【宙にあこがれて】第27回 日本のファントム40年・百里基地航空祭

さる10月21日、茨城県にある航空自衛隊百里基地で航空祭が開催され、およそ6万人(基地発表)が訪れました。今回はその様子をご紹介します。

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昨年は、10月に同じ百里基地で航空観閲式が開催された関係で航空祭はなく、百里基地航空祭は2年ぶりの開催となりました。今年はブルーインパルスのスケジュールの関係で参加がなく、地元飛行隊の飛行展示が主体となりましたが、百里基地にとっては記念となる年でもあり、様々な趣向を凝らしたものでした。

記念となる年と書きましたが、実は2種類あります。まずは日本に「ファントム」ことF-4EJファントムIIが導入されて今年で40周年ということ。老朽化したF-86Fセイバー(旭光)を淘汰し、F-104Jスターファイター(栄光)の後継機となる1969(昭和44)年の第2次F-X選定でF-4EJ導入が決定し、1972(昭和47)年8月1日、ここ百里基地で尾崎義弘隊長のもと「F-4EJ臨時飛行隊」として部隊が発足しました。百里は日本におけるファントム飛行隊発祥の地なのです。

百里基地にあるF-4EJ飛行隊発祥の地記念碑

翌年、F-4EJ臨時飛行隊は隊長の事故死などを乗り越えて第301飛行隊へと再編されます。1985(昭和60)年には百里から宮崎県の新田原基地へ移転してしまいますが、今でも301飛行隊のマスコットマークは「筑波山のガマ」をモチーフにしたカエルです。百里には2009年、F-15Jを装備する第204飛行隊と入れ代わる形で、那覇からF-4EJ改を装備する第302飛行隊がやってきており、記念の年にタイミングよく発祥の地でF-4EJ飛行隊がいる……という願ってもない状況になりました。

そんな訳で、第302飛行隊では「日本のファントム40周年」を記念する特別塗装機(67-8388)を用意。デザインは飛行隊の合議で決め、通常業務が終了した後に整備担当者がコツコツと2週間あまりかけて塗装した労作です。

302飛行隊のファントム40年記念塗装機

機首には影付きのシャークティース、胴体側面にはF-4のマスコットキャラクター(アメリカで作成されたもの)であるファントムがドラクエ風の剣を持つ姿。マントの伸びる先には「The origin of 侍 Phantom」の文字が。垂直尾翼には、第302飛行隊が所属する第7航空団を示す7つの星。そのうち2つが黄色いのは、飛行隊長機を表すそうです。

側面に描かれたファントム垂直尾翼の星は7空団を表す

主翼下の増槽には、今までF-4を運用した9つの部隊マーク(第301〜306の各飛行隊、第8飛行隊、第501飛行隊、飛行開発実験団)が記されています。このうち今もF-4を使用しているのは301、302、501の各飛行隊と飛行開発実験団の4つ。飛行開発実験団(岐阜基地)は、近代化改修されていない唯一のF-4EJ(導入初号機)も保有しています。

増槽にはF-4を運用した各部隊のマークが

しかし、1981年には既に後継のF-15J/DJ飛行隊が編成されている点からも、導入当初はまさか40年もファントムを使い続けるとは思ってもいなかったんでしょうね。その間の技術発展が1960年代までよりゆるやかになったからでもありますが、後継機たるF-35Aがいつ部隊配備されるか判らない状況では、まだまだ現役を続けていくことになりそうです。ファンとしては、できるだけ長く見ていたい機体なのですが……。

そして、もうひとつの記念は、第305飛行隊の「F-15改編20周年」。1992(平成5)年にF-4EJからF-15に機種改編が開始されて20年を迎える為に、同じく特別塗装機(92-8911)がお目見えしました。

305飛行隊F-15改編20周年塗装機

機首には炎のワシ、そして尾翼にはかつて使用していたF-4EJ(1978年〜1993年)と、飛行隊の前身となった第206飛行隊で使用していたF-104(1965年〜1978年)のシルエットが黄色くあしらわれ、使用年も書き込まれています。アクセントになっている白いラインは、かつてF-104時代に施されていた「第7航空団」を表す7をデザイン化したものです。

機首に描かれた炎のワシ尾翼には今までの使用機をシルエットで

第305飛行隊は1978(昭和53)年に新編されて以来、ずっと百里基地にとどまり、部隊マークも梅の名所である水戸・偕楽園にちなんだ「ねじ梅」の紋を使用しています。このモチーフとなったのも、入れ代わりで解散した第206飛行隊のマークであった梅鉢紋でした。往時の様子は、正門近くにあるゲートガードのF-104Jが第206飛行隊仕様(当機の最終所属は、百里から那覇に移動した第207飛行隊)として展示されており、そこでしのぶことができます。

正門近くにある206飛行隊仕様のF-104J

第302飛行隊、第305飛行隊とも、これを記念したパッチ(ワッペン)を制作していました。ただ、これは非常に数が少なく、隊員も予備程度しか購入できずに一般に出回る可能性はほぼない、とのことでした。デザインがいいので、ちょっと残念ですね。

「@百里」が印象的なファントム40周年記念パッチ特別塗装機にも描かれたワシが精悍な305飛行隊F-15改編20周年記念パッチ

この2機については事前にアナウンスがあり、それを目当てにしたファンも多くいたのですが、会場にはもう1機、特別塗装を施した機体がありました。第302飛行隊に所属するT-4(06-5634)です。

東京スカイツリーとコラボ?したT-4特別塗装機

機番の「634」にちなんで、尾翼に高さ634メートルの東京スカイツリーが描かれています。一緒に描かれているのは、部隊マークであるオジロワシ。……ですが、かなりかわいくデフォルメされていて、もはやワシの精悍さはありませんね。ちなみに尾翼の右側と左側では、微妙に違いがあります。また、機首側面にもかわいいオジロワシの顔が並んでいるのですが、ひとつだけ色違いのものが隠れていました。気付いたでしょうか?

スカイツリーと並ぶオジロワシこちら側は帽子をかぶっている下の方にひとつだけ、黒い顔が

今回はブルーインパルスがやってこないので、その分地元飛行隊の飛行展示は力が入っていました。特別塗装機のF-4EJ改やF-15Jも「飛ばしてナンボ」とばかりに飛び回ります。

飛行展示に出る特別塗装のF-4EJ改飛行展示に出る特別塗装のF-15J

特に第305飛行隊の特別塗装機は、広大な背面(テニスコートと同等の広さ)を活かしてそこにも大きく部隊マークを描いており、飛んでみないと全部が見られないものですから、飛び回ってこれでもかと背中のデザインを見せてくれます。

305飛行隊特別塗装は背中にもデザインが

もちろん、他の機体も飛び回ります。今回第305飛行隊の飛行展示で2番機を操縦したのは、元ブルーインパルス(2008〜2010年の3番機)の原田晶大1尉。第305飛行隊といえば、現在の飛行隊長や、先代と現在の5番機パイロットが在籍した飛行隊としても知られていますが、OBも在籍しています。実は原田さんがブルーインパルスのメンバーとして最後に参加した航空祭が、2010年の百里基地航空祭でした。

501飛行隊のRF-4E(57-6914)元ブルーの原田1尉が駆るF-15DJ082号機は観艦式にも参加

飛行展示に使用されたF-15のうち、F-15DJ(32-8082)は前の週に行われた自衛隊観艦式でも、第305飛行隊長が乗って参加した機体です。8月にメーカー整備(IRAN)を終え、ピカピカの姿で空を駆け回っていました。

今回の飛行展示で印象的だったのは、飛行隊長や飛行中のパイロットによるアナウンス。毎回開始前に飛行隊長からの挨拶があり、飛行中にもパイロットから「現在、私は会場上空◯◯メートルを時速◯◯キロで飛行しています」などという挨拶がありました。このようなアナウンスは、海外のエアショウなどでは一般的なファンサービスとして定着しているものです。2009年にアメリカ空軍のフライトディスプレイチーム「サンダーバーズ」が来日した際は、ちょうど日本(沖縄・嘉手納基地)にいた経験のあるパイロットが在籍しており、飛行展示中に(たどたどしいながらも)日本語で「私はサンダーバーズの◯◯です。今日は楽しんでください」といったアナウンスをしていたので、ついに自衛隊でも……とちょっと嬉しくなりました。これからも続けてくれるといいですね。ブルーインパルスでも時々無線をオープンにして、パイロットがみずから会場に挨拶してくれると、更に親しみが増すように思います。

地上展示では、自衛隊機に加えて岩国基地に展開するアメリカ海兵隊のVFMA(AW)-242「BATS」からナンバー00(164955)とナンバー07(164945)2機のF/A-18Dが参加。VFMA(AW)-242は、2月に百里基地で行われた日米共同訓練にも参加していますし、そういった縁での参加でしょう。

米海兵隊のF/A-18D

その他外来機は

陸上自衛隊
第4対戦車ヘリコプター隊 第2飛行隊(千葉県・木更津駐屯地)からAH-1S(73420)

海上自衛隊
第203教育航空隊(千葉県・下総航空基地)からP-3C(5030)

航空自衛隊
第3飛行隊(青森県・三沢基地)からF-2A(03-8559)
第402飛行隊(埼玉県・入間基地)からC-i(78-1022)
同じくU-4(05-3255)
入間ヘリコプター空輸隊(埼玉県・入間基地)からCH-47J(27-4488)
第11飛行教育団(静岡県・静浜基地)からT-7(56-5932)
第401飛行隊(愛知県・小牧基地)からC-130H(45-1073)
第41教育飛行隊(鳥取県・美保基地)からT-400(41-5063)

が参加。三沢基地のF-2Aは、前週の観艦式では第8飛行隊の機体が参加していたので、入れ代わる形での飛来となりました。

外部からは、エイサーの演舞に加え、霞ヶ浦高校(往年のゲーム「ドキドキプリティリーグ」とは無関係)のチア・ダンス部がチアダンスの発表を行い、花を添えました。

イベントに参加した霞ヶ浦高校チア・ダンス部

装備品展示で来場者の評判が良かったのが、F-4のエンジンであるJ79-IHI-17。吸気口前の軸にカッティングシートで顔を付けたのが、非常にかわいく見えました。その場にいた担当者は「これだけのことで、こんなに評判が良くなるとは」と驚いていましたが、小さなことでも来場者を喜ばそうという気持ちは伝わるんですね。

顔のついたJ79ジェットエンジン

そして、百里名物と言えるのが第501飛行隊のRF-4による「記念撮影」。午前中に上空から撮影した会場写真を現像し、昼過ぎにパネルにして展示するものです。偵察飛行隊である第501飛行隊の業務を紹介するとともに、搭載されている偵察カメラの性能も紹介できる訳ですが、それ以上に来場者が思い思いのポーズで映った姿を写真から探す……という楽しみがあり、いつも写真が掲示されると人だかりができます。

RF-4による記念写真で自分を捜す低高度用カメラはこれだけの解像度

ブルーインパルスがいなくても、記念塗装機3機に多くの飛行展示という盛りだくさんの内容で来場者を魅了した百里基地航空祭。10月とは思えない夏日となった晴天のもと、たっぷり飛行機を堪能したイベントとなりました。

(文・写真:咲村珠樹)