0.5秒トレーニングでリスク感性を磨く

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■リスクは未知の領域から、いきなり表面化する

あなたがリスクとうまくつきあっていくためには、未知の情報に対する感性を磨くことが何より大切です。

情報には「既知」、「無知」、「未知」の3つの領域があります。「既知」は、すでに知っている情報です。私たちは社会に存在するリスクを把握しているつもりでいますが、全体からみると既知の領域はごくわずかに過ぎません。

一方、それについて知らないことを知っている情報が「無知」です。予定どおりにいかない要因があることは把握しているが、どのようなインパクトを持ち、どのような確率で顕在化するのかがわからない状況にあるとき、その情報は無知となります。

一般的に、リスクマネジメントは無知の情報を既知として対応するコトだと考えられています。しかし、私たちにとって本当に大切なのは、知らないことすら知らない領域、つまり「未知」の情報の把握です。

未知の領域は広く、リスクはこの領域からいきなり表面化します。じつはリスクマネジメントの難しさも、その点に起因しています。既知や無知の領域は、知性によって把握することが可能です。しかし、多くのリスクが潜む未知の領域を、知性でとらえることはできません。知らないことすら知らないのだから、まさに知性の対象外です。

未知のリスクは感性で察知するしかないのに、私たちは知性を磨くことでリスクをマネジメントしようとします。しかし、知性だけでは不十分です。リスクを上手にマネジメントするには、知性を磨く一方で、感性を研ぎ澄ませる必要があります。

■0.5秒トレーニングで感性を磨く

リスク感性を磨くには、0.5秒トレーニングがオススメです。お店でどのレジに並ぶか、電車でどの車両に乗るのか。仕事もそうです。上司の指示にイエスというのか、ノーというのか。企画があがってきたときにゴーサインを出すのか、却下するのか。すべて、0.5秒で見極めるようにします。

0.5秒は、人が歩くときに一歩に費やす時間です。右足を出して0.5秒。左足を出して0.5秒。まさしく歩くスピードで、あなたの目の前の課題を処理していくのです。

0.5秒で判断するのが難しいという人は物事を表面的な現象、すなわちカタチでとらえているのではないでしょうか。たとえば不動産探しで部屋を選ぶとき、「間取りが1DK」、「駅から歩いて5分」、「南向き」といった情報は、その部屋のカタチを示しているに過ぎません。カタチに関する情報は大量で、それらを左脳的に処理しようとすれば、どうしても結論を出すまでに時間がかかります。

物事を瞬時に判断するコツは、まず自分の目的や役割を明確にすることです。「安らぎがある部屋を借りたい」という目的が明確なら、それを価値基準として感覚的に判断すればいい。北向きで日当たりが悪くても安らぎを得られる部屋はあるし、逆に南向きでも窓から見える風景が悪くて安らげない部屋もあります。

一つ一つ条件をじっくり吟味していけば、左脳的な処理でそれらの部屋の総合的な評価を下せるかもしれません。しかし、目的を意識したうえで感性を働かせれば、こまごました情報の検討を飛ばして、いきなり、「この部屋はなんとなく安らげる」という結論にたどり着けるのです。

ただし、感性で判断して終わりではありません。感性で「ここは安らげる」と判断しても、その部屋に本当に住めるかどうかは知性によって検証されなければいけません。まず感性でジャッジを下し、次に制約条件などを論理的に検証していく。この順序を間違えると、判断に余計な時間を要するだけでなく、感性のトレーニングにもなりません。

(※『ビジネススキル・イノベーション』第4章 感性でリスクを察知する(プレジデント社刊)より)

(横田尚哉)