今だからこそ考えるべきビジネス戦略=中国ビジネスヘッドライン
中国に関連するビジネス情報サイト「中国ビジネスヘッドライン」は14日、緊急セミナー「今後、日本企業はどう中国ビジネスと向かい合うべきか」を開催した。テーマは「今だからこそ日本企業が考えるべき中国ビジネス」。グラブポット(本社・東京都千代田区)代表取締役の福田完次氏(写真左)、中国市場戦略研究所(本社・東京都中央区)代表の徐向東氏(写真右)が講師を務め、それぞれの経験にもとづき中国ビジネスと向かい合う方法を説いた。
福田氏は「尖閣諸島問題から見えるもの」として、中国側には「指導部の交代期であり、弱腰を見せれば失脚しかねない」、「自国民に(同問題への対処)がどう見えるかの法が重要」などの事情があると指摘した。
一方、日本政府にもタイミング、読み、交渉過程などの不手際があり、「火に油という構図もある」との考えを示した。
ビジネスを進める上で極めて重要な「尖閣問題からくるリスク」については互いに譲れないという状況があるため、「不慮のぶつかり合い」という事態も完全には否定できないという。
いずれにせよ、同問題による両国のにらみ合いは「10年単位の可能性がある」と主張。ただし、状況は徐々にではあるが戻っていくとの見方を示した。
福田氏によると、通関やビザ発給遅れの問題については、中国側にもWTOの取り決めに違反しているとの批判は避けたいとの思惑がある。ビジネスに関連する状況の回復は、春節(=旧正月、2013年は2月10日)の連休明けが最初のめどで、5月1日のメーデーごろには、回復が顕著になる可能性がある。しかし、完全に戻るには数年単位の時間が必要とみられるという。
反日デモについては、中国側にとっての「プレゼンテーションとしての役割」は終了したと考えてよい。これ以上、世界全体に対するマイナス・プロモーションは当局としても避けたいからだ。
ただし、ストライキは続くと考えられる。国民の不満をそらすために政府としても介入したくなく、特に外資系企業の場合には賃上げ要求に応じざるをえなくなっても「“自分の腹”は傷めないで、労働者の不満を逃がすことが可能」との発想があるからという。
中国では、為替、訴訟、コピー商品、ビジネス手法の違い、コスト上昇とインフレ、他国とはけた違いに厳しい競争社会などさまざまなビジネスリスクがあるが、福田氏によると、中国の最大のビジネスリスクは、「ビジネスと政治がセパレートされない」ことだ。
ひとつの件が収束しても別の件が発生するなど、社会主義というシステムと政治体制自体がリスクという。中でも、国や社会の仕組みと政権を継続するためならば「何でもあり」という姿勢が、最大の問題という。
ただし、「社会システムが違う国に言ってもうけようとするならば、難しいのは当然」であり、「恐れてばかりでは、(ビジネスは)日本でしかできない」ということになる。そのために、中国進出にあたっての事業戦略の整理、撤退も想定した進出、現地化の推進、現地事情把握と権限委譲などの具体策が必要になるという。
徐向東氏は、「中国という巨大市場が迎える大きな変化をいかにつかむか」という点を中心に論じた。これまでは、経済の急成長にともない「行け行けドンドン」的な社会だったが、消費者が求めることは「安心・安全・健康」、「個性や文化の消費」、「洗練さ、高付加価値」などにシフトし続けている。 中国市場戦略研究所の調査でも、化粧品、育児用品、子どもの教育、マイカー、マイホームなどについては、北京、上海市民は東京を上回っているという。
さらに中国では2012年秋から2013年春にかけて、10年に一度の指導部の新旧交代が行われる。そのため、景気刺激策の発動は2013年春の新指導部誕生後になる。主な政策としては、国有企業の独占領域の拡大傾向を是正、民間企業の成長促進にかじ取りを変える、金融の一層の自由化などが予測できる。
環境問題については、同問題に起因する市民運動がさらに拡大し、政府は対策に負われることになる可能性が高いという。(編集担当:中山基夫/写真:高橋大樹)