[其ノ二 FX プロディーラーの視点!]大統領選挙の年の米ドル/円は小動き
11月6日に迫った米国大統領選挙。現職のオバマ大統領と共和党のロムニー候補が政策面で真っ向対決。4年に1度の大統領選挙と為替相場の関係性をプロはどう見ているのか?


政治が不透明になる大統領選挙の年は、為替は膠着状態に

民主党のバラク・オバマ現大統領に、共和党のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が挑む米国大統領選挙が、目前に迫ってきました。

大統領選挙前には景気対策が打ち出されることが多く、その期待感から選挙前年のニューヨーク・ダウや日経平均株価が上昇しやすいことは、データでも明らかです。

では、為替相場はどうなのでしょうか?

1983年から30年間の米ドル/円の年間変動幅を見てみると、都合8回の大統領選挙実施年の米ドル/円の平均値幅は17円26銭、そのほかの年は24円96銭。大統領選挙の年は米ドル/円の変動レンジ幅が狭くなっています。

選挙を挟むことによって政策の継続性や方向性が不透明になるため、多くの投資家がいったんポジションを縮小させることがその要因と考えられます。パパ・ブッシュが落選した1992年のように、現職大統領の再選が危ぶまれているときほど、為替の膠着状態も強くなる傾向があるようです。

特に今、米国では?ねじれ議会〞の影響で、2013年早々に減税期限切れと自動的歳出削減が重なる「財政の崖」問題が大きなリスク要因として浮上しています。

たとえ、オバマ現大統領が再選しても、同時に行なわれる下院選挙で民主党が勝てず、これまで通り共和党が過半数を占めると、議会のねじれは解消されません。

「財政の崖」が発生して超緊縮財政になれば、景気の冷え込みが濃厚となるため、米ドル上昇の展望を描きづらいのが現状でしょう。

また、共和党のロムニー氏が大統領に選出されれば、財政赤字拡大に対する不安感などで円高・ドル安リスクが高まりそうです。

結論としては、オバマ大統領とロムニー氏の政策がまったく正反対ということもあり、大統領選挙に先回りして投資するのは難しい状況です。

米ドル/円の値幅は史上最狭。?ねじれ〞解消で米ドル上昇へ

そのため、今年の米ドル/円は高値84円18銭、安値76円3銭で、8円15銭という過去30年でもきわめて狭い変動幅になっています。民主党と共和党の対立激化による政治の膠着がその一因になっているのは間違いないでしょう。

とはいえ、そういった状況を除いてもプロのディーラーは、誰が大統領になるかでポジションを持つことはありません。付け加えれば、現在の為替相場の一番のテーマは「ユーロ危機」です。もはや米国一国で世界経済を引っ張る機関車にはなれないこともあり、米国の政治イベントだけを材料に取引するのはプロでも難しいこと。個人投資家の方も大統領選挙を狙ってわざわざポジションを持ったり、保有ポジションを決済したりする必要はありません。

ただし、オバマ氏の再選と議会のねじれ解消で「財政の崖」問題がクリアされれば、方向性も明確になります。FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が打ち出したQE3(量的緩和第3弾)の効果で、住宅価格の上昇や失業率の低下にも期待が持てるので、2013年に米ドル/円が本格的な反転上昇に転じるという予想もあながち的はずれではないでしょう。



【今月のカリスマ軍師】
上田眞理人(MARITO UEDA)
FXプライム 専務取締役

東京銀行、モルガン銀行、ドレスナー銀行などで為替ディーラーや外国為替部長を歴任後、現職。



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この記事は「WEBネットマネー2012年12月号」に掲載されたものです。