心療内科医に聞く。心療内科とは何を診るところ?




ここ数年で、「心療内科」という言葉を耳にする機会が増えました。実際、心療内科とは何をどう診察する科なのでしょうか。精神科とは違うのでしょうか。これらの疑問を解消するべく、心身医学専門医で心療内科医の野崎京子先生にお話を伺いました。



■心療内科はプチ精神科ではない



――心療内科とはどのような診察をする科なのでしょうか。



野崎先生 内科系の「心身症」を主に診察する科です。心身症とは、うつ病などの精神の疾患ではありません。体の病気で、その発症や経過がストレスなどの心理・社会的な要因によって影響を受けるときの病状を指します。



具体的には、慢性の腰痛、胃潰瘍(かいよう)、慢性胃炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支ぜんそくなどです。



例えば、慢性的に下痢や原因不明の腹痛で苦しむ人が、胃腸科を受診してレントゲン検査をしても異常が見られない。そこで心療内科に紹介状を書かれ、「え? おなかが痛いのになぜ心療内科へ?」と疑問に思われることがよくあります。



心身症とは、この患者さんのように、レントゲンやCTなどの検査で器質的な異常がある場合だけでなく、その臓器の働き、機能に障害がある病態も指します。



日本心身医学会が1991年に定めた、「心身症の定義」をご紹介しましょう。



「心身症とは身体疾患のなかで、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、ほかの精神障害に伴う身体症状は除外する」



――うつ病は心身症から除外になっていますが、うつの症状があるとき、心療内科を訪れる人は多いのではないですか。



野崎先生 うつ病を専門的に診察する科は、心療内科ではなく、精神科です。しかしながら、心療内科を訪れる人が多いのが現実です。



風邪をひいたときに気分も落ち込むように、病の多くは心因を伴います。糖尿病やがんを告知されると同時に、うつの症状が現れる人も数多くいらっしゃいます。

よって、身体的な症状がある軽症うつの患者さんの場合は、心療内科で心身両面からの診察を行います。内科の医師からも、軽症うつの患者さんが紹介されてくるケースが多々あります。実のところは、このタイプの患者さんが今、一番多いのです。



――心療内科は、「精神科」とはどう違うのでしょうか。



野崎先生 「心療内科」と「精神科」はよく混同されますが、違う領域です。

「精神科」は、精神症状を中心に脳の疾患を診察する科です。統合失調症、うつ病、各神経症(不安障害、社会恐怖、強迫性障害など)、不眠症、アルコールなどの薬物依存、認知症などの病気を診療します。



また、「神経科」という診療科もありますが、これは精神科のことです。「神経症」とはノイローゼの症状を指し、体の病気ではなく精神の病気になります。

大学病院や総合病院では、精神科は「精神科・神経科」、または「精神神経科」と称する場合がありますが、最近は神経科という呼称は少なくなってきました。



ですから、心療内科のことを「プチ精神科」とか、「ミニ精神科」、「軽症精神科」と思われている場合、それは間違いです。また、精神科と内科の真ん中あたりに存在すると解釈されていることもありますが、それも違います。



「ひと月以上も胃の痛みが治まらない」、「心臓の動悸が激しいのに、検査ではどこも悪くないと言われた」、「皮膚科で処方された薬を塗ってもアトピー性皮膚炎が治らない」、「こんなに腰が痛いのに原因不明のままだ」……など、何とも表現しがたい体の不調が続くけれど原因が分からないとき、それは恐らく心身症です。

自分の心身で何が起こっているのかが分からずつらいときは、心療内科を受診してください。



――ありがとうございました。



心療内科での診察する病態は、精神科とは違い、体の「器質的・機能的」な不調が鍵となることが分かりました。正しい知識を持って病院選びをする必要がありそうです。







監修:野崎京子氏。心身医学・ペインクリニック・麻酔科専門医。京都大学医学部卒。国立京都病院、大阪赤十字病院などをへて、現在、心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック院長。著書に『心療内科女医が教える 人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス 1365円)がある。

野崎クリニック:大阪府豊中市新千里南町2-6-12 北大阪急行桃山台駅から徒歩7分 TEL: 06-6872-1841 http://www.myclinic.ne.jp/nozaki/pc/



(岩田なつき/ユンブル)