通勤時間をムダにしないためには? −「仕事が忙しい!」の9割は思い込みだった【5】

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私は満員電車で通勤しないことにしています。なぜか。電車に乗るのは通勤のためですが、ファンクションを考えれば、朝のラッシュに無理して電車に乗る必要はないとわかるからです。

通勤のファンクションを分析してみましょう。オフィスへ移動するのは、人や書類などを1カ所に集めたり、オンとオフを切り替えてモチベーションを高めるためです。またオフィスでは上司や部下と言葉を交わしますが、それは情報を伝えたり、相手の体調を察するためです。

それらのファンクションは、「業務効率を上げる」「業務作業を促す」「業務停滞を減らす」という3つに集約できます。この3つを達成できるなら、通勤のカタチにこだわる必然性はない。みんなと同じ時間帯に電車に揺られてオフィスにいくという一般的なカタチから離れて、時差通勤してみたり、場合によっては会社にいかずに家で仕事するという選択肢もありうるはずです。

では朝に通勤せずに、本当に業務成果を出せるのか。私のケースをお話ししましょう。私は毎朝4時に起きて仕事を始め、8時に家を出て近所の喫茶店に向かいます。電源と無線LANが使えるので、喫茶店でもオフィスとほぼ同じ環境で仕事ができます。

その後、電車が空いてきて余裕で座れる10時台になったら、いよいよオフィスに通勤。いわゆるノマド(遊牧民)式なワークスタイルなので、電車に乗っている間も仕事をしています。

会社に到着後は、オフィスでなければ達成できない仕事の指示や報告、打ち合わせなどの作業を片付けます。定時の17時になればいったん仕事を切り上げて帰宅。家で2時間ほど残業して、20時になったら家族とのだんらんを楽しみます。

ノマド環境で移動中も仕事をするなら、結局、会社で働くのとたいして変わらないと考える人もいるでしょう。しかし、実はオフィスにいないことに大きな意味があります。

私たちが発揮している能力は「性能×稼働率」であり、能力のスペックが高くても、何か邪魔が入って稼働率が鈍ると、パフォーマンスが低下します。残念ながら昼間のオフィスは、電話や来客、突発的な雑用といった割り込みが多く、どうしても稼働率は70%前後に落ちてしまう。

そうした環境で企画を練ったり、集中して処理すべき作業をするのは得策と言えません。オフィスのファンクションは、むしろ「割り込まれること」にあると考え、人とのコミュニケーションが中心になる仕事や細切れでもかまわない作業に充てるべきです。

ならば集中を要する思考の仕事は、どこでやればいいのか。役立つのが通勤中の車内、喫茶店などの時間・空間です。車内や喫茶店で仕事の割り込みは起きないし、適度な雑音や揺れは、集中力を高めてくれる気さえします。

オフィスに何でも詰め込むのは非効率。ノマドなワークスタイルを確立して、場所と時間帯で仕事を切り替える工夫をすれば、パフォーマンスはグッと高まるはずです。

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ファンクショナル・アプローチ研究所 代表取締役社長 横田尚哉(よこた・ひさや)
改善士。世界最大企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)の価値工学に基づく分析手法を取り入れて、総額1兆円の公共事業改善に乗り出し、10年間でコスト縮減総額2000億円を実現させた。「30年後の子供たちのために、輝く未来を遺したい」という信念のもと、そのノウハウを潔く公開するスタイルは各種メディアの注目の的となっている。全国から取材や講演依頼が殺到し、コンサルティングサービスは約6カ月待ち。また、「形にとらわれるな、本質をとらえろ」というメッセージから生み出されるダイナミックな問題解決の手法は、業務改善にも功を奏することから「チームデザイン」の手法としても注目が高まっている。

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(ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役 横田尚哉=分析 村上 敬=構成 葛西亜理沙=撮影 ファンクショナル・アプローチ研究所=図版提供)