マクドナルドはなぜ人口減なのに大型出店を進めるのか

写真拡大

「定点観測をしていれば景気が読める」「10分あれば報道の真相がわかる」震災の復興シナリオから企業の大型合併、不況下で高い利益率を誇る業界の仕組みまで、世の中の事象を正しく見るコツを数字のプロが解説する。

----------

小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶(こみや・かずよし)
1957年、大阪府生まれ。81年京都大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。岡本アソシエイツなどを経て、96年小宮コンサルタンツ設立。『数字で考える習慣をもちなさい』『「1秒!」で財務諸表を読む方法』など著書多数。

----------

日本マクドナルドが店舗の大型化に乗り出すといいます。今後3〜4年かけて近隣への移転や新規出店を通じて、全体にある約3300店舗のうち、3割に当たる約1000店舗を広くするそうです。

少子高齢化や長引く所得低迷で外食マーケットが縮小傾向にある中で、大型店舗を増やすというのは、一見、逆行した戦略のように感じます。

実際、マクドナルドの10年12月期の連結決算を見ると、売り上げは約3230億円で、前年の3620億円から1割以上の減収になっています。ところが営業利益は前年の240億円から280億円に増えている。これは売上原価をうまくコントロールして圧縮できたことが大きかったようです。

収益構造が改善したもう一つの理由は不採算店舗の閉鎖。最近、マクドナルドの店舗が減っているような気がしていたのですが、2011年前期だけで433店舗を一斉閉鎖したということでした。

同社は90年代に小型店を中心に店舗網を拡大しました。しかし、小さな店舗では厨房スペースの制約などがあって一部のメニューが取り扱えなかったり、サービスが行き届かなかったりするケースがあったそうです。

アルバイトスタッフ中心で回すような小さな店が増えれば、スーパーバイザーが細かく見て指導しなくてはならないため管理コストがかかります。それでいて出せない商品があるということは、そのぶん、販売機会をロスしているということです。

マクドナルドの店舗大型化は、そうした不採算な小型店の閉鎖とワンセットになった店舗戦略の一環です。今後もすべての商品を提供できない店舗などの閉鎖を続けるため、当面、店舗数は横ばいになるとのこと。大型店にしてすべての商品を提供できるようになれば機会ロスはなくなるし、管理コストも削減できる。大型店に集約することで1店当たりの収益力を高める戦略を採っているのです。

マクドナルドは全メニューが提供できる店舗の比率を現在の54%から85%に引き上げる予定とのことです。新規出店を中心にドライブスルー機能も強化して、ドライブスルーつきの店舗を現状の4割から、3〜4年後に5割に引き上げるそうです。ドライブスルー機能がないことによる販売機会ロスもなくしていこうということでしょう。

デフレの勝ち組と言われた企業もそれぞれに、新たな成長戦略を模索しています。牛丼への「選択と集中」で業界をリードしてきた吉野家は、08年に牛丼チェーントップの座をすき家に明け渡し、10年2月期の決算で最終損益が赤字に転落。メニューの多角化を進めていますが苦戦は続いています。

一方、値下げ合戦を仕かけたすき家を運営するゼンショーは、低価格戦略で業績好調。客単価は下がっても客数が増えていることから、売り上げも営業利益も伸ばしています。

クオリティ、プライス、サービスという3つの組み合わせで、顧客は吉野家かすき家かマクドナルドを選びます。クオリティだけ、プライスだけではお店を選ばないのです。マクドナルドの強みは期間限定の新商品や復刻商品を次々投入するプロモーションの巧みさに加え、低価格メニューからクオリティ重視の高価格メニューまで取り揃えた総合力。店舗の集約・大型化は総合力を生かすための重要な戦略なのです。

※すべて雑誌掲載当時

(小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶 構成=小川 剛 撮影=市来朋久)