就職活動が幕を開ける12月が近づき、スーツ姿の学生を街で見かけるようになりました。企業の人事担当者は新卒採用の際「コミュニケーション能力」の高い学生を採用したいと口を揃えます。社会で働いていく中で必要とされる「コミュニケーション能力」。なんとなくわかったふりをして使い続けているけれど、結局それは何のことでしょうか。

 平田オリザの著書『わかりあえないことから―コミュニケーション能力とは何か』に、明快な答えがありました。

 私たちが、「あの人は話がうまいな」「あの人の話は説得力があるな」と感じるのは、実はきちんと話す人や論理的に話す人に出会った時ではありません。会話の中で、どれくらい意味伝達とは関係ない無駄な言葉を含めるかを、時と場合によって操作している人こそが、コミュニケーション能力が高いとされるのです。

 つまり、社会に合わせて自分の在り方を変えられる力なのです。同時にいくつかの社会的役割を演じ分けられるのは人間だけだと言われています。コミュニケーション能力、対話力を高めていくことは、演じることと密接な関係にあります。

 そんな平田オリザを4年もの間追い続けた観察映画『演劇1』『演劇2』が公開されています。シアターイメージフォーラム(渋谷)では11月23日まで、各地でも順次公開です。想田和弘監督による5時間42分という二部作の長編ドキュメンタリーで、『演劇1』『演劇2』各1500円。教育、政治、国際化などの現代社会を、演劇を通して見つめ続ける平田オリザの鋭い視線に出会えます。

 「人間はわかりあえない。でもわかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分をみつけて、それを広げていくことならできるかもしれない」(平田)

 対話の基礎体力をどのようにして作り出していけばいいのか、国際化された社会の中で日本人はどこへ進んでいくべきなのか。芸術の秋の締めに相応しい、明日への1冊です。

【関連リンク】
演劇1 演劇2 
http://engeki12.com/



『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)』
 著者:平田 オリザ
 出版社:講談社
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