素晴らしきカレイドスコープの世界




子どものおもちゃとしての印象が強い万華鏡ですが、実は大人のための万華鏡も存在します。私たちの度肝を抜く美しさがあり、まさにアートそのもの。誕生してまだ200年ですが、将来は伝統工芸になること間違いなし。そこで、万華鏡の歴史など、知られざる奥深い世界を万華鏡専門店 カレイドスコープ昔館の店主、荒木路(あらきみち)さんに教えてもらいました。



■万華鏡の仕掛けは、2〜3枚の鏡による「合わせ鏡」だった!



荒木さんは、1994年に日本初の万華鏡専門店を開いて以来、日本の万華鏡作家を引っ張るリーダー的存在です。



――不思議なシンメトリーの世界を見せてくれる万華鏡。いったい、どんな仕組みになっているのですか?



「万華鏡には、さまざまな色・形・大きさとありますが、中の構造はみな同じです。3枚ないしは、2枚の長方形の鏡が筒状となって本体の中に仕込まれて、その鏡が合わせ鏡のように世界を映し出しているのです」(荒木さん)



――万華鏡を楽しむために意識したほうがいいことはありますか?



「万華鏡によって場所が違うのですが、光を取り入れる場所がありますから、そこにしっかり光が入るようにすることが大切です。太陽光が一番美しいと言われていますが、明かりの明暗や向きなど、いろいろな違いも楽しんでみるのもいいかもしれませんね」



■新しい芸術のジャンルだからこそ自由に楽しめる



――実際に万華鏡をのぞかせてもらって、私自身、その美しさにびっくりしました。何でこんなに美しいのにあまり知られていないのでしょうか?



「万華鏡は、科学技術光学のおかげで、この世に生まれた芸術だからです。19世紀始めにイギリスで生まれ、20世紀のアメリカで発展した万華鏡の歴史は、まだ200年。存在している万華鏡の絶対数が少ないのです。



ごくごく一部のアンティークスコープには、高値で取引されたものもありますが、ほかの芸術ジャンルのように『○○な作品に価値がある』という確固たる評価システムも機能していないくらいなのです」



――ちなみに、どの万華鏡がおススメですか?



「どれを美しいと感じるかは人それぞれ。実際に万華鏡をのぞいてみて、心が動いたものを選ぶのが一番だと思います。また、歴史も浅く、評価体系が確立しきっていない万華鏡だからこそ、自分自身でしっかり万華鏡と向き合い、選び取り、自分なりの評価を与えていくスリルを味わってほしい。他人の評価にのみ込まれないようにしてほしいですね。ぜひ自由に楽しんでください」



うーん、自由だけれどちょっとドキドキしちゃいますね。ちなみに、値段ではないといっても気になる価格ですが、1万円を目安にするといいのではということです。



カレイドスコープ昔館の店内には、円柱型の万華鏡のほか、天体望遠鏡のようなものや猫などのモチーフと合体したインテリア性の高い万華鏡まで、さまざまな形状の万華鏡が並んでいました。



また、万華鏡というとカメラのレンズのように世界が切り替わる印象があったのですが、オイル(液体)の入っている万華鏡では、宇宙遊泳のように穏やかに揺らぎ続ける世界を楽しめましたよ。



■そのときの心情によって、まったく違う世界を見せてくれる



最後に、荒木さんご自身が感じる万華鏡の魅力を教えていただきました。



「そのときの心情によって、まったく違う世界を見せてくれることです。例えば、私は最近まで、世界がクルクル明るく元気に変わるから、万華鏡が好きでした。万華鏡は楽しいものだと思っていたんですね。



ところが、2011年の東日本大震災の後、気持ちがどうしようもないくらい落ち込んでしまったのです。そんなとき、お店に来て、たまたま手にとった万華鏡をのぞいたら、その世界の美しさにふっと、気持ちが緩んで、とても癒やされました。万華鏡は癒しにもなるんだな、と初めて実感したのです。



私自身にとっても万華鏡は奥が深く、万華鏡との新しい付き合い方が今、始まったばかり。これからも万華鏡の魅力を発見していくのが楽しみにしています」



まずは、ひとりでも多くの人に万華鏡の世界を実際にのぞいてみてほしい! とつくづく思いました。



カレイドスコープ昔館では、万華鏡教室を開催しているとのことなので、興味のある方は参加されてみてはどうでしょうか。自分で万華鏡を作れるキットも販売しているそうですよ。



取材協力

万華鏡専門店 カレイドスコープ昔館 http://www.brewster.co.jp/



(OFFICE-SANGA 臼村さおり)