解明!「負の感情」に陥るメカニズム−【2】練習問題集

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■思考を変えれば悩まなくなる

「悩みやすさ」は、その人の思考のあり方と深く関わっていることを述べてきたが、これは逆にいえば「思考のあり方を変えれば、悩まなくなる可能性がある」ことを意味する。

たとえば、ある「事実」に直面したとき、それを問題ととらえれば悩みに至るが、問題ととらえなければ悩みに至ることはない。そうした思考転換が実現できれば、私たちは悩みから解放される可能性があるということになる。

もちろん、簡単なことではない。これまでの人生を通じて形成されてきた「思考のあり方」が、わずか数時間で変えられるわけではない。変えられるにしても、真剣な姿勢で時間をかけて「反復練習」をしなければ無理だというのもまた当然のことである。

以下「思考のあり方を変える」ための7つの「練習」を紹介していく。次ページの練習問題集と併せて読んでほしい。

I.正す練習

「有害性(脅威)を感じやすい人」にとくに必要な練習である。「有害性(脅威)」を強く感じるかどうかが、事実に直面したとき、それをどのように解釈するかに大きく左右されることは、すでに何度も述べた。「Aさんが私のほうをじろりと見た」という1つの事実に対し、「Aさんは私を憎んでいる」という解釈をしてしまえば、悩みの迷路に突入することはほとんど避けようがない。

「正す練習」とは、1つの事実に直面した際に、有害性(脅威)を過大に評価することがないよう、「非論理的な思いこみ」をなくそうとするものである。「Aさんが私のほうをじろりと見た↓私を憎んでいる」という思考の非論理性に気づき、単に「そういう事実があった」という、歪みのない認識に変える練習をするということだ。

なお、前述のように「有害性(脅威)を感じやすい人」は、「すべき思考」「性急な結論づけ」「不安の自己増殖」などの傾向があることから、この3つの「非論理的な思いこみ」について「正す練習」をするとより効果的である。

II.分ける練習

施策発見力に自信のない人には必須である。問題解決の基本は「分ける」にある。分けることで、因果関係の糸も見えるようになり、より具体的な解決策を見出すことも可能になる。たとえば「子どもの成績が悪い」という問題では途方に暮れるが、「割り算が苦手である」という問題なら、解決策はかなり考えやすくなるはずである。

流行のロジカルシンキングでは「ロジックツリー」などを活用することが多いが、このようなツールも活用したりして、1つの問題がどのような「部分」からできているかを把握できれば、施策発見力は大幅にアップするはずだ。

III.広げる練習

やはり施策発見力に自信のない人のための練習だが、視野が狭かったり、こだわりが強かったりして、解決策をあらかじめ自分で限定する傾向の強い人に、とくに必要なものである。

この練習のポイントは「自己への気づき」である。たとえば、不快な発言を繰り返す上司がいるという状況を考えてみよう。これに対し「でも上司だから言えない」と思っていれば、それは解決策から除外されてしまうことになる。しかし、その「言えない」が自分の単なる思いこみにすぎず、「べつに言っても構わないのではないか」と気づけば、1つの有力な解決策を手に入れることが可能になる。思いこみのバリアーを解除すれば、それだけで施策の幅はぐっと広がるのである。

もちろん、解決策を広げるには、知識量を増やしたり、他人に相談する習慣をつけたりする努力も不可欠である。

IV.切り替える練習

原因Bを生む理由の1つである「切り替える力の不足」を克服するための練習であり、対処不能なことで悩みやすいタイプの人にお勧めしたい。

ここでの「切り替える」とは、過去のことや、すぐにはどうにもならない未来のことで悩むのでなく、「眼前のなすべきこと」に意識を集中させることをいう。たとえば「仕事でミスをして上司にひどく叱られた」場合、引きずり悩んでいても、何ら益はない。それよりも「次回からミスをしないよう、今から対策を立てよう」と考えるほうが建設的だし、負の感情からもいち早く解放されやすくなるのである。

V.捨てる練習

あれもこれもと目移りし、選ぶことができない人に必要な練習である。

しかし、「捨てる」こと自体のトレーニングというのは難しい。いくら練習をしても、リアルな状況に直面してみないと、本当に捨てられるか(選べるか)どうかは、わからないからだ。

1つの練習法は、世にあるトレードオフ、つまり「何かを選べば何かを失う可能性がある」を、できるだけ多く知っておくというものだ。たとえば「必死で働けば遊ぶ時間はなくなる」とか「転職をすれば今の安定性は失われる」といったことである。

「捨てる」とは「割り切る」ことでもある。「何かを選べば何かを失う可能性がある」という真理を割り切って受けとめることができれば、「捨てる」はそれほど悩みを誘う行為ではなくなる。そうした「割り切り」を自分の中につくるための練習である。

VI.自己を知る練習

価値観など、選択において必要となる自己の「基準」がはっきりしていない人のための練習である。

ここでする練習とは、さまざまな場面での自分の判断(選択)を確認することにより、自分がどんな欲求や価値観を持っているかを自覚しようとするものである。自分が安定志向なのか冒険志向なのか、仕事重視なのか家庭重視なのか、転職問題などの人生の岐路で悩まないためには、せめてその程度は理解しておいたほうがよい。また、その自覚のうえにした選択のほうが、後悔しなくて済むはずである。

VII.踏み出す練習

行動に出るべきときに、失敗を恐れて迷ってしまう人のための練習である。

といっても、「失敗しても何とかなるさ」といったプラス思考への転換の練習ではない。「失敗の不安」をすべて洗い出し、徹底的にその対策を考えてみるという方法である。不安を受容したうえでどうするかを考えるのだ。

行動力の高い人は、単に楽天的だから動けるのではない。自分の中にある不安と正面から対峙し、それを乗り越える努力をするから行動できるのだ。たとえば、自分でビジネスを始めようとすれば、誰でも失敗のリスクを考えるだろう。しかし、行動力のある人なら、「不安だから」で止めてしまうことは決してない。その不安を直視し、リスクを洗い出し、それへの対策を徹底的に考えようとするはずである。

不安を覚えるたびにこれを繰り返し、不安を軽減し続けていけば、最後には必ずや「実行したい気持ち」が「不安」を上回ることになる。つまり行動を起こせるようになるのである。

勇気とは、実は考え抜く力の別名なのである。

■悩まないための思考練習>>練習問題集

I.正す練習

「非論理的な思いこみ」によって、事実から過剰な「有害性(脅威)を感じないよう、思いこみを正す練習をしてみましょう。

【すべき思考をただす】

A課長が新入社員のB君に「飲みにいかないか」と誘ったところ、B君は「今日は家でサッカーの試合を見るので無理です」と断った。

[Q1]これを聞いてA課長は憤慨しました。それはA課長にどのような「信念(〜すべきだ)」があるためでしょうか。

[Q2]この出来事によって負の感情を発生させないようにするには、A課長はどのような考え方に切り替えればいいでしょうか。

【性急な結論づけをただす】

A課長は若手社員のCさんに仕事を依頼した。Cさんは無表情なまま、小さな声で「はい」と言い、自分のデスクに戻っていった。

[Q3]A課長が「性急な結論づけ」をする人だとしたら、この出来事からどのような結論を出す可能性があるか、考えてみてください。

[Q4]この事実から負の感情を生みださないためにはA課長はどのような認識を持てばいいでしょうか。

【不安の自己増殖を正す】

A課長が企画した販促キャンペーンは十分な成果を出せなかった。A課長は不安を感じている。

[Q5]A課長の心の中にある不安の内容を想像してみてください。

[Q6]A課長が角に不安感を感じないようにするには、どのような認識を持てばいいでしょうか。

II.分ける練習

解決策を見やすくするため、大きな問題を小さな問題(や要因)に分ける練習をしてみましょう。

[Q1]上司から指示されて文書作成を行う場合、ミスが発生する原因にはどのようなものがあるか、列挙してください。

[Q2]一般に、会社において社員の意欲に影響を与えるものにはどのようなものがあるか、列挙してください。

III.広げる練習

人は無意識のうちに「これはできない」と決めつけ、自己の行動の幅を狭めていることがあります。これを克服する練習をしましょう。

Dさんは大手企業に勤めていますが、会社が旧態依然としていることを、いつも嘆いています。それを聞いた友人が「じゃあ社長に直接提案書でも出せばいいじゃない」とDさんに言ったところ、Dさんは「……そんなことはできないよ」と言いました。

[Q1]Dさんは、なぜ「そんなことはできないよ」と言ったのでしょうか。その理由を推測し、列挙してください。

[Q2]あなたがDさんであったら、実際に社長に提案書を出しにいくでしょうか。いかないとすれば、その理由は何でしょうか。

[Q3]Dさん(もしくはQ2で「いかない」を答えた場合のあなた)の考えは、正当でしょうか。「出しにいくことに何ら問題はない」との立場から、Dさん(または自分自身)の考えに反論してください。

IV.切り替える練習

過去の失敗や、すぐには解決できない問題に悩むときは、頭を切り替え、「眼前のなすべきこと」に集中することが大切です。その練習をしてみましょう。

[Q1]下記の状況下で、「眼前のなすべきこと」に意識を集中するよう、自分に対し「〜に集中しよう」という表現で語りかけてください。

(1)X商事からの受注獲得に失敗した…… 
→(              に集中しよう)

(2)課長に3回も提案したが、すべて却下された…… 
→(              に集中しよう)

(3)来月の資格試験、落ちたら大変なことになる…… 
→(              に集中しよう)

V.捨てる練習

1つの選択をすると、それにより必然的に失ってしまうと考えられるものがあります。それを理解する練習をしましょう。

[Q1]下記2つの「選択」をした場合、一般に何が失われる可能性があるか、できるだけ多く列挙してみてください。

[Q2]それを失うことは、あなたにとって耐えがたいものかどうか、自己評価してみてください。
・結婚する→(                )
・会社を辞めて起業する→(                )

VI.自己を知る練習

選択拠り所になる「自己の価値観」を知る練習をしましょう。

あなたは両親に「将来は家業を継ぐ」と約束して東京の大学に進学し、東京で就職しました。仕事は楽しく、充実しています。ある日、父親が病に倒れました。母親は「お父さんを安心されるため早く家を継いでくれ」と言っています。

[Q1]あなたは「稼業を継ぐ」「このまま仕事を続ける」のどちらを選びますか。選んだ理由と合わせて答えてください。

[Q2]上記からわかるあなたの「価値観」はどのようなものですか。

VII.踏み出す練習

不安を超えて前に踏み出すためには、あえて不安に対峙することが大切です。その練習をしてみましょう。

Eさんは、上司のF課長が自分に大量の仕事を命じ、かつその指示内容がコロコロ変わるので、とても迷惑しています。EさんはF課長に抗議しようと思っていますが、怒りっぽいF課長の性格を考えると、なかなか行動に移せません。

[Q1]下記の状況でEさんが抱く不安の内容を想像してください。

[Q2]上記の不安を解消するため、Eさんはどのようなことをしておくといいと思いますか。あなたなりのアイデアを考えてください。

■悩まないための思考練習>>練習問題集の例解

I.正す練習

[Q1]新入社員は プライベートより上司との付き合いを重視すべきだ。
[Q2]プライベートな時間の使い方は個人の自由である。
[Q3]Cさんは自分を嫌っている、Cさんはふてくされている。
[Q4]Cさんは少し元気がないようにも見える。後で話を聞いてみよう。
[Q5]上司から叱責される、査定に悪影響が出る、出世できない。
[Q6]結果は結果として受け止めよう(それ以上でもそれ以下でもない)。

II.分ける練習

[Q1]指示の聞き漏らし・指示の誤解釈・入力作業のミス・チェックの怠り・チェック漏れ・誤った表記知識の保有など。

[Q2]仕事への適性・仕事量・待遇(給料や福利厚生)・上司との人間関係・同僚との人間関係・組織体質・トップの資質など。

III.広げる練習

[Q1]先例がない、ラインを無視したら上司ににらまれる。
[Q3]会社が衰退するよりは、上司ににらまれたほうがマシである。

IV.切り替える練習

[Q1]
(1)次の案件での受注獲得に集中しよう。
(2)課長の信頼を得られるよう、与えられた仕事に集中しよう。
(3)今日の学習予定をやりきることに集中しよう。

V.捨てる練習

[Q1]結婚(恋愛の自由、お金や時間の使い方の自由など)。起業(収入の安定性、社会的信用、守ってくれる仲間など)。

VII.踏み出す練習

[Q1]自分の言葉に激しく怒り、怒鳴ったりする→(その後で)自分に対してさらに厳しく接するようになり、ますます仕事量が増える。または無視するなどの嫌がらせが始まる。

[Q2]課長が感情的にならないように表現を工夫する(感情の意を表する、現状が課にもたらすデメリットを客観的に伝える、課長が受け入れやすい方法を具体的に提案する、など)。

(アール・アンド・イー合同会社代表 奈良雅弘=文・図版作成 若杉憲司=撮影)