鍾馗さんの変容

写真拡大


何がどうして鍾馗さんはかくも変容をとげたか?まずは、そもそも鍾馗さんってどんな姿なのか見てみましょう。

398px-Yoshitoshi_Shoki『鍾馗夢中捉鬼之図』(月岡芳年『新形三十六怪撰』)
(ウィキメディア・コモンズから流用)
幕末から明治初にかけての浮世絵師 月岡芳年によって描かれた鍾馗。
もちろんいろいろな文献にあたって、唐時代の官僚の衣装を再現していると思われます。
鍾馗は官吏登用試験の「科挙」に落ちて自ら命を絶っており、官吏になったことはないはずで矛盾しているのですが、
憧れの衣装を纏って玄宗皇帝の夢枕に現れたのでしょう。

そのあたりの経緯は諸説あるようですが、こちらに詳しい記事があります。
IMGP5919(愛知県知多市新知西屋敷)
この鍾馗さんは瓦鍾馗としては極めて写実的で、先例にとても忠実に作られているが、こういう鍾馗さんは例外。
幕末〜明治にかけての、各地で瓦の鍾馗が盛んに作られていた頃、職人は今とは違って鍾馗さんの絵姿を入手することも難しく、想像力を膨らませて鍾馗さんを形作ったのだと思います。

1.足


IMG_8122(滋賀県近江八幡市孫平治町)
古くて、出来の良い鍾馗さんですが、なぜか裸足になってしまいました。

hadashi2(左:滋賀県彦根市平田町 右:三重県伊賀市川北)
これらも裸足鍾馗さん。

2.結び目


けったいな造形がわかりやすく現れるのが腰紐の結び目。そんなに想像力を働かせる余地はないようにも思うのですが、変なのがよくいます。
IMGP3929(三重県津市香良洲町)
素朴ながら、細かい装飾を随所に散らして、とっても一生懸命作った感じがいい。
結び目は巨大で、結納の水引みたいにピンと立っている。
himo2(左:奈良県大和郡山市池沢町 右:愛知県美浜町上野間)

バックルと化したり、巨大化したり。

3.ひげ


kao

目の周りや額までひげに覆われています。この魁偉な容貌が災いして科挙に失敗したと言われる、鍾馗のトレードマークなのですが。
hige1(左:大阪府富田林市富田林町 右:三重県松阪市中万町)
hige2(左:奈良県川西町吐田 右:愛知県知多市金沢)

頬や顎がつるんとして、後ろから髭の生えている鍾馗さんは非常に多いです。実際にこんな生やし方をしている人がいたら、かなり変だと思う。

ここに取り上げたのはごく一例です。
想像力全開・暴走鍾馗さんがいかに多いかは、拙サイトでご確認ください。

4.The ultimate


そんな中でも筆者がチャンピオンだと思うのが、カバーにも掲載したこちらの鍾馗さんです。
a(奈良県香芝市尼寺)

説明は不要でしょう。ディテールをお楽しみください。
鍾馗さんも海の向こうの日本で、こんな姿にされるとは、そしてそれを見つけては喜んでいる変人がいるとは
想像もしていなかっただろうなー。

今回登場した鍾馗さん


香芝市尼寺
<0371>
知多市
新知西屋敷
<0019>
近江八幡市
孫平治町
<0523>
彦根市平田町
<1128>
伊賀市川北
<1264>
津市香良洲町
<1033>





大和郡山市池沢町
<0262>
美浜町上野間
<0868>
富田林市富田林町
<0716>
松阪市中万町
<1399>
川西町吐田
<0877>
知多市金沢
<1408>


※写真をクリックすると筆者のブログ「鍾馗を尋ねて三千里」の解説ぺージ(または博物館)が開きます。
※<>内の数字は筆者HP「鍾馗博物館」内・収蔵室の通し番号です。