいえば、まじめで厳格な人(「すべき思考」をしやすい)、せっかちな人・決めつけをする人(「性急な結論づけ」をしやすい)、心配性の人(不安の自己増殖をさせやすい)などが、悩みを抱えやすい代表的なタイプということになる。

実体がなく、解決が困難な問題を自分でつくってしまうがゆえに、悩みに陥りやすいのである。

■策を見出せない人、諦められない人

原因Bに関しては2つの側面が存在するため、分けて考える必要がある。

まず、本来は解決策が存在するのに、見つけ出す力(施策発見力)が不足しているために、迷路に入ってしまう側面である。もう1つは「どうしても解決策がない」という状況に至ったとき、その事実を受容し、健全な意味で諦め、負の感情を生まないようにできるかどうかという側面である。

この2つの側面に分けて、悩みやすい人の条件を考えてみよう。

【原因B−1、2】施策発見力が不足している人

施策発見力が不足している人に見られる現象の1つは、問題を「分けて考えることが非常に苦手」ということだ。

「会社を辞めたい」といった相談を若い人からよく受けることがあるが、仕事内容、給料、上司への不満などがぐちゃぐちゃに入り交じっていて、聞けば聞くほど辞める理由がわからなくなる。辞めることの当否も判断がつかず、今後の方向性を正しく見極められることなどできるはずがない。

もう1つの共通現象は「解決策の幅をあらかじめ限定している」ことである。たとえば「会社を辞めたい」の例でいえば、すでに「辞める=解決策」と勝手に決めこんで相談にくるというースが非常に多い。他部署への異動を願い出れば済むような場合もかなりあるが、本人の中ではそれは「ありえないこと」と否定されており、辞めることだけが唯一の解決策となっているのである。とりわけ人生経験の少ない人、常識にとらわれやすい人などは、この「解決策の幅の限定」に陥りやすいように思える。

【原因B−3】切り替える力が不足している人

世の中には、どんなに必死に解決策を探しても、どうにもならないこともある。たとえば「過去に起きたこと」である。今さらどうにもならないと知りつつ、私たちはさまざまに思い悩む。あるいは他人の気持ちなどというのも、本来「どうにもならないもの」だが、私たちはそれをいたずらに気にして日々を過ごしている。

悩みを抱えやすい人とそうでない人を比較したとき、決定的に違うのは、この「どうにもならない」に出合ったときの反応である。抱えにくい人の場合、すばやく頭を切り替え、次のことを考えようとするが、抱えやすい人の場合は、頭を切り替えられず、クヨクヨとそのことを考え続けてしまう。考えたとてどうにもならないことを考えるので、さらに悩みの迷宮に入りこんでしまうのである。

【原因C−1、2】選択する力が不足している人

「会社に残るのは嫌だが、転職も独立も不安だ。でも会社は嫌だ……」のように、選択ができず、悩みに陥っていくタイプの人たちの思考にも、やはり共通性のようなものが感じられる。

1つは「選択への耐性がない」という点である。トレードオフ(一方をとると他方を失うという、両立しえない関係)の状況下では、何かを選ぶことは、それ以外の可能性を捨てることである。人生経験が少なく、この「捨てる」というシビアな行為に慣れていない人にとって、それは相当に困難な行為となる。

もう1つは、自分自身の「基準」がないことである。たとえば「転職するかどうか」という選択は、いかに客観的なデータを集めてきたとて、それで転職できるわけではない。最終的には、個人が自分の「価値観(どんな人生を送りたいか)」に従って判断するよりほかはないのである。

選択はきわめて主体的な行為である。逆にいえば、決められたレールの上を歩いてきた人、他人に指示されるまま生きてきた人にとっては、なかなか難しいことなのである。

【原因D】リスクを過剰評価する人

未来に進もうとすれば、リスクが存在しないということはありえない。悩むことで人生の時間を浪費したくないならば、熟慮し、「これしかない」と思ったことは、リスクはあろうとも、実行に移さねばならない。

しかし、悩みを抱えこみやすい人の場合、この段になってもまだ、リスクを過剰に大きく見積もり、先に進むことを躊躇して、再び思考の迷路に舞い戻る場合が多い。辞表まで書いたのに、机の中にしまったまま、時間だけが過ぎていくというパターンである。

また、失敗を過度に恐れる人は、一方で「失敗する=恥ずかしい」という考えを強く持っていることも多い。プライドが高く、傷つくことを恐れている。そうした人は、なかなか思い切って前に進むことができないのである。

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[悩み発生パターン別「必要な思考練習」はこちら] http://president.jp/articles/-/7868

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(アール・アンド・イー合同会社代表 奈良雅弘=文・図版作成 若杉憲司=撮影)