前半とは武蔵野の守り方が変わり、SAGAWAのメンバーが替わった。そしてSAGAWAの足が止まり、パスをつなぎながら前に出てこられなくなった。

すべてが、武蔵野の有利な方向に作用した。

■勝者の罠に嵌まったSAGAWA

今季途中からの武蔵野はじっくりと耐える戦い方を志向しており、メンバーにもそういったプレーに向いた選手を集めている。

前半を0-0や0-1で推移すれば、後半に何かが起こる可能性が高まることを、彼らは体験的に知っている。前半を0-1で折り返したことが、命運を分けた。依田監督は言う。
「あそこでもう1点やられたらきついですけどね、0-1ならまだチャンスがあるかなと思って観ていました。0-1の状況で追うほうがね。思った以上に佐川さんが止まったなと。ウチがいいんじゃなくて、佐川さんが止まったんだなと思います」

SAGAWAの中口雅史監督は、自分たちが「勝者の罠」に嵌ってしまったことを指摘する。
「(前節、対ブラウブリッツ)秋田戦のゲームがすごくよかった。7割8割、自分たちが思うようなゲームができた。今週、それをずっと言ってきたんです。先週と今週とはちがう、秋田と横河とはちがうと。秋田県と滋賀県はちがう、ホームとアウエーはちがうと。ちがいを認識したなかでプレーをしないといけない。
ぼくらだけではなくて、数多くのサッカープレーヤー、チームが陥るところだと思うんですよね。先週もよかったから今週もいいだろうと。相手もちがえば場所もちがうし、相手の攻撃もちがえばタイプもちがう。そういったところを今週はずっと伝えてきたんですけど、そこに陥ってしまった」

キーとなった選手交替も、ロジックとしてはまちがっていなかったが、結果が凶と出た。
「(左サイドハーフの)嶋田正吾をいちばん前に置いて、横河の左右のスペースにセンターバックを引っ張りだしたところに、(1トップの)清原が真ん中に進入できたほうがいいかなというところでポジションを変えて。前半の終わりにポジションチェンジ(トップ下の山根がワイドへ移動)をしてからうまくいっていたんですよ。うまくいっていたなかで、やっぱり右サイドに関しては山根より宇佐美(潤)のほうがいいだろうと」(中口監督)

■廃部への途惑い、そしてアスリートとしての思い

この節の敗北で2位AC長野パルセイロとの勝点差は5と拡がり、SAGAWAが2位に入る確率はかなり低くなったと言わざるをえない。だとすると、残り二試合のSAGAWAは、サッカーの質を上げることにしか目標を持ち得ない。幻のゴールとなってしまったプレーの直後に先制点をマークした大沢朋也は、次のように語っている。
「やっぱり勝てなかったのがいちばん残念でしたけど、まだこれが最後の試合じゃない。あと残り二試合あるので、チームのみんなで気持ちを切り替えて、感動できるようなゲームをしたい。全員攻撃、全員守備のコンセプトは変わらない。
(SAGAWAが終わることになり)もちろん寂しいですよ。でも決まってしまったことなので、残されたゲームを全力でやるだけです。残り二試合が貴重? そうですね。いろんな人の思いも含めて、ほんとうに、出しきるだけです」

思いの強さは、かつて浦和レッズで将来を嘱望され、佐川東京で中核となった山根伸泉も同じだ。
「やっぱりもう長いし、いままで同じチームになってきた人たちのこともすごく思い出すし。ぼくもこの年(33歳)までやれて、いつかここを離れたときに応援していきたいなと思っていたチームなので。それがなくなってしまうというのもすごく寂しい。応援しつづけたいと思っているチームがなくなるのが、寂しいですね。
(自分が引退するだけならともかく?)そうなんですねえ。東京、大阪時代から応援している人たちもずっとつづけてくれているし、そういう人たちとまたいっしょに応援したいと思っていたのに、その場所がなくなってしまうというのが寂しいですね。寂しいです、ただ寂しいです。いい結果を残して、有終の美でいきます」