数値化できず、目にも見えない「母性」。そんな母性とは、等しくどの女性にも備わっているものなのでしょうか。結婚し、子供を産み、母親になると自然と母性が芽生えるものなのでしょうか。

 「女性であれば誰でも『母性』を持っている、と一般的に考えられているように思います。果たしてそうでしょうか」とは、作家・湊かなえさんの言葉。「母性心をくすぐる」といった言葉が一般的に使われていることから、私たちは、すべての女性が母性を持っていると考えがちです。

 湊かなえさんの新作『母性』のなかには、このような言葉が登場します。

 「子どもを産んだ女が全員、母親になれるわけではありません。母性なんて、女なら誰にでも備わっているものじゃないし、備わってなくても、子どもは産めるんです。子どもが生まれてからしばらくして、母性が芽生える人もいるはずです。逆に、母性を持ち合わせているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです」

 これは、湊さんの考えを代弁しているのではないでしょうか。誰もが母性をもち、母になるとは限らないというのです。

 そんな「母性」について、母の記録と娘の記録で物語が進んでいく『母性』は、湊さんが「これが書けたら、作家を辞めてもいい。その思いを込めて書き上げた」という意欲作。

 「私はお母さんを助けたいの。子どもなんてまた産めるじゃない」など、激しく厳しい言葉が文中に何度も出てきます。これも湊さんの覚悟の現れ。

 「母性」をテーマにした同作、母親になる前と後では、読後感の異なる作品となりそうです。





『母性』
 著者:湊 かなえ
 出版社:新潮社
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