「お受験」という言葉があるように、幼稚園児や小学生の受験も珍しくなくなりました。しかし、受験については聞いたことがあっても、実際に入学した後の名門中学でどのような授業が行われているのかについては、知らない人も多いのではないでしょうか。

 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏の『中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか』は、そんな疑問に答える書籍。名門校の教室では実際に何が行われているのか、おおた氏が取材し、その様子をつぶさにまとめています。

 例えば、ラ・サール中学校・高等学校では夏休みの課題が実にユニーク。理科の課題として「味噌作り」があり、各自で材料を用意し、自宅で作らなければなりません。熟成には1カ月かかるので、夏休みを丸々費やすというなかなか労力のいる宿題です。

 筑波大学付属駒場中学校・高等学校では、数学の授業が白熱するそう。お題として「ピタゴラスの定理の逆の証明」が出され、先生が「よーい、スタート!」と声をかけると生徒たちが一斉に考え始めます。「できた!」と声が上がった生徒の一人に黒板で発表させると、見ている生徒たちはその証明の美しさに「おー!」「すげーや、これ」と感嘆の声。先生が「これはカッコイイ証明だね!」と褒めると、「カッコイイ!」と生徒からも声があがるのだとか。

 この他、麻布中学校、海城中学校など、そうそうたる学校の授業が紹介されていますが、どれも一味ちがったアプローチをしていて、中学受験とは無縁でも興味深く読める内容になっています。もちろん、中学受験を考えている家庭の参考になることは言うまでもありません。

 そんな中学受験については、このようなデータが明らかになっています。東大家庭教師友の会が現役東大生277人に行ったアンケートによると(2009年2月実施)、「学習塾に通った経験はありますか?」という問いに対して85.9%の学生が「ある」と回答。また、「学習塾が必要だと思った時期はいつですか?」という問いに対しては、
中学受験時 .........33.6%  高校受験時 .........23.5%
大学受験時 .........27.8%  その他の時期 ......15.2%
と、中学受験に備えて学習塾に通いはじめた東大生が多いことがわかりました。

 しかし、ベネッセコーポレーションの最新の中学受験調査では、「中学受験を迷う理由」の1位に「私立中学は授業料が高いから」(28.8%)、2位は「受験準備(塾など)にお金がかかるから」(22.9%)という声があがっています。

 実際に、東京大学が在校生の家庭状況を調査した「2010年学生生活実態調査の結果」(2011年12月発行)を見てみると、世帯年収950万円以上の家庭が51.8%。厚生労働省発表の国民の世帯平均年収は約550万円ですから、東大生の約半分が日本の平均世帯年収の約2倍、もしくはそれ以上を稼ぐ家庭の子どもということになります。

 これらの調査結果をふまえると、経済的な理由による"教育格差"は、中学受験を境に広がっていると言えるのかもしれません。

 しかし、だからといって東大をはじめとする難関大学を諦めるのは、子どもにとっても不幸というもの。

 先の東大家庭教師友の会が実施したアンケートでは、次のような結果も出ています。東大生と早大・慶應・一橋を含む主要難関大学生との塾通いを開始した時期を調べると、「小学4年生:東大生(36.1%)/難関大生(43.2%)」の入塾が一番多い結果になりましたが、注目したいのは小学4年生以外の東大生と難関大生の入塾時期の差。東大生は「小学5年生春(24.3%)」「小学6年生春(13.2%)」と比較的遅めの入塾者が多いのに対し、難関大生は「小学2年生」など、早くから入塾した人が目立ちました。つまり、東大生は最初から塾に通わず、ある程度独学で勉強していた傾向がわかったのです。

 経済格差=教育格差という現実に悲観せずに、肝心なのは我が子に適した学習法をみつけることなのかもしれません。

【関連リンク】
ベネッセコーポレーション「中学受験白書」
http://www.benesse.co.jp/s/cj/juken/h/



『中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか』
 著者:おおた としまさ
 出版社:ダイヤモンド社
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