選手たちがマスコットボーイたちと手を取り合って入場し、試合開始。

にもかかわらず、それまで騒いでいたサポーターたちが意外に静かなのが驚きである。

もっと「待ってました〜っ」という感じで盛り上がると思っていたのに。

試合が始まってもぺちゃくちゃおしゃべりを続けている。

ちゃんと試合を観ているのかと思うと、いいプレーやちょっとしたミスなどに対し、怒号が飛んだりする。

とにかくおしゃべりと怒鳴り声でうるさいし、その言葉たるやとにかく隠語の嵐である。

「キミたち、ホントにフラメンゴのファン? 」といぶかってしまうくらい、悪口を言いまくっている。

セレブ(?)なVIP席なのに。

子どももいるのに。

そしてとうとう、グレーミオに先に点を奪われるフラメンゴ。

サポーターたちはまるでこの世の終りかのように頭をかかえ、悶絶している。

そのジェスチャー、私から見るととっても大げさである。

点を取りかえせないまま、前半戦が終わった。

しばしの休憩時間。

我々の後ろにいた屈強な男性サポーターたちは自分たちの声が選手に届いていないと思ったのか、よりピッチに近い席へと移動して行った。

彼らの怒号はすさまじく、今にも暴れだすのではないかと思われるほどだったので、ちょっと安心。

代わりに、若い女性3人組がその席に座る。

ちなみに、男性でも女性でもおしゃべりの量は変わらない。

ブラジル人はとにかくマシンガントークである。

ふとピッチを眺めていると、ジャーマン・シェパードを連れた警備員10名がぞろぞろと入ってきて、フラメンゴ側のサポーター席の前に陣取った。

点を奪われた腹いせにグレーミオのサポーターを襲う可能性があるのだ。

物々しいにもほどがある。

よく見ればピッチの片隅には救急車とパトカーも止まっている。

これも、選手のためにスタンバイしているわけではないのだろうなぁ。

VIP席が高いところにあるのも、敵対するチームのサポーターがなだれ込んでこないようにするためなのだろうな。

後半戦が始まる。

点を奪い返さねばならないフラメンゴ。

サポーターたちのおしゃべりと怒号はさらに熱を帯びている。

……が、騒ぎ過ぎて疲れたのか、ときどき場内が一斉にしーんと静かになるのが印象的だ。

どういうタイミングでしーんとするのかはわからないが、突然静かになるのである。

それ以外のときは相変わらずマシンガントークと怒号の嵐だ。

3人組の女性サポーターの怒鳴る内容は先ほどの男性たちと変わらない。

声が高い分、耳をつんざく激しさだ。

そして、とうとうフラメンゴが1点を奪い返した。

授乳しながら観戦していた女性は赤ちゃんを放り出さんばかりに喜んでいた。

こんな様子を見て育つのだから、子どもも「サッカー最高」と思うようになるのだろうな。

ある意味、英才教育である。

試合は引き分けのまま終了。

サポーターたちは一様にすっきりした表情を浮かべている。

あたかもカラオケで熱唱した後のような、徹夜明けに熱いお風呂に入ったときのような、さっぱり感。

そりゃあ、あれだけ怒鳴り散らせばいいストレス解消になるだろう。

まぁ、試合に負けていればちょっと違う雰囲気だったかもしれないが。