初音ミクさん家の社長にお話を伺いました




初音ミクさんは今でも大人気。その人気は海外にも広がり、ライブも絶好調です。初音ミクというまったく新しいジャンル、メディアを創り出した、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、社長の伊藤博之さんにお話を伺いました。



■初音ミク開発の始まりは?



――そもそも初音ミクを開発しようと思った動機は何だったのでしょうか。



伊藤社長 弊社は音楽関係の製品を手掛けていたんです。DTM(デスクトップミュージック)という言葉が出たての頃でした。音楽編集ツールが出て、色んな音源が整備されて、という時代でした。



――1995年頃ですね。Windows95が発売されて、ソフトも段々に出て、普通の人でもDTMを楽しめるようになって……。



伊藤社長 そうですね。その時に、ドラムとかさまざまな音源があったんですけども、ボーカルはなかった。クリエイターに楽器の1つとして使ってもらえるボーカル音源があったら面白いんじゃないか、そう思ったことが開発動機ですね。



――2004年にはボーカロイドの第1弾『MEIKO』、2006年には『KAITO』をリリースされます。MEIKOではシンガーソングライターの拝郷メイコさん、KAITOではスタジオミュージシャンの風雅なおとさんのサンプリング音源でした。2007年の『初音ミク』では声優の藤田咲さんの声になっています。このミュージシャンから声優さんへの移行にはどんな意図があったのでしょうか。



伊藤社長 シンガー以外の声の職業の人で、とは思っていました。声優さんには注目していたんですが、当時の弊社には、声優さん、アニメに詳しい人間がいなかったんですよ。『声優年鑑』を買ってきたものの置いてあるばかりした。ところが2006年に弊社の面接を受けたコが詳しかったんです。で、そのコを採用して、誰がいいかを聞いてですね(笑)。社内で十分に討議して選びました。



■ビジネスに関しては走りながら考える



――ボーカロイドのビジネス的な面をどうお考えでしょうか?



伊藤社長 普通にキャラクタービジネスになってしまうのは、あまり面白くないと思っています。



――と言いますと?



伊藤社長 単に消費されるだけのビジネスにはあまり興味が湧かなくって。また普通の音楽ビジネスをやっても仕方ないと思っています。そもそもボーカロイドを作った時も、「こういうものがあると面白いだろうな」とか「こういうものがあるとクリエイター」は楽しいだろうなとか思っていました。



――ビジネスプランありきで始まったわけではないのですね。



伊藤社長 そうですね。今もそうなんですけど、やりながら考えているところがありますね。



――『初音ミク』を代表とするボーカロイドはまったく新しいムーブメントを起こしたと思うのですが、その原動力は何でしょうか?



伊藤社長 「共感」ではないでしょうか。コンテンツの作り方、商品の作り方の根っこには「いかに共感してもらうか」があると思います。この共感の輪が次々に広まっていくことで大きな流れになる。流れを作る上で、ニコニコ動画やYouTubeという便利な道具があった、そのタイミングも良かったのでしょう。さっきのビジネスの話にもつながるのですが、金庫の中にコンテンツを入れておいても何もならない、と思っています。共感を呼ぶようにコンテンツを泳がせていくこと、これが大事なんです。



――「コンサート」は従来の音楽ビジネスの範疇でしょうが、それがバーチャルキャラクターでというと今までにない話ですよね。初音ミクさんの海外でのライブなどはこれからも続くでしょうか?



伊藤社長 続きます。昨年はロサンゼルスとシンガポールでコンサートを行いました。10月は香港、台湾で行いました。



――初音ミクさんは働き者ですね。



伊藤社長 そうですね(笑)。



■英語版ボーカロイドを制作中! 英語は難しい!?



――ボーカロイドの次の展開をどうお考えでしょうか。



伊藤社長 今英語版を制作しています。



――それは楽しみですね。いつリリースの予定でしょうか。



伊藤社長 それははっきり言えないです。なかなか難しいんですよ。



――と言いますと?



伊藤社長 日本語の場合はカタカナでいけるんですけども……。



――カタカナですか?



伊藤社長 つまりですね、日本語の場合は、もともと母音の数が少ないですし、「コ・ン・ニ・チ・ハ」の様に少し発音のラグがあったとしても聞き逃せる言語なんです。でも英語の場合はそうはいかないです。音と音の繋ぎがシビアなんです。「ハ・ロー」ではダメで「hello」なんです。できるだけ自然に聞こえるように仕上げなければなりませんので。



――なるほど。その調整は難しそうですね。



伊藤社長 難しいですね(笑)。時間をかけてしっかり作っているところです。



――海外のボーカロイドファンはどんな人達でしょうか?



伊藤社長 そうですね、やはりアニメ、漫画を入口に入ってくる人が多いですね。海外のコミックコンベンションで知ったとか、Youtubeで見たとかですね。ただ純粋に音楽的な興味でもって見てくれる人も増えてきています。海外の人向けにFacebookで情報発信を行っていますが、そこでアンケートを取ってもいます。回答の中には「あまりアニメアニメしない方がいい」、「萌え的な見せ方はやめてほしい」なんて意見が多いです。



――それは意外な結果ではないですか?



伊藤社長 ファンの人達は案外冷静に見ているものですよ。



英語版の登場を待っている海外のファンも多いことでしょう。英語版がリリースされれば、ボーカロイドは大きな共感の輪を広げていきそうです。





(高橋モータース@dcp)



クリプトン・フューチャー・メディア株式会社

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