まるで現代アート? 「世界タメシガキ博覧会」をレポート




文具店のペンコーナーなどにある試し書きの紙。皆さんも一度はペンの書き心地を確かめるために利用したことがあるのではないでしょうか? そんな試し書きの紙を世界50カ国から集め展示した「世界タメシガキ博覧会」が、東京・表参道の文房具カフェで10月2日まで開催されました。「試し書きって、ただの落書きでしょ?」と思いつつも、世界各国となると「もしかしたら珍しいものが見られるかも」と期待を抱き、会場に足を運んでみることにしました。





事前に取材のアポを入れて会場に赴くと、待っていてくれたのは「世界タメシガキ博覧会」を主催する寺井広樹さん(32歳)。寺井さんは5年前にベルギー、ドイツ、フランス、ケニア、エチオピア、アルゼンチン、ベトナムなど世界を放浪し、各地で見た試し書きに魅了されていったといいます。



「文具店で指を差して『これをください』と店員に頼んでいたのですが、国によっては『文房具を買ったら譲ってあげる』と言われることもあったので、自宅に世界の文房具がたまってしまっています(笑)」(寺井さん)



試し書きの魅力を聞くと、「複数の人が一つの紙に無意識で書くものですから、まるで現代アートのようになるんです。ほかにも例えば発展途上国では実用で使えるかどうかを重視する傾向にあるためイラストが少ないなど、国によって違いがあることも面白いですね」と話してくれました。



なるほど。「落書き」などと軽く見ていましたが、「現代アート」とは……。奥が深い!



試し書きの楽しみ方が分かったところで、早速「作品」を見ていきましょう。



まずは、わが国・日本から。











描かれているのはお侍さんでしょうか。どうやら筆ペンの試し書きのようで、イラストもさることながら、文字もレベルが高いものがあります。取材当日は外国人も来場していましたが、日本国民として誇らしい試し書きですね。しかし、「あかしやさんま」と書いてあるのはなぜでしょうか? もしかしたら本人……のわけないか。



お次はフランス。











ファッションの国というイメージがあるだけあって、オシャレな試し書きになっています。イラストが多いのもフランスの特徴で、見ているだけで楽しくなってきそう!



続いてはインドです。











茶色い紙に黒のボールペンで書かれ、一見地味そうに見えますが、よくよくチェックしてみるとそこには数式がいっぱい。数学の教育に力を入れている国だけあって、数式を書くのに適しているかどうかを確認しているのでしょうか。お国柄がよく出ている1枚だと言えそうです。











個人的に気になったのは、この試し書きです。どこの国かというと、南アメリカのボリビア。四足の動物の上に球体が浮かんでいるように見えますが、これは何なんでしょうか? もしかしたら、現地では神聖な動物なのかもしれないと想像が膨らむほど、気品が漂っています。それにしても気になる……



次に紹介するのはグアムです。











グアムといえば日本人にもなじみが深いリゾートですが、きれいな長いまつげのイラストから南国っぽさがうかがえます。しかし、細いペンと太いペンで同じような瞳を描くとは、よっぽど瞳を描きたかった人なのでしょう。



最後に紹介する試し書きはオランダのもの。











紙全体がぐちゃぐちゃな線で覆われて、ちょっと投げやりな感じもしますが、ある意味、これこそ試し書きの王道と言えるかもしれません。ここまで試し書きしてみれば、商品の品質がよく分かるというものです。オランダは発展途上国ではありませんが、もしかしたら実用へのこだわりが強い国なのかも。ただ、書きすぎてインク切れにならないか少し心配です。



寺井さんによると、現在収集した試し書きは約2,000点。なかには寺井さんの活動を知って各国から送ってきてくれることもあると言います。今回の取材をしてみて、今後、文具店に言って試し書きを見ることが楽しみになりましたが、同じことを思った読者の方も多いのではないでしょうか?



しかし、寺井さんには一つ心配事があると言います。



「こうやって試し書きを紹介することで、『もしかして、どこかで紹介されるかも』と思う人が出てきてしまい、無意識で書けなくなるのではないかと危惧(きぐ)しています。無意識で書くからこそアートなのですから」(寺井)



皆さん、試し書きする際は、このレポートのことを一度忘れて、心を無にして行ってくださいね!





(宮崎智之/プレスラボ)



http://tameshigaki.org/