衆議院解散・総選挙のシナリオで読む注目銘柄15
日本維新の会と近い安倍氏が自民党総裁に就任したことで、総選挙時期はやや先延ばしとなる可能性が出てきた。選挙が混戦になれば政権運営は困難となる一方で、維新の会が躍進なら構造改革が一気に進む可能性も浮上。ここでは、実現の可能性が高い3つの選挙シナリオと、シナリオごとに山本さん注目の有望銘柄を紹介していく。


信用の期日明けと投機筋の買い戻しで日本株は浮上へ

基本的に日本株は10月半ばごろから上昇に転じるとみている。ひとつは3月高値の信用取引の期日が明けるため、もうひとつは欧米とも中央銀行が危機回避に向けて万全の態勢をとっているためだ。

日銀による10兆円の追加緩和は完全に期待外れだったが、欧米発の危機が起こらないという前提があるので、これまでヘッジファンドなどが積み上げてきた日本株のショートポジションの買い戻しが進むのではないか。もっとも、積極的に外国人買いが入る地合いでもないため、テーマ性の高い株や好業績株、高配当株に人気が集中すると思われる。

安倍氏が自民党総裁に選ばれたことで、解散・総選挙の時期は先延ばしになる可能性が出てきた。安倍氏は橋本氏率いる日本維新の会との協力を進めており、維新の会が選挙態勢を整えるには、もう少し時間が必要だからだ。

選挙後の政策運営は維新の会の議席次第か。過半数獲得なら改革加速

解散・総選挙のメインシナリオは、自民党では過半数が取れず、公明党やみんなの党、日本維新の会による連立政権が発足するというもの。維新の会はまだ候補者の選定が済んでいないが、かなりの浮動票が流れるのは間違いなさそうだ。さらに、維新の会との協力を推し進めている安倍氏が総裁に就任したことで、維新の会の政策を重視した政権運営が予想される。

ただ、この場合、福祉カットを唱える維新の会と、福祉維持を訴える公明党が真っ向から衝突する。両党がどの程度の議席を獲得するかにもよるが、結局、政策は遅々として進まなくなる公算が大きい。福祉も切らないうえ、財政再建も進まないということは、現状とあまり変化がないということだ。注目銘柄も、介護関連や調剤薬局、小売りなど、ディフェンシブ色の強いセクターが中心になってくる。

総選挙の第2のシナリオは、維新の会が自民党に迫る勢いで相当数の議席を獲得するというもの。この場合も連立政権を組むことになるが、そうなれば、より維新の会の政策が政権運営に強く反映される。維新の会は、基本的に「世代間ギャップを埋める」のが基本方針。つまり、増税+福祉カット路線だ。また、構造改革を推し進め、日銀に対しても強硬にデフレ脱却を迫るだろう。そうなれば当然、円安が加速し、輸出関連の水準訂正が進むことになる。

第3のシナリオは、前回の総選挙で民主党が大勝利を収めたのと同じような形で、維新の会が第1党、もしくは過半数を握ってしまうというもの。みんなの党との選挙協力が進めば、過半数を取るシナリオもないとはいえない。この場合、第2のシナリオよりも強烈に構造改革が進むことになる。公務員改革や特殊法人の解体など、より過激な政権運営になるはずだ。

日本の解散・総選挙後の3つのシナリオ

シナリオ?
自民党、公明党、日本維新の会の主張がぶつかり、政権運営が困難に。日本経済にとって最も悪いシナリオ。改革は進まず、自民党の「国土強靭化計画」もサイズダウンを余儀なくされる。

消費税増税が施行される予定の2014年4月までは、小売りを中心に特需が発生するだろう。また、消費税増税をカバーする部分的な減税(住宅ローン減税など)が実施される公算が大きい。基本的には現在の相場の流れが続き、好業績銘柄やディフェンシブ、高配当関連の個別物色が進む。


シナリオ?
維新の会の躍進によって、維新の会が掲げる政策が次々と実行される。増税と福祉カットに加え、原発ゼロを遂行していくと思われるため、株式相場でも太陽光や風力、地熱といった再生エネルギー関連が再び脚光を浴びる。

日銀に対しては、デフレ脱却を目的とした金融緩和をかなり強硬に迫ることが予想され、輸出関連株も買われる展開になるだろう。

また、医療の規制改革、発送電分離なども推し進めるはずで、こうした政策の恩恵を受ける銘柄にも要注目だ。


シナリオ?
選挙協力が順調に進み、維新・みんな連合が過半数を獲得。維新はその名の通り、各方面で革命を巻き起こす。政策投資銀行の民営化など、これまでは完全にノータッチだった部分にまでメスを入れる公算も。

また、維新の会は規制緩和に加えて官僚支配体制の打破を掲げている。これまで官僚支配や規制に縛られていた電力、IT業界などには強烈な追い風が吹きそうだ。「大阪金融特区構想」のような、金融分野への思い切った改革をする可能性もある。



※株価は2012年10月9日現在。PB=プライベート・ブランド、NC=数値制御、JQ=ジャスダック。
山本伸(SHIN YAMAMOTO)
マネーリサーチ代表 株式評論家

株式評論家歴27年。幅広い人脈からの情報を土台に経済や政局を裏読みし、有望銘柄を発掘していく。同業者も注目しているという、『株式新聞』に連載中の名物コラム「株式調査ファイル」は12年目に突入。


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この記事は「WEBネットマネー2012年12月号」に掲載されたものです。