家具が生み出す快適な暮らしの魅力を伝えていく

WOMAN’S CAREER Vol.97

イケア・ジャパン株式会社 中村真樹さん

【活躍する女性社員】専業主婦を経て、子育てしながらキッズエリアのマネジャーとして活躍する中村さん


■入社当初は思ってもいなかった、人を育てる面白さ

新卒で入社した映画製作会社で出合ったスタイリストの仕事にひかれ、まずはアパレルメーカーに転職。広報・バイヤーとして働く中で知り会ったスタイリストのアシスタントとなり、社会人6年目にスタイリストとして独立した。その後、出産によりスタイリスト業から退いたものの、社会に出ていきたいという思いから家具メーカーに入社。営業事務として働いていたところに出合ったのが、イケア・ジャパンだった。

同社はスウェーデン発祥のホームファニッシングチェーン、イケアグループの日本法人。グループ全体で38の国と地域に338店舗を展開し(2012年9月現在)、家具・インテリア・生活用品などのホームファニッシング商品を提供している。中村さんが同社に出合ったのは2006年、日本第2号店であるIKEA港北のオープン準備が進められているころだった。
「説明会で目にした『やっぱり家が、世界でいちばん。』の言葉はまさに自分も感じていたこと。加えて、人柄を重視した採用やダイバーシティが重視されている環境に『これなら子育て中の自分でも働ける、自分の持てる力を発揮してこの会社に貢献したい』と思ったんです」

こうして中村さんは同社に入社し、IKEA港北の売り場運営を担うセールス部門へ。商品の展示・メンテナンスから、来店客への商品説明、注文書作成などの業務を行いながら、立場を問わず誰もが意見を出し、新しいことに挑戦できる環境の中でより良い売り場にするための提案をどんどん行った。とりわけ、ベッドエリアを担当していたときに始めた「マットレスセミナー」は来店客から好評を得て、同じ方法がIKEA港北内のほかの売り場のみならず、国内全店舗にも広がった。
「マットレスは睡眠の質を左右するため、それぞれの特長や使い心地を吟味した上で購入していただきたいのですが、それをお客さま一人ひとりにご説明していると非効率。そこで、皆で相談して土日に1日あたり3〜4回、マットレスの種類や検討時のポイントなどを解説するマイクパフォーマンスを始めたのです。どうすればお客さまにわかりやすく伝えられるか、私個人でもマットレスの素材について調べたり、商品の製造元が主催する勉強会に参加したマネジャーから情報を得たりして勉強しました。その結果、お客さまから『わかりやすい』『あなたから説明を聞きたい』とお声がけいただいたときはうれしかったですね」

大きな転機となったのは、入社4年目。店舗内の全エリアの知見を身につけ、セールス部門のコワーカー(※)全員の教育を担うセールスエキスパートに選ばれたのだ。イケア第1号店が日本にオープンして5年あまり。より来店客に寄り添った接客を実践すべくコワーカーの意識向上を目指して国内の全5店舗(当時)に新たに作られた役割だった。
※イケアグループでは、「一緒に働く人」という意味を込めて、全社員・パートタイマーを「コワーカー(Co-Worker)」呼んでいる

まず取り組むことになったのは、コワーカー全員に対する16時間の研修。全世界のセールス部門のコワーカー向けに作られた研修プログラム「カスタマーファースト」を日本向けに行うにあたり、まずはトレーナーとなる中村さんたちがそのプログラムを受け、日本のコワーカーが理解できるようかみ砕く作業を実施。そして、同僚と2人でのべ400人にわたるIKEA港北のセールス部門のコワーカーへの研修を行った。とはいえ、16時間の研修を実施するだけで根付いた意識を変えられるわけではない。中村さんは研修終了後もノートを片手に売り場を見て回っての声かけや、月ごとにテーマを決めて毎日伝え続けることなど、さまざまな取り組みを行った。中でも大きな効果を生んだのが、「お客さまの目になろうプロジェクト」だ。
「人からさんざん言われるよりも、自ら気づき、実感する方が改善できると思い、『お客さまへのあいさつはしていますか?』『聞きたいことを聞く前にコワーカーが先に声をかけてくれますか?』などのチェックポイントを示した上でコワーカー全員に私服で店内を回ってもらったんです。すると、できていないことに気づき、皆の意識が変わりました。そして、お客さまへのアンケートにおいて『スタッフ対応』の項目の評価も上がり、コワーカーの個人名を挙げて褒めてくださるお客さまが出てきてくださるように。その声を聞いたときは、自分のことのようにうれしかったです」

そして今、中村さんは新たな挑戦をしている。キッズエリアのマネジャーだ。エリア内の全商品の在庫管理や10人のメンバーの育成・管理など、売り場にかかわるすべての管理を担う。セールスエキスパート時代の経験もふまえて、メンバーを動かす上で心がけていることがあるという。
「まずは自分の気持ちを正直に伝えること。トレーナーをしていたからかもしれませんが、相手に思いが伝わると表情でわかるんです。目の色が変わればこっちのもので、あとは道筋を示せば、イキイキと自分から仕事を取りにいく人になってくれます。そこがマネジャーの楽しみかなと思いますし、そういうコワーカーがいる売り場こそが活気が出て、お客さまが来てくださる場所になるんだと思います」

セールスエキスパート、マネジャーを経験して感じている「人を育てる楽しみ」。中村さんが描くイケア・ジャパンでのキャリアイメージも変化したという。
「入社当初は考えもしませんでしたが、将来的には、ヒューマンリソース(人事)部門で人を育てることに携わりたいと思うようになりました。仕事をするのは人ですし、皆が持っている能力を十分に発揮することが『より快適な毎日を、より多くの方々に』という当社のビジョンにつながっていくと思うので、持てる力を発揮できる人をたくさん育てていきたいですね」

そして、これからキャリアを考える学生に向けてこのようなメッセージをくれた。
「就職って縁なので、進んだ先で何が必要とされていて、お客さまや相手に何をすれば喜んでもらえるのかを考えて行動することが一番大事なんだと思います。それが結果的に自分の評価につながりますし、『やりたいな』『ここが私のフィールドだ』と思えることや、その道筋も自然と見えてきます。だから、焦らず、ロングタームで自分のキャリアをとらえてほしいと思います」