スイス人のアーティスト、ジャン・ティンゲリーはキネティック・アート(※)の中心人物の1人と言われている。1925年にスイスのフリブールで生まれ、バーゼルで育ったジャンは、パリのアバンギャルドシーンで活躍、またヌーヴォー・レアリスムのメンバーであった。その彼の名を冠したティンゲリー美術館は、1996年以降、絵画から彫刻、そして機械やビデオアートに至るまで、彼の膨大な数の作品を展示してきている。

※動く美術作品または動くように見える美術作品のこと。 ただし、映画やアニメーションなどは、通常はキネティック・アートとはされない。


開館して16年が経つ今も継続的にコレクションの数は増えてきているが、今回それに伴ったカタログの改訂版を出版したことを記念して、大規模な展示が当美術館で開催されている。




「Tinguely@Tinguely」と題されたこの展示は、新たな視点から彼の作品を考察しており、美術館のディレクター、ローランド・ヴェッツエルは「1954年から1991年までの全ての作品を展示しますが、特に自己破壊する機械や、アブストラクトアートを新たなステージへ進ませた初期のレリーフなど、新しいアートフォームを生み出した若き日のティンゲリーに焦点を当てています」とコンセプトを説明している。

また、絵画の他にも彫刻や機械など様々な作品や、ニキ・ド・サンファルとのコラボレーション作品などが展示されているが、同氏は作品について、「ティンゲリーは20世紀における最もラディカルで破壊的なアーティストの1人でした。彼の作品は人間の存在の基本的な部分に対して疑問を投げかけています。機械とどう付きあ合うのかに始まり、コラボレーション、動きや音、ノイズや音楽の美と無意味さ、軽さと重さ、溶解と空虚、そしてアート作品の役割などがテーマになっています」と説明している。